The WAVE ウェイヴ

DIE WELLE
如何にしてファシズムが完成していくのかを緻密に描く。
The WAVE ウェイヴ

ファシズムについて学ぶ学校の授業で、実際にファシズムを高校生に体験させます。どのようにファシズムが機能するのかを非常にわかりやすく描いた良作。

この映画は徐々に拡大するファシズムを描いていますが、実際に最も恐ろしいシーンは序盤の授業風景です。シミュレーション授業を行う前の段階で生徒にいろいろ意見を聞くシーンがあるのですが、ここですでにファシズムの目がきっちり描かれています。多くの人はこれを見逃すのではないでしょうか。

この監督は相当にファシズムのシステムを研究し、それをどのように映画に落とし込むか考え抜いたのだと思われます。中盤以降、だんだんとファシズムに染まっていく高校生たちの姿がメインに描かれ、それこそがこの映画の本筋なんですが、この部分はエスカレートを描いているのであって発芽の原因を探るものではありません。「ファシズムの芽は常に潜んでいる」という危機感を示す序盤のインタビューシーンに、監督の重要なメッセージの一つが紛れ込まされていることは確実に思えます。

ファシズムは何もないところから何かのきっかけで出てくるのではなく、常に誰かの根っこに存在し続けているわけです。それは消そうとして消せるものではなく、育たないように注意を払うしかない性質のものであるわけです。
先の大戦後、あれほど歴史を総括をしてきたドイツ国民でもそうなのですから、何の総括をすることもなく再び戦時と同じファシズムに傾倒している現代日本人は本当に覚悟しなければなりません。

この映画は、ファシズムが拡大していく状況の中で、敬礼やロゴマークなどのシンボリックな出来事を映画的に若干大袈裟に描いています。くすっとするシーンもあります。映画ですから多くの人に楽しんでもらうことも必要です。しかしそれを以てこの映画の評価を下げるべきではありません。でもあの一連のシークエンスは本当に「ちょっと大袈裟に描いた」だけのふざけた演出でしょうか?
日本で、外から観れば可笑しく見える同じく大袈裟な一連の動きもすでに十分起きています。いや、世界レベルでも起きています。如何に馬鹿げていようと、嵌っている当事者にはわからないのです。その結果やっかいな未来が待ち受けていたとして、後から振り返ったときにターニングポイントがどこにあったのか、きっと誰も分からずに間違った答えを出すことでしょう。
この映画の中で、どの時点がターニングポイントだったと思いますか?
それをよくよく考えるべきです。

2010.5.11

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