ベティの小さな秘密

Je m'appelle Elisabeth
エリザベス通称ベティは超可愛い10歳の女の子。繊細で感受性豊か、そして孤独な彼女のいっぱいいっぱい物語。
ベティの小さな秘密

どこかでちらと予告編を見て一発で気に入りDVDを手に入れたものの、そこはかとなく漂う「ミツバチのささやき」臭にビビり気を起こし長らく封印していた「ベティの小さな秘密」を元旦だからということで観ることにしました。
なぜ「ミツバチのささやき」臭にビビったかと言いますと、映画部の奥様が未見だからです。心ない素人評論家が「似てる」「似てる」と言うもんだから、先に「ミツバチのささやき」を観ていないと駄目なような気がしていた次第なのでありまして、というのも「ベティの小さな秘密」がミツバチ的なる良作であった場合、後で見る「ミツバチのささやき」の感動が薄れるのではないかと危惧したわけなんですね。
後になってみればそんなことはどうでもいいことだと合点するわけですが、とにかくミツバチ臭さにビビっていたと。

で、「ミツバチのささやき」に似ているのが事実なのかどうなのかと言いますと、そんなことはどうでもいいと申し上げます。
印象として似ている部分もありますし、設定として似ている部分もありますし、正しくインスパイアされてるなあと思う部分もあります。が、それはいい意味でと捕らえるべきでありまして、少なくとも「ミツバチのささやき」を観ずして「ベティの小さな秘密」を観るべきではないなんて結論には全く達しません。
我々の封印は杞憂であったということを申し添えておきます。

そして映画部の奥様は「ミツバチのささやき」ではない別の作品を似た感じの映画として挙げました。「シベールの日曜日」です。こちらは私映画部糞旦那のほうが未見で、どんな映画か知りません。どうなんでしょうか。
今度あらためて「ミツバチのささやき」と「シベールの日曜日」を観ることになりそうです。

さて「ベティの小さな秘密」は、田舎に住む10歳の多感な少女エリザベスの物語です。
冒頭はお姉ちゃんと一緒にお化け屋敷の探検。次に新学期で寄宿学校へ行ってしまうお姉ちゃんとのお別れで一人になります。両親は両親の問題を抱えていて、父親は精神病院の院長で仕事の問題も抱えています。
家政婦のローズと多くの時間を過ごします。ローズは症状の軽い患者です。
捕らわれて殺される運命の犬を飼いたいのですが父親が相手にしてくれません。
あるとき父親の問題、すなわち脱走したという患者の青年の話を聞き、そして彼と出会います。
学校では痣のある転校生に出会い、彼に気を遣います。

少女ベティの繊細で優しい気持ちと孤独や不信感が交差して、一人こっそりといろんなことを行い奮闘します。
家の近所の景色は美しく、時には恐ろしさに満ちております。
少女の揺れ動く心はリアルに、出来事は童話のように動きます。そうです、ここ大事な点ですが、「ミツバチのささやき」との決定的な違いはこの童話的部分であります。「ベティの小さな秘密」は基本ファンタジーのようなお話なんですよね。
「ミツバチ」の童話解釈とは全く異なるタイプの童話的物語、「より緩い」と言ってしまえば元も子もありませんが、よりポップでより女の子物語です。

と、そのようなお話なのでありまして、大まかなストーリーから想像できる通りの作品になっております。つまり、ちびっ子映画のすばらしさを純粋ピュアに堪能できます。

ベティを演じる超可愛い女の子はアルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ。1995年パリ生まれ。フランソワ・オゾン監督の「ぼくを葬る」で映画デビューをした瞳に強い力を持つ少女です。子どもはあっという間に大人になってしまうので、こうして輝く少女時代をフィルムに固定した映画というものの貴重さを痛感します。ちびっ子映画の良さとはこういった儚さを内包するんですね。

家政婦ローズを演じるヨランド・モローです。この人、一度見たら忘れません。
「ミックマック」で料理を作るボス的おばさんを演じた人です。
ローズはいつもベティを見ており、唯一彼女の不審な行動に気づいて心配したりする役です。しかしまあ独特な女優さんです。「アメリ」にも出演しています。

脚本はギョーム・ローランです。近年、ジャン=ピエール・ジュネとコンビを組んで「アメリ」「ロング・エンゲージメント」「ミックマック」と優れた作品を生み出している方ですね。ジュネとのコンビでしか認識しておらず「ベティの小さな秘密」で脚本を書いていることは知りませんでした。

ジャン=ピエール・アメリスは「デルフィーヌの場合」(1998) の監督です。2011年のフランス映画祭では「匿名レンアイ相談所」(2010)が上映されています。

日本で公開されたのは2008年で、このとき監督と少女が来日しています。
ちゃんとヒットしたのかどうか知りませんが、多くの人が好きになる映画ではないでしょうか。
軽薄なファンタジーでもなく重すぎる辛い映画でもなく社会派でも文芸派でもなく、でも心の琴線にピクピク響く素敵系映画でありまして、多くの方にお勧めできます。
どうも個人的に良い子どもを見ていると自然に涙ぐむことが多くなって困ったものでしで、この作品でも全然そういうシーンじゃないのにこみあげたりする場面が多くありました。いよいよそういう年齢になってきたかとしばし愕然とする2012年の元旦でありました。

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