ロスト・フロア

Séptimo
スペイン産スリラーでベレン・ルエダが出てて邦題の頭に「ロスト」が付くシリーズではないがシリーズみたいにリリースしているシリーズ、今回は「ロスト・フロア」をご紹介します。床が消える話ではありません。アパート内で、子供が消えるんです。
ロスト・フロア

「ロスト」と頭につけるシリーズじゃないけどシリーズみたいにリリースしているシリーズもどきです。ベレン・ルエダが出演してスペイン産であるというくらいしか共通点はありませんが、なかなか良作続きとなっておりますよ。配給さんもいろいろ苦心してやっておられます。単発で出すよりシリーズのふりをしたほうが何かといいじゃないかと判断したんでしょう。それある意味では正解かも、今後も「ロスト」シリーズが出たら内容確認するまでもなく迷わず観ますもん。

「ロスト・フロア」はスペインとアルゼンチンの制作となっていてタイトルは「Séptimo」「第7の」ですか。意味深です。そのままのタイトルを採用すると「セブン」のパチモンかと思われかねませんね。でもこれ、アパートの「7階」って意味です。

さて主人公の演歌歌手みたいなおじさんにはどこかで会ったような気がします。どこだっけ何だっけ、あっ思い出した「瞳の奥の秘密」の主人公じゃありませんか。
このおじさんが冒頭登場して、夫婦別居中の独身であること、弁護士で今日もやることいっぱいある忙しい身であることが示されます。
とても忙しいけど別居中の妻の家に行きますな、アパートです。エレベータに乗り込み「子供を学校に送ってからすぐ行くから」とか仕事の話を携帯で喋ってます。怪しい男がひとりエレベーターに同乗してたりします。

別居中の妻を我らがベレン・ルエダが演じてます。実質離婚中、あとは書類にサインをするだけで離婚が成立するという、そんな状態です。ベレン・ルエダが子供たちを連れてスペインに帰るとかそういったことがらで夫婦が揉めている模様です。

ということでアルゼンチンのリカルド・ダリンとスペインのベレン・ルエダが冷えてるのか愛なのか微妙な心持ちの夫婦役で共演のミステリー「ロスト・フロア」です。

夫婦には子供が二人おりまして、その朝子供たちは階段かけっこで1階まで競争する遊びをお父ちゃんとやるんですね。父ちゃんはエレベーターで、父ちゃんより早く駆け下りるのが勝負どころとなります。この遊び、危ないからお母ちゃんには禁止されています。でも甘いお父ちゃんはやります。
「競争よーいどん」駆けます。
さて父ちゃんはエレベーターでもたもたしながらも一階へ。そして子供たちはまだ到着していません。
最初は「ほーら、父ちゃんの勝ちだぞー」なんて軽い気持ちです。でもなかなか子供たちが現れない、おかしいな、ちょと心配〜。軽く探しますな。いませんな。1階には管理人がいますので尋ねます。「子供たちは来た?」「見てないすね」やばい。だんだんお父ちゃん焦り始めます。「おーい子供たちー」また階段を上がってみます。いません。
子供たちが消えました。

ちょっとした日常が悪夢に変わる瞬間です。お母ちゃんは出かけました。お父ちゃんは今日めっちゃ忙しい身で、子供たちが突然行方不明です。
最初は「子供たちどこいったのー。どこにいるのー。父ちゃん、忙しいんだよー、たのむよー」ってリアルな焦りです。実際にこのようなことが起きた場合も、皆こんな感じだろうと思います。まだ最悪の事態を想定しないんですよね。

という感じで、消えた子供たちミステリー進行のはじまりはじまりです。

この後どのように展開するのでしょうか。シンプルな設定ながら、わりとぐいぐい見せます。
いい感じなのは真っ先に誘拐や殺しを疑わず、おじさんらしく「きっとどこかにいるさ」と思ってもないけど思い込もうとしているところです。おじさんというのはこういう人がわりと多くて、大変な事態が起きているのにそれを受け入れず些細な日常に落とし込もうとしたり自分が安心する情報だけ鵜呑みにしたり危機を小馬鹿にして安堵の殻にこもる心理が働いたりします。こういう人を大丈夫おじさんといいます。ですがこの主人公はいわゆる大丈夫おじさんみたいな頭の弱い人じゃないのでご心配なく。もっとちゃんとした人です。おじさんなら誰しも少しはそういう部分を持ってるってだけの与太話で。

だんだんと事の重大さが迫り来るわけで、今度はそうなると誰も彼もが誘拐犯に思えたりします。
アパート内だけのミステリーなのか、仕事で関わっている事件との関係なのか、事故なのか事件なのか、なかなか見えてこず絞り込めない宙ぶらりん状態がドキドキ感を盛り上げます。今日弁護の仕事に行けないとなると、お父ちゃんは仕事を失い完全に身を滅ぼすことにもなります。
職場からお母ちゃんベレン・ルエダも呼び戻し、鳴りまくる携帯にも焦ります。演歌顔のお父ちゃん痛々しいばかり。

てなわけでスペイン+アルゼンチンのスリラー、観て損はありませんが、純粋ミステリーだと思うと事件の顛末がいささか粗末なあつかいでありまして、あまり硬質のミステリーとは思わない方がいいです。変な言い方するとやや感情方面の火サス的な物語なわけですが、それはけして貶めているんではございません。つまりですね、事件のあとはですね、心がキュンとなるという、そういう落としどころのドラマであるわけですよ。あ。なんか書きすぎたか。すいません。

というわけでシリーズじゃないシリーズ、ロストシリーズですが「ロスト・フロア」はベレン・ルエダが共通してるだけであまり関係ない作品でした。
「ロスト・アイズ」「ロスト・ボディ」の流れでいうと、ロストは付かないものの同じ意味の「消えた来客」がありまして、こっちのほうは制作陣もかぶってまして、シリーズじゃないにせよ繋がりがあります。これはまた別の機会に。では今日はこのへんで。

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