ABC・オブ・デス

The ABCs of Death
ABC・オブ・デス
公開年:
2012
製作国:
監督:
製作:
  • アント・ティンプソン
  • ティム・リーグ

アルファベットになぞらえた26組の監督による26編の「死」のオムニバス作品。
わずか5分でじっくり話を描いてる暇はありませんから、わーっとなってぎゃーってなるくらいが関の山です。あるいはシュールや不条理や混沌に逃げるとか、何となくいろいろ予想できます。
その予想を心地よく裏切ってくれる気の利いた良作に出会えるのか、出会えないのか、そこんとこが気になります。うそです。ほんとは気になりません。何でもOK。

ABC・オブ・デス

世界各国の監督たちがアルファベットをタイトルの頭文字に用いた5分の短編を作ります。テーマは「死」です。
思い切った企画が実現したもので、試みは非常に面白いです。中身の出来映えなんかはともかくとして、わくわく楽しい良い企画です。断然支持します。

全体を通しての感想は、しっかり楽しめました。大したことのない作品、なんだこりゃって呆れる作品、キラリ光る作品、いろいろあります。最初は大したことないと思っていても後からじわじわ来るのもあります。

各監督は一所懸命テーマに取り組んだと思うんですよ。目立つことをやってやろう、変わったことをやってやろうと、そう思うんでしょうが、その結果、普通の「死のホラー」がほとんどないという結果になってしまった気もします。だから逆に直球で挑んだような作品が目立つし、良く見えます。

このオムニバス、構成がちょっと捻くれていて、本編が終わった後にタイトルと監督名が出てきます。これがちょっと気持ち悪いというか、やや居心地悪い感じでした。
多分、最初にタイトルと監督名を出してしまうと先入観を持たれるからそれを避けるためだろうと思います。その狙い通り、真っ白な状態で本編を観ることができます。でもその分ジャッジが厳しくなるんですね。5分の本編だけで勝負を挑むには高い技術力が必要になってきます。

26監督の26作品ですから一個ずつ紹介するの面倒臭いですね。公式サイトや他の方の良い記事がありますからそっちで十分確認できますが、ここでも一言感想を加えて一応やっておきます。

ホラーに詳しくないので監督のほとんどを存じていないんです。知ってる監督は僅かでした。

A is for Apocalypse/アポカリプス

監督:ナチョ・ビガロンド
製作国:スペイン

ベッドにいる夫に妻が襲いかかります。
これは一発目からとても面白いです。こんな面白いのを最初に持ってこられたら後の作品にも期待してしまいますよねえ。でも実際にはこの作品の出来は最上位付近でした。監督は案の定ナチョ・ビガロンド。大傑作「エンド・オブ・ザ・ワールド」しか知りませんが天才の一種ですね。

B is for Bigfoot/ビッグフット

監督:アドリアン・ガルシア・ボグリアーノ
製作国:アルゼンチン

寝付かない子供に聞かせるビッグフット伝説。これもなかなかいい感じです。ビッグフットはあまり関係ないように思いましたが、でもいい感じで好きです。

C is for Cycle/サイクル

監督:エルネスト・ディアス=エスピノーサ
製作国:チリ

偏在する自分のちょっとしたSF。途中いい感じなんですが、中途半端に終わります。このネタで行くならもうひとつ何らかのオチがほしかったところ。

D is for Dogfight/ドッグファイト

監督:マルセル・サーミエント
製作国:アメリカ

社会の底辺を生き延びる格闘家の今夜の相手は犬。
これはかなりの出来映え。たいへん良いです。立派な作品です。

E is for Exterminate/駆除

監督:アンジェラ・ベティス
製作国:アメリカ

蜘蛛に噛まれる男の一週間とその果てですが、なんか捻りもないし、何がしたいのかよくわからない。監督は女優さんです。だから許す。

F is for Fart/おなら

監督:井口昇
製作国:日本

女子高生とおなら。何かを書く気もおきません。

G is for Gravity/重力

監督:アンドリュー・トラウキ
製作国:オーストラリア

車で乗り付けサーフィンしようとしてしくじる人のPOV。やや手抜きの映像派作品ですね。

H is for Hydro-Electric Diffusion/水電拡散

監督:トーマス・マーリング
製作国:ノルウェー

チープ感を強調した犬顔の特撮風作品ですが、特撮チープが好きじゃないので苦痛でした。

I is for ingrown/内攻

監督:ホルヘ・ミッチェル・グラウ
製作国:メキシコ

男がいてバスタブに括られている女がいます。映像は渋いし強烈だし文学的モノローグが哀しみを引き立てます。緊張感漂う一編。レベル高いです。じわじわきます。監督にも興味を持ちました。

