クスクス粒の秘密

La graine et le mulet
クスクス粒の秘密

しれーっと2ページ目を追記しております。

といいますのもね、クスクスを食べたんです。いやそんなことは大層な話ではないんですが、私は初めて家で作って食べました。これによりある新発見を感じ取ったので書かずにおれないという。

クスクスはかんたん

クスクスというのは世界最小のパスタと言われておりまして、つぶつぶのパスタです。映画の中では元奥さんが作るクスクスが爆裂的旨さ、片や愛人の作るクスクスは酷い代物であるとされています。そうです。だからこそ最後の最後、愛人が「この危機を何とかしなきゃ」と善意で作ってくれるクスクスを見て我々はのけぞるわけでありますが、そもそもですね、このクスクスというもの、これそれほど大層な料理なのかということです。

映画を観ているとき、私も主人公たちと同じように「せっかく作ってくれたクスクスがない、たいへんだたいへんだ」とそればかり感じて焦っていたんですが、これ、自分で作ってみて初めて「簡単に作れるやん」と気づいてしまったんです。

そうなんです。100人前は確かに多いですが、肝心なのはソースというかスープのほうなんですよ。クスクスなんかただの簡単パスタです。元奥さんは上手に蒸していましたが、蒸さなくてもお湯で蒸らせばそれなりのものになります。時間も短いです。数分でできます。パスタ茹でるよりはるかに楽です。

美味しく蒸せばそりゃたしかに美味しいだろうけど、まああの状況ですから多少のことに目をつむっても一向に差し支えありません。なのに皆のあのあたふたぶりは何事か。そうです、知らなければあたふたするんです。主人公は船上レストランを開くんだとか言ってますが、料理のことなど何も判らぬわけで、だからあんな風になってしまうんですよ。観ているこちらもそうです。手間が掛かる料理であると思って見るのと、その気になれば大急ぎで追加を作れるんだと判ってみるのとではこれまた焦り方が全然異なるんですよね。

これに気づくとまた新たな見方が出来てきます。例えば愛人が作ってくれるクスクス、例えば元奥さんがしれーっとホームレスに差し出す暢気なシーン、船上で酒を飲ませよう、誤魔化そうという娘たち、いたたまれなくなった主人公がバイクに乗って探しに行く様子(じつはこれも現場から逃げ出したにすぎないと思えたりします)、これらのシーンがまるで別の意味を伴ってきます。この映画が言うクスクス粒の「秘密」とは、まさにこれのことだったんではないのかと。

なんとも恐るべき秘密でした。

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