Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち

Pina
ピナ・バウシュ率いるヴッパタール舞踏団の4つの舞台を中心に、団員のインタビューと挑戦的なパフォーマンスを収めたドキュメンタリー。ヴィム・ヴェンダースがピナ・バウシュ他界の失意を乗り越えて作り上げた舞踏美術の驚異の神髄。
Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち

すいません。ほんとすいません。「Pina」は劇場で見逃しました。やってたの全然知りませんでした。これを劇場で見逃したのは大きな損失でした。悔しい。実に悔しい。

というのもですね、この作品は3Dなんですよね。3Dの映画にはほとんど興味ありませんがこれは別です。ヴィム・ヴェンダースはピナ・バウシュの舞台芸術の映像化を長年構想していたのに映像化する術を見つけれずにいてですね、それでついに3D撮影に光明を見いだし、2009年から撮影開始の予定をたてました。ところがこの年ピナ・バウシュが他界、撮影不可能になり映画化頓挫。失意の中、バウシュ率いるヴッパタール舞踏団の姿に励まされ製作を決意して「Pina」が完成したという経緯があるんですって。

ピナ・バウシュの舞踏芸術を表現するのにヴェンダースが最適と判断した3Dです。その方法がないときは「映像化の術がない」と映画計画を進めることはなかったんです。そういう作品です。これを3Dで見ないでどうすんだ。
確かに普通に2Dで見てもとんでもない威力です。すごいです。しかしこれを3Dで見たかった。大きな劇場の3Dで見たかったんです。涙。いや泣かなくてもいいんですが。いや泣きたくもなります。

というわけで、すごいです。これ凄いです。ピナ・バウシュ率いるヴッパタール舞踏団です。何ですかこの人たちは。このおかしな人たちの体には何やら得体の知れない力が潜んでおります。舞踏ですか。演技ですか。何ですかこれ。この芸術、この衝撃です。胸騒ぎを起こし異次元へ持って行かれます。もうこれは凄いです。

すいません。ほんとすいません。舞踏とか、知りません。全然わかりません。白虎社とダムタイプくらいしか知りません。意味わかりません。興味もありませんでした。
でも触れてしまいました。全身を使った表現です。動きや表情です。時に流れるように繊細に、時に荒れ狂い、時にコミカルに、まあ何という身体表現の幅広さ。こういうのが舞踏の神髄ですか。何か知りませんが、ただただ目が釘付けになります。

「Pina」は映画的興奮にも満ちています。被写体の舞踏だけを観る作品じゃありません。映像化したヴィム・ヴェンダースの映画作品にもちゃんとなっています。舞台の撮影におけるカメラの位置や動きも舞踏と一体化しているし、個別パフォーマンスシーンの美しさも格別です。舞踏そのものと、それを落とし込んだ映画が渾然一体となってるんですねえ。

ピナ・バウシュのことも舞踏のこともさっぱりわからないので解説やご紹介などとてもできません。完全に真っ白です。真っ白で観ました。感想なら書けます。
すごいです。これ凄いです。これ感想です。

「カフェ・ミュラー」はほんのさわりだけ見たことがあります。どこで見たか。もちろん本物の舞台じゃなくペドロ・アルモドバルの変な名作「トーク・トゥ・ハー」です。あのとき初めてピナ・バウシュという人の演技というか舞踏を見まして、一瞬で五臓六腑に染み渡りました。ほんのさわりだけですが、いや力が迫り来るわけです。いいのを知りました。「トーク・トゥ・ハー」のおかげです。

「Pina」では、この「カフェ・ミュラー」を含め、4つの舞台を見ることが出来ます。もちろん抜粋なので、もっと見たいのですがそれはそれです。どの作品も素晴らしいです。冒頭の砂のやつとか、いきなりの衝撃でさぶいぼぼーっです。(訳註:「鳥肌が立った」)

それからお月さんのやつですね、後半に出てくる岩と水の作品、あれも凄いです。特にひとりの女性が次々に男性陣に抱きかかえられて舞台上を移動するシーン、あの無重力感ったら並じゃありません。

舞台以外に、団員の個別パフォーマンスをいろんなロケーションで行うシーンが挟まれます。ヴィム・ヴェンダースの映像と結びついてまるで短編映画のようです。どれもこれも美しく、神懸かっています。

すいません。ほんとすいません。町中で走っているあの電車、あれいいですね。あれ何ですか。モノレールですがレールが上にありますよ。あれ乗りたい。あれにめちゃくちゃ乗りたいんです。あんな面白いものが街の中を走っていて、なんという文明国なんでしょう。羨ましすぎて泣けてきます。いや泣かなくてもいいんですが。

というわけで何という馬鹿のような感想文。でも仕方ありません。この舞踏と映像の力に触れれば、誰でも放心状態になってこうなります。
予告編だけでもさぶいぼぼーっです(訳註:鳥肌立ちます)

それにしてもこれを3Dで堪能できなかったことが悔やまれます。
おうちで見るときはせめて大音量で観ようではありませんか。

最後に余計な一言。冒頭に登場するピナ・バウシュは煙草を咥えています。ダンサーなのに煙草を吸うのか、とちょっと驚いてしまった自分を恥じます。世俗にまみれて影響を受けてしまったことを大いに恥じます。ダンサーだからこそ、芸術家だからこそ煙草を嗜むのです。

追記。
さて、これを読んだあなたは引き続き「ピナ・バウシュ 夢の教室」を読みたくなります。写真もいくつか挙げてますんでぜひどうぞ。

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