J is for Jidai-geki/時代劇

監督:山口雄大
製作国:日本

切腹です。これはちょっと笑った。不気味でシュール。いいと思います。ヤン・シュヴァンクマイエルのアニメを彷彿とさせます。

K is for Klutz/不器用

監督:アンダース・モーガンタラー
製作国:デンマーク

トイレでうんこが流れないアニメ。オーソドックスなタイプのアニメで、うんことか好きな子供がよろこびそう。

L is for Libido/性欲

監督:ティモ・ティハヤント
製作国:インドネシア

射精ゲームの生き残り合戦。ネタがどんどんアブノーマル方面になっていきます。出来映えは悪くないし5分できっちり見せますが好みではないんです。

M is for Miscarriage/流産

監督:タイ・ウェスト
製作国:アメリカ

トイレで流産する人。またトイレか。台所をうろつくシーンなどに映画的意図を感じ取れますが目的は達成されていない感じです。だからつまらないと感じます。

N is for Nuptials/結婚

監督:バンジョン・ピサヤタナクーン
製作国:タイ

男が喋る鳥をプレゼント。余計なおしゃべりで女の怒りを買います。男女とも妙な顔立ちで、まこと変で不気味です。この変さに価値を置くかどうかが判断の分かれ目でしょうね。

O is for Orgazm/オーガズム

監督:ブルーノ・フォルツァーニ, エレーヌ・カッテ
製作国:ベルギー

映像派作品。映像は綺麗ですけどそれだけです。まあでも映像は綺麗です。

P is for Pressure/重圧

監督:サイモン・ラムリー
製作国:イギリス

屈指の出来映え。わずかの時間で物語と人物を描写しつくします。お見事。

Q is for Quack/アヒル

監督:アダム・ウィンガード
製作国:イギリス

「Q」をテーマに何を撮るか思いあぐねている監督です。あぁ、この手のオムニバスでやっちゃいけない楽屋落ちです。カッコ悪いですね。
でもアヒルとの展開は小気味よくて、私これ好きです。冒頭の楽屋落ちなんかいらなかったのにね。

R is for Removed/切除

監督:スルジャン・スパソイェヴィッチ
製作国:セルビア

説明排除の難解さに満ちた一篇です。肉から取り出すフィルムとか、電車を押すとか、イメージシーンは見事です。ただ不条理系はちょっと飽き飽きという気持ちもあります。とはいえ力強い作品で、インパクトあります。スルジャン・スパソイェヴィッチは噂の「セルビアン・フィルム」の監督ですね。こんど観ます。

S is for Speed/スピード

監督:ジェイク・ウエスト
製作国:イギリス

美女とスピードです。オチは駄洒落系。ラテン感はいいのですが、特筆するようなことは特にありません。惜しかったか。

T is for Toilet/トイレ

監督:リー・ハードキャッスル
製作国:イギリス

またトイレ。でもこのクレイアニメはとても面白いです。夜トイレに行くのを怖がるおまる離れをさせられる子供。童話的で見事です。

U is for Unearthed/発掘

監督:ベン・ウィートリー
製作国:イギリス

ヴァンパイア目線のPOV。これも面白いです。目の前に村人や神父さんが出てきて大あらわ。アイデアもいいし、カメラアングルもユニークです。

V is for Vagitus/産声

監督:カーレ・アンドリュース
製作国:アメリカ

5分の短編なのに大袈裟なシーンを盛り込んだ贅沢なSF。内容はプレステ的というか、近頃ときどき見かけるゲーム的な描写の作品。

W is for WTF/カオス

監督:ジョン・シュネップ
製作国:アメリカ

「W」をテーマに何を撮るか考えあぐねている監督。あーあ、カッコ悪い楽屋落ちがかぶりましたね。冒頭のアニメはいい感じで「おっ」と思いましたが、直後カオスに逃げ、映像派作品となります。

X is for XXL/ダブルエックスエル

監督:ザヴィエ・ジャン
製作国:フランス

これは凄くいいです。太った女性と「痩せろ」としつこい広告。冒頭のシーンから観るものを引き込みます。力のレベルが違います。案の定、大物ザヴィエ・ジャンの監督作品でした。これは価値あります。

Y is for Youngbuck/ティーンエイジャー

監督:ジェイソン・アイズナー
製作国:カナダ

変質者の公務員と美少年の話です。イメージシーンの羅列がうざいですが真っ当なホラーとも言えますか。

Z is for Zetsumetsu/絶滅

監督:西村喜廣
製作国:日本

原発事故や放射能汚染に踏み込みこむのはいいのですが、内容はぐだぐだでした。今時博士の異常な愛情の出来損ないのパロディやチープなポルノ特撮にうんざり。こういうの好きな人もいるんでしょうけど。

というわけでざっと流しましたが、思いの外いい作品が多かったというのが嬉しい誤算でした。
それぞれ多分相当厳しい予算で作られたと思うんですが、よくまあこれほどのものが出来上がるなと感心します。
中にはつまらないのもありますが、立派なのがこんなにあれば十分ですね。第二弾第三弾もあればいいなあ。と思ってたら第二弾はもう企画が進んでいるのですね。楽しみです。

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