スプライス

Splice
スプライス
公開年:
2008
製作国:
監督:
製作:
  • スティーヴン・ホーバン
製作総指揮:
脚本:
撮影:
  • テツオ・ナガタ
音楽:
  • シリル・オフォール
主演:
出演:

「CUBE」のヴィンチェンゾ・ナタリ監督、ギレルモ・デル・トロ製作総指揮、サラ・ポーリーとエイドリアン・ブロディ出演。豪華メンバーでお届けするアレもコレもと詰め込んだクリーチャーSF。

スプライス

お久しぶりですヴィンチェンゾ・ナタリ監督。「CUBE」以来です。結論から言うと、すごく真っ当な演出でした。悪く言うと特徴のない普通の演出、良くいうと技術があるプロの仕事です。
この映画は詰め込みすぎタイプの作品ですから、ちょっと編集的にすっ飛んでいたり無理矢理っぽい展開が随所に見られますが、監督の仕事しては十分にこなしたと見ていいと思います。

製作総指揮にはギレルモ・デル・トロの名が。なるほど、それで納得。このとりとめのない詰め込み映画は、ギレルモ・デル・トロっぽくダーク・ファンタジーとして見ると一番しっくりくるかもしれません。うーむ。惜しい。もうちょっとちゃんと総指揮してくれればよかったのに。

超売れっ子エイドリアン・ブロディが嫁の尻に敷かれる科学者の役です。弟にまで「嫁はんにNoと言えんのか、情けないやっちゃのぅ」などと言われる始末。下がり眉毛の優男としてぴったりな役回りです。
その嫁はんはサラ・ポーリーが演じます。かつての「バロン」の名子役、「死ぬまでにしたい10のこと」では余命幾ばくもない女性を演じました。
今回はさらに大人になって科学者で身勝手わがままの嫁はんを見事に演じます。ぴったりな役回りです。
このサラ・ポーリーというひとは仕事そっちのけで反戦活動に身を入れて仕事を干されたり警官と乱闘の末に前歯を折ってしまうという女優にあるまじき武勇伝をお持ちの方で、その勝ち気さが顔にも現れており個人的に好感度が高いです。

さて肝心のお話です。この映画は一言で言うとクリーチャー・ホラー・SF・ファンタジーです。あらゆる意味で詰め込みすぎの作品で、内容はおろか、どういう客層を相手にしているのかさえ不明な詰め込み具合です。

演出・脚本全体は青少年から若者あるいは適度な大人までを対象にした映画的にはメジャーど真ん中系作品の系統です。科学者夫婦が禁断の実験により誕生させたクリーチャーと接する、いわゆる普通の娯楽SFサスペンスです。
しかし内容の一部に大人の世界が含まれます。夫婦や家族の問題や性の問題なども出てきまして、青少年にはわからぬ人間の深みでありまして、そういうフレンチっぽい愛の映画みたいな部分が若年層を引き離します。

クリーチャーにもいろんな要素を詰め込みます。科学的な純然たるクリーチャー、ホラー的変身を繰り返す怪物、心にぐっとくるファンタジー的妖精、フリークス要素、従順さと攻撃性を併せ持つ悲しきペット的要素、
それぞれ別の映画として作ったほうがいいんじゃないのという設定を詰め込みますから、ひとつひとつがまあちょっと軽めというか、あれもこれもというか、一切合切というか、そんな感じです。

ストーリーも全く同じで、SFサスペンスから始まり、クリーチャーと過ごすファンタジーになり、モンスターホラーになり、夫婦の物語を挟みつつあっちこっちへと方向を変える盛り沢山ぷり。盛り沢山なのはいいんですが、その盛り沢山の一個ずつが、すべて予定調和的というのがちょっと気になります。予想を超える何かが欲しかった。惜しい。

スパニッシュホラーにはこういうジャンル不明な複合的映画が多いと感じています。特にギレルモ・デル・トロが関わる映画では顕著。「永遠の子供たち」「パンズ・ラビリンス」「デビルズ・バックボーン」などと共通する複合仕立てです。

ただちょっとこの「スプライス」はやりすぎちゃうんか、と言いたくなります。あまりにもジャンルを含めすぎ、あまりにもあっちこっちのテーマをつまみ食いしてますから、多ジャンルならではの面白みより、散漫な感じを受けてしまわなくもありません。上記ギレルモ・デル・トロ作品と共通する部分は多いですが、遙かに及びません。惜しい。

冒頭は「エイリアン」風に、途中に「愛しのジェニファー」風になります。一番気になるのはやはり「愛しのジェニファー」風の部分で、完全にに負けています。惜しい。

どうもあまり貶したくはないのですが否定的な言葉が多くなってしまいました。決して貶しませんよ。全然、駄目な映画じゃありません。惜しいけど。

いかんいかん、また否定的になってしまいました。では褒めます。

この映画、そういうわけでスパニッシュ多ジャンル複合的作品で、「フランケンシュタイン」的生命への畏怖から「エイリアン」的サスペンスからフランス映画のような愛の要素やジェニファー要素やフリークス要素も交えたりしています。その交え方は、単なる若年層向けのクリーチャーこけおどし系作品としてではなく、軽薄さは全くありません。
この軽薄さのなさが本編を貫く極太の一本糞、もとい一本筋の通った素晴らしさ。
得てして馬鹿みたいな軽薄映画になりがちなこういった作品を、きちんと見せる映画に仕上げたことは高い評価に繋がります。

そういうわけで「惜しい惜しい」と連発しているのは評価自体が低いというわけではまったくありません。すごく評価の高い名作と比較して惜しかったと言ってるに過ぎず、もともとハイレベルな比較をしているだけです。詰め込みすぎにしたって、詰め込み過多だからこその面白さもちゃんとあるわけです、と、そんなわけでご了解を。

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