ザ・エンド

Fin
若者という年齢からずいぶん経ったいい大人たちが若者ホラーの定番設定である人里離れた孤立したおうちに滞在して、そして事が起きます。何が起きるのでしょう。豪華キャストと豪華スタッフでお届けする極限状態の怪と消えゆくものの哀れ。
ザ・エンド

「ザ・エンド」って。「ザ」って。原題は「Fin」ですのでまあいいんですけどね。

大体これ、この映画は何だか凄いです。一部ですけどちょっと羅列しますね。

まずプロデューサーがですね、凄い面々です。

フェルナンド・ボバイラは「マルティナの住む街」「BIUTIFUL」「海を飛ぶ夢」「アレクサンドリア」「ルシアとSEX」「アザーズ」「蝶の舌」「アナとオットー」「オープン・ユア・アイズ」などの大物。良い映画ばっか作ってます。
エンリケ・ロペス・ラビニュは「インポッシブル」「エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる」「28週後…」など多岐に渡ります。ただちょっと癖あります。
ベレン・アティエンサも「インポッシブル」「チェ」「パンズラビリンス」などです。
たくさんありすぎて書いても仕方ないんですが、製作の面々は凄いのが結集しました。

そして脚本がまた凄くてですね、セルヒオ・G・サンチェスって「インポッシブル」と「永遠のこどもたち」の人です。
もうひとりの脚本家ホルヘ・ゲリカエチェバァリアは「どつかれてアンダルシア」「みんなのしあわせ」「マカロニウェスタン 800発の銃弾」「ベビー・ルーム」「オックスフォード連続殺人」でアレックス・デ・ラ・イグレシアと組んでた人で、「プリズン211」なんて名作も手がけています。

出演はスペインを代表するカッコいい女優マリベル・ベルドゥのナチュラルな姿が堪能できるし、かわいいクララ・ラゴも出てます。男はよく知らないけどまあいい感じの俳優です(適当だなおい)

名作ヒット作を手がけるプロデューサーが集まり、名作ヒット作を手がけてきた脚本家が話を紡ぎ、名優人気俳優が出演し、これほどまでの贅沢があろうかという、そんな状態でですね、この映画に期待せずにはおれません。

そんでもって結果ですが、こら監督、お前なにやっとんねんと。

いや、監督だけのせいではあるまい、多分凄腕脚本家がお互い遠慮したり気を使い合ったりした結果、またあるいは、プロデューサー三すくみ状態の結果が如実に出てしまいました。

いえ、別にこの映画が特に悪いとは思いません。むしろ面白いです。
ただその面白さはヘンテコリンな面白さなので、「ザ・エンド」というこの映画の真の目的を達成できた面白さとは違うと思うんですよ。

いつもスペイン映画のことを「スリコン」とか言ってますけど、この作品もまさに複合的作品。既成の映画からたくさんのネタを引用しつつ、既成の裏をかくことばかり考えたような展開をします。それがメタメタ面白い方向に出たのかというと微妙で「…なにこれ」みたいな感じのほうを強く受けます。
個人的にはその外しっぷりが大好きなわけですが、一般にはそうもいかないのではないかと心配します。

ごちゃごちゃ言ってないでどんな映画か紹介します。

序盤は大人たちが同窓会的に集まります。人里離れた一軒家に集い、思い出話で盛り上がったりします。仲良しグループの筈なのに、だんだんまったく仲良しグループじゃなかったというようなこともバレてきます。

普通のホラーでは馬鹿な若者たちが集いますが、この映画ではいい年の大人が集まりますので、かなりみっともないことになってきます。イライラしますし、観ていても居心地が悪くなります。このあたりは、とても良いと思います。

そして定番ホラーと同じく、何かが起きます。殺人?幽霊?超常現象?何かよくわかりません。よくわからないように撮っています。多分わざとです。ホラーっぽく撮ったりSFっぽく撮ったりしてイラつかせます。
このあたりもとても面白く観ることが出来ます。

で、その後は何が起きたのかだんだん明白になってきますが、あまり明白でもなく、「ほんまかいな」と思いながら観ることになります。
にもかかわらず映画の中ではとっくにみんながその状況を受け入れています。それまで散々「ああなのか、こうなのか」と思わせておきながら。
このあたりから映画と観る側がずれてきます。

ズレを引きずったまま、ずれてないことを前提に話がぐんぐん進みます。
挙げ句の果てに前提があるからこそちょっと裏切ったり発展させたりします。

まあ簡単にいうと終末っぽいテーマです。ちょっと大きく出すぎました。ホラーミステリーみたいな始まりだったんですけど。

で、ズレを引きずったままズレを前提に話が進んで、その出来事を綴るだけということから、他のテーマもたくさん含める大風呂敷へと変わっていきます。
存在や人間や喪失感や再生への希望やいろんな感情的な部分をテーマに持ってきたりするんですね。ただでさえ、こういうテーマのこういうお話は慎重にじっくりやらないと観る人が置いてけぼりをくったりしがちです。なのにスリコン的にいろんな要素を複合しまくります。それぞれはとてもいい感じなのですよ。

例えば動物というものが重要な存在です。動物が絡むシーンの不可思議さといい博愛感といい、素晴らしいのです。このテーマだけで一本撮れたはずです。ここはかなりいいです。

不可思議さと言えば、人里離れたおうちから街へ出るのにわけのわからない山岳地帯を歩くそのシュールさもたまりません。この感じだけで一本撮れたはずです。

またあるいは、人気のないスペインの街や建築物の撮り方もいいです。キャンプ場やサイクリングのシーンも素敵です。こういう感じだけで一本撮れたはずです。

犯人捜しのようなネタもふっていてミステリーの仕掛けがあります。そしてミステリーの仕掛けを、どんでん返し的に裏切るシーンまで登場します。他のことで忙しいので観ているほうも映画の中の人もこの件にはあまり触れる暇がありません。もったいないです。

というわけで、実際、ちょっとやりすぎです。

細部はかなりいいです。好きなテイストが詰まっています。
でも全体にはなんだこりゃって感じが強いのもまた事実。

で、大物スタッフたちを紹介するときにですね、たとえば「海を飛ぶ夢」「永遠のこどもたち」とかって宣伝すると「それは期待できそう!」って思うんですが、この映画の場合、例に出す映画の名前はこうあるべきです。

「みんなのしあわせ」の高度なおふざけ + 「エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる」のくだらなさ + その他各名作スペイン映画のテイストが場違いにたっぷり + 「28週後..」の残念感

これで納得。

大物プロデューサーたち、大物脚本家たち、トップ女優たちに囲まれて、監督はさぞ大変だったことでしょう。監督、ようやった。よう頑張った。

しつこいですが私は気に入っていますよ。いい感じでした。ほんとです。

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