アナベル 死霊館の人形

ANNABELLE
「死霊館」に登場した呪い人形アナベルを描いた別枠映画。「死霊館」の主人公ウォーレン夫妻は登場せず「死霊館」以前のお話、いわば前日譚のような呪い人形についてのお話です。
アナベル 死霊館の人形

「死霊館」に出てきた呪われた人形

死霊館」の大ヒットによって製作されたスピン・オフ的な映画です。ジェームズ・ワン監督はプロデュースで、ジョン・R・レオネッティが監督しました。

ジョン・R・レオネッティは撮影監督として「インシディアス」「ピラニア 3D」「死霊館」など良作に関わっていた人ですね。実績あります。撮影や映像に関しては何の問題もありません。現場監督としてはどうでしょうか。結果は、まったく問題ありません。それどころか「アナベル」はとてもとても良作でした。

「死霊館」人気にあやかった単なるスピン・オフ作品と舐めていたのですけど、そんな態度でいてすいませんでしたのレベルです。「アナベル」かなりいいです。

何が気に入ったかというと、いろいろありますが何と言っても赤ちゃんです。

赤ちゃん

「アナベル」には赤ちゃんが出てきて、あれこれドキドキさせてくれるんですが、よーく見たら出演している赤ちゃんがべらぼうに可愛いんです。そしてね、この赤ちゃんは撮影現場をものともせず始終楽しそうなんですよ。

むずっているシーンもあります。泣いているシーンもあります。泣いている赤ちゃんを母親があやすんですが、声は泣き声が被さっていますが赤ちゃんは楽しそうです。赤ちゃんが楽しそうなもんだから、母親が抱きかかえて胸に埋め後ろを向いて赤ちゃんの表情を隠しますね。でもちらっと楽しそうな顔が写っていたことを私は見逃しませんよ。

何せこの赤ちゃんはいつも楽しそうで興味津々にあちらこちらを見ています。泣いているシーンはすべて顔が写りません。この子は笑いこそすれ泣いてくれないんですよきっと。仕方がないので顔を埋めたり後ろを向けたりしています。これはよほどのことです。きっと撮影現場では赤ちゃんが可愛すぎてスタッフみんなきゃーきゃー言ってたんではないでしょうか。

赤ちゃんに関連したシーンも素晴らしいです。特に印象に残ったのは悪魔が赤ちゃんをポルターガイスト攻撃するシーンです。絨毯に座っている赤ちゃんの背面の本棚から分厚い本が悪魔の力でぼとっ、ぼとっ、と落ちてきます。「危ない!本にぶつかったら大変!」っていうシーンです。実際に赤ちゃんの横に本が落ちてきますが赤ちゃんは何も気にせずぽんぽんした表情で座っています。さすがにすぐ横に分厚い本を落とすと危ないのでこのシーンはCGの合成かもしれません。でもだからといって赤ちゃんのぽんぽんした魅力は何も変わりませんね。この本攻撃のシーンは素晴らしいすよ。

という愛らしい赤ちゃんを存分に堪能できる「アナベル」ですが、実はこの映画について私は妄想をかき立てられています。

妄想

というのも、撮影しながら何度かの大きな脚本の変更があったようなのですね。ちょっとした変更ではなく、そうですね、例えば人の生き死にに関するような大きな変更です。これがあったことはスタッフからも明かされています。神父の扱いなんか大きく変更があったそうです。

慎重に映画を観ていくと、終盤にかけての展開が少し荒っぽいなと思える部分に気づきます。「アナベル」は元々のアイデアではとても壮絶で悲惨きわまりない話であったかもしれないなと思うんです。

「アナベル」のよいところの一つに、あまり大袈裟ではないということがあります。呪い人形は確かに若干大袈裟な造型ですが、この人形が暴れまくったり人が残虐に死にまくったりはしません。もっとうんと上品でクラシカルな作りのホラー映画です。登場人物もあまり多くないですし「ローズマリーの赤ちゃん」的な名作映画の作りになっていますね。そのような作りで完成させたことは素晴らしいことだと思います。

名作的でクラシカルなこの映画の雰囲気を生かしつつ、決定的に破滅的な、つまり最悪の辛い物語を用意していたんじゃなかろうかという妄想を掻き立てられるのは実際にそれを匂わすシーンがあるからです。どこのことを言っているかというと、終盤の母親がパニクってしまうシーンです。

