ロスト・ボディ

El cuerpo
ロスト・ボディ

冒頭、謎の交通事故シーンから思いもしない展開が待ち受けます。遺体保管所の警備員、捜査する刑事、保管所から消えた女性の遺体、消えた遺体の夫、その愛人、謎が謎を呼び愛と不信が不穏を生みます。予想できないストーリー展開、良質のスペイン産ミステリースリラー「ロスト・ボディ」はこちらです。

ロスト・ボディ

監督・脚本のオリオル・パウロは「ロスト・アイズ」の脚本家です。ベレン・ルエダも出演しています。「ロスト・アイズ」と本作「ロスト・ボディ」はスタッフ、キャストとも共通点はありますが別にロストシリーズというようなシリーズものではありません。
2010年の「ロスト・アイズ」はギレルモ・デル・トロが製作してるし鳴り物入りでしたが正直個人的にはまあまあの出来と思ってまして、本作「ロスト・ボディ」のほうがうんとこさ面白いです。

さて冒頭は何やらパニクって何かから逃げ出したかのような男が交通事故に遭うショッキングなシーンからです。何だか「トラックに轢かれ」という記述を見かけますがトラックではありませんし轢かれるんじゃなくて当たります。こまかいことですが。それはいいとして、この男は法医学研究所の遺体保管所の警備員で、何かに驚いて恐れてパニクった末の事故のようです。
「まだ事件かどうかわかりません」というような状況でやってきた刑事が捜査しますが、なんと遺体保管所から女性の遺体が一体消えていることが発覚します。
「遺体はどこへ消えた」「警備員は何に怯えていた」「何が起きている」ということで捜査開始です。
さてさて、わけのわからない謎だらけの冒頭で、この映画がこの後どういう展開になるのか、スリラーなのかホラーなのかオカルトなのかサイコ系なのかスリコンなのか、観ているこちらもさっぱりわかりません。思わず前のめりで物語を追っかけます。

映画を俯瞰して面白さのポイントはふたつあります。ひとつは展開の面白さです。冒頭に謎を提示して、その謎を解くという定番の大筋からちょっと逸脱しています。大筋がどれかってのもわからないくらいに話が二転三転するんです。
最初は警備員が何に怯えていたかというミステリーで、その次に遺体が消えたというミステリーが出現し、だから事故の夜遺体安置所で何が起きたか警備員は何を見たのかという話となります。これがメインストーリーかと思って見ていると消えた遺体の夫というのが出てきまして、この男あやしいなという話に展開していきます。怪しいけど怪しくない、この夫が主人公?何かの罠?みたいな、そういう展開です。そうかと思えば、捜査してるおじさん刑事が思い出に耽ってたりして、いったい誰が中心人物かということさえちょっと不明にストーリーが進みまして、さらに消えた遺体の夫に別嬪さんの愛人がいてスリリング展開方面にて活躍しますし、消えた遺体である奥さんの生前の物語が深く描かれたりして、さらに「消えた遺体」ネタがホラーのように描かれたり陰謀みたいに扱われたりして、もうね、どっちの方向に話が進んでいるのかさえ見てると謎です。
遺体を誰が盗んだのか、死人が生き返ったのか、そもそも死んでないのか、幽霊なのか、夫の記憶は正常なのか、死んだ妻はどのような人であったのか、過去何があったのか、まあいろいろ複合的です。

もうひとつの面白さは映像の良さですね。節々によい映像を散りばめます。ノワール調であったりサイコ調であったりホラー調だったりしますが時としてクールなカメラアングルや美しいカットが挿入されます。これが地味に効きます。

さてそれでこのお話、どういうふうに決着を付けるのかというと多少無茶な話ではあるものの、最後の最後まで「うわっ」と驚かせてくれる展開の連続で、多分ですけど観る人をがっかりなどさせません。
オチに言及するのは失礼なのですがそれをちょっとしますと、最後の最後まで観たらこれまでとはまた違った感情を掻き立てられます。トリックのオチという意味ではやや無茶なところもあるのですが、登場人物の中のある重要人物について、とてもとても哀れみを感じます。その人物についての印象がわりとひっくり返り、これまでとても悪い人間のように思ってたことを観ていたこちらが反省したりします。私は胸が痛みました。

というわけで消えた遺体の役をやっているのが我らがベレン・ルエダです。怖くもあり憎くもあり悲哀すら感じさせる演技です。その夫をウーゴ・シルバが演じています。たまに思い出に耽るおじさん刑事の役はホセ・コロナド、別嬪さんの愛人は誰でしょう。アウラ・ガリードという方ですね。「Vulcania | IMDb」という作品で主演級のようです。
「Vulcania」は映画際で2015年の10月に日本でも上映されたのですね、ちょっと興味ある予告編でした。
あっ。ていうか、アウラ・ガリードって「ゴースト・スクール」に出てるやんかーっ。

スペイン映画ではスター俳優でもスター気取りではないいろんな役をやります。だから役者が誰とわかってもストーリー的には油断なりません。そんなところも面白さの秘訣ですね。

シリーズでも何でもないですがベレン・ルエダが出ていてスタッフに共通点もあるスペインスリラー「ロスト」邦題シリーズ、「ロスト・アイズ」「ロスト・ボディ」の他に「ロスト・フロア」というのもあります。「ロスト・フロア」も面白かったのでいずれ感想文書きますね。ちなみに「ロスト・リバー」はこのシリーズでも何でもない全く関係のない作品ですからお間違えなきよう(←誰も間違わんわ)

スペイン良質スリコン「ロスト・ボディ」でした。

この手の作品は紹介がネタバレになってしまい予告編にもそういうのが散りばめられてるんでスペイン語版がちょうどよかったりします。スペイン語が得意な人以外には。

ついでにVulcaniaを。このVulcaniaの予告編見てたら、一瞬「バスルーム 裸の2日間」のおじさんが映ってるように見えたので調べてみたら、やっぱり出演されてました。

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