運命じゃない人

運命じゃない人
恋人に去られたサラリーマンとその親友、彼と別れ泊まるところもない女の子、サラリーマンを振った側の女性、それから他の怪しい人々が絡み合い関わり合う一晩の出来事を描いた内田けんじ監督2004年の評判作。
運命じゃない人

面白いよと教えてもらって観ました。内田けんじ監督のオフィシャルなデビュー作だそうです。カンヌの批評家週刊に正式出品された話題作で、受賞も果たしています。私は無知ゆえこの監督も映画も全然知りませんでした。
「運命じゃない人」は登場人物たちが関連しあい絡み合う一晩の出来事を描いたコミカルな作品で、ストーリーの運びから人物の魅力から細部の小技から、実によくできた良作でした。良作どころか、何故今まで知らなかったのかと天を仰ぐレベルのめちゃめちゃ面白い映画でこれは傑作と言っていいし日本映画の希望の星であるとさえ思います。

物語の展開は綿密に構築されたパズル的なミステリーで、最初に見せる簡単なドラマが、後半「じつはこうだった」「この時こうなっていた」と、たたみ掛けるように複雑な形相を帯びます。気の利いた短編小説のような感じで、内田けんじ監督の脚本へのこだわりを感じ取れますね。
パズル的ミステリーでたたみ掛けますが、その中で人物の魅力や細部の表現をおろそかにしていないところがミソです。ストーリー展開だけが面白いんではなくて、やっぱり人間が面白いわけです。
主人公のサラリーマン宮田はお人好しのぼんやりした青年で、この彼の面白さはほんとにずば抜けています。この俳優をどこで見つけてきましたかと驚きますが、俳優は石橋光晴さんという方で、案の定「運命じゃない人」の主演をやって注目を浴びたそうですね。そりゃあ注目浴びまくりでしょう。でも私は全然知らなんだ。そういえば「夢売るふたり」にも出演していました。この石橋光晴演じる宮田という青年の魅力こそが「運命じゃない人」の魅力と直結しています。もうね、あの夜道で踊るシーンとかたまらなく面白いですし。

せっかく好感触の身の丈ドラマとして物語が始まりますが、親友の職業が探偵であるとかヤクザが出てくるとか、そういう手垢のついた設定が登場するときに一瞬の残念感を感じたりもします。が、一瞬の残念感を吹き飛ばす魅力と設定をそれぞれに与えていますし、ストーリー的にも必然があり、結果的には何ら問題ありません。でも、あの、個人的には探偵とかもういいからとちょっとだけ思ってしまいますが。

「運命じゃない人」は2001年の自主製作作品で実質的なデビュー作「WEEKEND BLUES」をベースにブラッシュアップしたような作品だそうです。PFFアワードに出品し入選、この時もたいそう話題だったようですね。「WEEKEND BLUES」も観ましたが内田けんじ監督の才能がはっきり見て取れます。どちらもそれぞれ面白いです。

ということで、2004年の話題作「運命じゃない人」を10年後に知りました。

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