母親の心のよりどころである赤ちゃんを守る強い動機がアナベル人形との対決シーンに繋がります。捨てたはずの人形が戻っている。蹴飛ばしても別の場所にいる。またここにもいる!母親はついにアナベル人形に掴みかかりますね。このシーンは力が入っています。そして私は思わず悲鳴を上げましたよ。「母ちゃん!それはあかん!それはあかん!」

あるいは妄想ではなく、実際に「そのシーン」はあったのだから、本編映画の中に、ダブルイメージとして別の展開が含まれているような撮り方をしているんではなかろうかとも思います。

クライマックスで訪れるそのシーンは、実際にはクライマックスシーンとならず次のステップに進んで別のオチをつけることになります。その別のオチがまた酷くて、話が酷いというか、オチの付け方がちょっと無理矢理過ぎて違和感を感じたということで、だから見終わっても「ほんとうのエンディングはやっぱりあのシーンのあれであったのでは」と妄想してしまったということなんです。

観ていない人には何を言ってるのかさっぱりわからない話ですいません。観た人はわかりますよね。映画史上に残る最悪映画になっていた可能性を少し感じます。

ただ、最終的にその妄想をオチにしなかったのは正しいと思います。アレを話のオチにしてしまったら、辛いだけならまだしも「ありがち」「ただ酷いだけ」とか言われそうな気配もあります。実際の話、妄想の果てにあんなことをやってしまうというお話は過去の映画であった気もしますし、あるでしょう。ありますよね。多分。

妄想話ばかりしていても仕方ないんで他の部分を褒めます。

じわじわ

じわじわと押し寄せる系のホラー映画として、いくつかの焦らすシーンが印象に残ります。その演出が結構いいんです。焦らす部分が通常想定する時間よりわずかに長めなんです。この尺の取り方が割と絶妙で、撮影監督だったジョン・R・レオネッティの力が発揮されたところかななんて思います。そうですね、ミシンのシーン、運転シーン、エレベーターのシーンなどで顕著です。

怪しい人たち

映画全体を包む雰囲気がクラシカルで名作風と書きましたがその絡みで、登場人物たちの描き方に癖があって、これもいいところです。

どいつもこいつも何か怪しい、なんて思わせてくれます。仕舞いには夫でさえ怪しいと感じさせてくれます。キャスティング的にもそういうのに合っていました。みんなが怪しいかもしれないというこの怖さが「ローズ・マリー」風味なところですね。主人公ママの不安感を掻き立てるストーリーと相まって効果を上げていたと思います。

また妄想ですが、初期の脚本段階では、本当に誰かが怪しかったりするような展開も考慮に入れて、ある程度自由度を保ちながら物語を作っていったんじゃないかと思ったりします。

役者さん

主人公ママのミアを演じたアナベル・ウォーリスはアナベルという同じ名前の呪い人形の映画で主演をがんばりました。とっても綺麗な人で、この人いいですね。イギリス生まれの女優さんです。

旦那を演じたのはウォード・ホートンという俳優もキャリア的に目立たない人で、その起用がかえってよかったと思うんです。無条件に信頼できない演出ともぴったりフィットでした。

頼りになるお友達エブリンを演じたアルフレ・ウッダードは売れっ子女優ですね。

神父役はトニー・アメンドーラという方で、お年なのでベテランぽいのですが俳優としてのキャリアは80年代からなんですね。でもたっくさんの映画やテレビに出演されています。

ちょっとだけ残念なところ

いいところばかりでなく残念なところも少しあります。どうしようもないことですが、アナベル人形のデザインはちょっとやりすぎですね。

本物のアナベル人形はもっとシンプルな布の人形だったそうです。いろんなところで実際の人形の写真を見ることが出来ますので検索して見つけてみてください。あれはあれで怖いです。ここではウォーレン夫妻のウェブサイトに載ってる写真のスクリーンショットでも。

ウォーレン夫妻のサイトから

あとは、脚本の変更の辻褄のためか、ちょっと乱暴なオチの付け方に若干の不満が。特にね、あの女性をね。あんなふうにね。あれがちょっと。でもまあ、仕方ないか・・・。

ということで「死霊館」前日譚として十分な威力のよい映画「アナベル」の感想でした。

結論

なんせ赤ちゃんが最高でした。

 

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