死ぬまでにしたい10のこと

My Life Without Me
23歳にして余命2、3ヶ月と宣告された女性が考える「私がいない私の人生」
死ぬまでにしたい10のこと

キャッチーな邦題で話題となった本作、製作総指揮が「トーク・トゥ・ハー」「ボルベール〈帰郷〉」の巨匠ペドロ・アルモドバル、「あなたに言えなかったこと」のイザベル・コイシェ監督・脚本にてお届けする少女小説のような作品です。
私のアイドル、レオノール・ワトリングもいい役で出ています。なかなか出てこないので焦りましたが。

「死ぬまでにしたい10のこと」はキャッチーで印象深いタイトルですが、内容を変に方向付けしてしまう悪いタイトルです。原題は「My Life Without Me」で、死ぬまでに行う10か条を次々にこなしていくことがメインの映画というわけではありません。メモする10項目は重要な味付けではありますが、何というか、ニュアンスが微妙に異なると思います。

今頃この作品をとやかく言うのも野暮すぎますが、今頃はじめて見たんだから仕方がない。

この映画は少女小説のファンタジーです。ペドロ・アルモドバルが総指揮ゆえ、感情を引き延ばしたような、性を越えたような、抽象的なイメージとしての存在や生死感を基本に置いた物語となっております。
また、女流監督イザベル・コイシェの乙女チックな脚本と演出によって、リアルさとは無縁の少女小説的空想物語の度合いが強く、つまりファンタジーとして受け入れるべきタイプの作品です。

リアルさがない、都合良すぎる、自分のことしか考えないのか、残された者の気持ちはどうなる、余命2ヶ月の癌患者がこんな状態なわけない、などというおっさん臭い感想は全て却下。
少女マンガを読むように楽しまなくてはなりません。「わたし死ぬの」「余命2ヶ月なの」と、目を潤ませて明後日の方向を見上げる無垢な女性をちゃんと認識しなければいけません。撮影や演出がリアル風味といって中身がリアルとはかぎらないのです。

しかしとてつもないリアルな部分も大いに秘めています。細かすぎて見逃してしまいがちな、女性の繊細な行動や言葉です。
メモを取るときの喫茶店での会話、レストランでテイクアウトした食べ物の行方など、リアルすぎて笑えるほどの細かい描写があります。

少女マンガの世界だときちんと踏まえればとても良い作品だとわかります。

17歳で初キッスの彼と結婚して子供ができて、人生について考えたこともなかった女性がある日突然考えはじめるんです。時間がないから大急ぎなんです。「わたし不在のわたしの人生」を空想し、残された人たちにメッセージを送る主人公。私はいないけど私の人生。健気(けなげ)じゃありませんか。

見終えて直後、おっさんの私は最初おっさん臭い感想を持ちました。あまりにもリアルさがなくて主人公女性の乙女チックな気持ちに入り込めず、残された者の悲哀を想像していたたまれなくなる、などと思っていたのですが、我が家映画部の奥様が「女性はこの映画を見て、もし自分だったら何しようって思うものよ」と言うのでハッと気付きました。そう「私なら・・・」と少女世界へ入って行ってこその映画なんですね。おっさんはこれ見ても「わしならどうするかな」などとは考えもしないんです。
そういえばその証拠に、映画中の随所のモノローグで「私」というべきところを「You」と言っていたじゃありませんか。あれ、不思議だったんです。
なるほどっ。

そこで、まだ分かっていない私は言いました。
「なるほど、ほなこれは少女マンガ的ファンタジーなわけね」
「そや。その通り」
「じゃあ、死の宣告は医者やなくて、いっそ神様とか天使が『おまはんは余命2ヶ月やで〜』と言えばもっとわかりやすいのに」
「そやねー。でもあのお医者の顔、最初怖いけど医者っぽくないし。飴くれるし」
「あっ。そうか。あの医者は天使かっ」
「あっ。そやわ。あの医者は天使やっ」

えらいことに気付いてしまいました。あの医者の役がそれほど重要とは、うっかり見逃すところであった。
まさにあのお医者は天使の役割です。それに気付けばすべて合点。ガッテンガッテンガッテン。

お医者役の怖いけど中性的で天使のようなその人はジュリアン・リッチングスという俳優さんで、97年の低予算シチュエーションSFホラーの「CUBE」をはじめ、「クライモリ」(2003)だの「サバイバル・オブ・ザ・デッド」(2009)だのに出演されています。本作や「微笑みに出逢う街角」のようなピュア作品のほうが少なそう。あのご面相での本作のトンプソン医師の配役はなかなかハイセンスな人選ではないでしょうか。

そういや母親役はデボラ・ハリーっていうんでこれにも驚いた。実は活躍していた頃のブロンディにはあまり興味なくて、どちらかというと「ビデオドローム」に出てたデボラ・ハリーの印象のほうが強いんですが。
ブロンディは82年に一旦解散したんですが98年に再結成、さらにその後解散宣言をしたりしながらも断続的に活動を続けているという、なんともいい加減な、チルドレンクーデターと同じような出鱈目っぷりに共感です。

主人公アンを演じるサラ・ポーリーですが、さてみなさん、ご存じでしょうか。私はまったく知りませんでした。なななんと、子役から活躍している彼女が一躍出世したその作品とは「バロン」なんですって。きゃー。「バロン」よー。テリー・ギリアムのあのファンタジー・アドベンチャーの傑作にして名作、ユマ・サーマンの美貌をも見出し、高額の製作費のために揉めに揉めて興行的にはひどいことになってテリー・ギリアムがしばらく這い上がれなかったほどであったあの作品、法螺吹き男爵とともに大冒険で活躍した可愛くてキュートで面白くて強気で数々のちびっ子登場作品の中でも突出した魅力に長けた少女サリーこそ、本作の主人公サラ・ポーリーでありました。
いやあ。バロンのサリーちゃん、大きくなったんですねえ。でも23歳で癌で死ぬとは、おじさん悲しすぎます(←死んでへん死んでへん)

バロンも是非どうぞ

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コメント - “死ぬまでにしたい10のこと” への4件の返信

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