死霊館

The Conjuring
超常現象の調査と解決するエドとロレインの夫婦研究家の1971年の事件簿を元にした映画。本気かつ真っ当、真正面から取り組むど真ん中オカルト映画。
死霊館

エド&ロレイン・ウォーレン夫妻というのは実在の夫婦研究家で、超常現象を調査し解決し講演し執筆していた有名なひとたちだそうです。

エドは1926年生まれ、ロレインは1927年生まれで、妻ロレインは千里眼の持ち主だったとされています。数々の超常現象を解決し、映画「悪魔の棲む家」も彼らの事件簿を元にした映画だったそうですね。

そんなエド&ロレイン夫婦捜査官が遭遇した中で、最も邪悪で恐ろしい事件として封印してきた1971年の事例を映画化したのが今回の「死霊館」です。

「死霊館」とはまた妙な邦題を付けたもので、資料館とか史料館とかって言葉を私よく使うんですが、変換の時の候補にすっかり死霊館が定着してしまいそうです。
オリジナルタイトルは「The Conjuring」で、手品って意味ですか?意味深な良いタイトルですね。邦題「手品」では「?」って思われるし「コンジュリング」なんてのにしたら、「またよくわからない横文字のタイトルか」と他の映画とごっちゃにされてしまいそうで、そういう意味でなかなかよい邦題かなと思います。
ただ「死霊館」ではアホみたいな低予算系ホラーかと思われそうで、もし邦題だけでそう思われていたら損ですね。というのもですね、この映画、とても良いからです。

「死霊館」は今時ちょっとめずらしい直球オカルト映画です。
最近、超常現象ブームの時代に胡散臭いオカルト系研究家を科学的に否定する主人公を描いた映画が何本もありましたが(アウェイクニングとかレッドライトとか)、まさにそういった映画の冒頭でペテンを暴かれるシーンに登場するような人たちが今回の主人公夫婦です。

エクソシストものも何本もありました。どれも現代的で、これまでのオカルトやエクソシストものを踏まえた上で新しい個性を出していました。
ラスト・エクソシズムデビル・インサイドエクソシズムゴースト・オブ・チャイルド

今回はかつて70年代の「エクソシスト」に挑戦するがの如き真正面オカルトです。この潔さがまず良いです。
意外と珍しい真っ向勝負のオカルトってのが気に入りました。

監督は「ソウ」のジェームズ・ワンです。どんどん才能アップしていっていますね。最初は元気のいい若者ってイメージでしたが、いつしか実力派になってきております。まだまだ伸びそうです。

今回、監督の演出がとてもいいんです。特に撮影を伴う部分の演出、つまりカメラアングルとか映像の部分ですね。これが大変よろしいです。
構図や色調や濃淡、カメラの動き、映像の捉え方、とても凝ってます。
インディーズ風やリアリズム風でもなく、かといってメジャー作品臭いキラキラくっきりの安直さもなく、撮影のジョン・R・レオネッティ良い仕事をしています。全体を包む映像の力がこの作品の品格をぐっと上げています。

役者さんです。
エド&ロレイン夫妻を演じたのはパトリック・ウィルソンとヴェラ・ファーミガのおふたり。なかなかピッタリ嵌まってます。

パトリック・ウィルソンはいつどんな映画に出ても同じ顔つきしてますのであまり演技派とか思えないんですが、その中途半端な感じがちょうどいい味わいとなっています。誠実そうな胡散臭そうな素朴そうな野心家なような、単純そうで複雑な顔つきがそのまま役立ってるんですね。なんか失礼な言い方ですか。

おなじみ我らがヴェラ・ファーミガの美しさは独特で、まるでロシアの古典絵画から飛び出してきたかのような風貌にうっとりです。今回は千里眼の持ち主で優しい人柄の役です。似合ってます。

もうひとり大注目は、霊にたたられた屋敷に越してきた奥さんです。私、最初ぜんぜん気づきませんでした。リリ・テイラーです。70年っぽい髪型と服装にすっかりだまされました。
もうなんというか、どうしましょ。「アリゾナ・ドリーム」と「酔いどれ詩人になる前に」をもう一回観ていいですか。
リリ・テイラー、爆がつく怪演技を披露。すんごいです。

霊に悩まされる一家ですが、旦那さんが弱そうで子供っぽい風貌なことや、子供がやたらたくさんいるところも面白かったんです。

脚本に名を連ねるお二人は兄弟でしょうか。「蝋人形の館」の脚本家ですね。「蝋人形の館」もたいそう面白かったんで、脚本家もいいって事ですね。

ストーリー全体を見渡してみたとき、タイトルの「手品」がじわりじわりと効いてくるようにも思えます。直球で真っ当なオカルト映画である本作のタイトルが「手品」って、これ、わりといろいろ複雑な映画だと思えてきませんか。どうでしょう。

というわけで、脚本いいわ撮影いいわ役者もいいわと、いいことずくめで素晴らしい「死霊館」でした。
難を言えば最後の方もうちょっと押さえた演出でも良かったのになと思います。
飛びすぎやろーとか。ちょっと思いましたが。
でもこういう映画ですから派手なシーンも必要で、人によっては「派手さが足りず物足りない」と思う人もいるかもしれないので、そういう意味ではちょうど良かったのかなとも思います。

[追記]
お。この映画すごく人気のようで、パート2が作られた模様。「死霊館 エンフィールド事件」ですって。楽しみですね。

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