優しく殺して

Haz Conmigo Lo Que Quieras
「実話に基づくフィクションである」とわざわざ断るようなことか?と思わなくもない「優しく殺して」は2003年スペイン産悪女的哀愁コミカルファミリーノワールの良質な一本。
優しく殺して

またわけのわからない紹介をしておりますが、これは一人の悪女を中心にいろんな連中が人生転げまくるなかなか面白い映画で、コメディというには若干抵抗のあるスリラー・・・いや、スリラーじゃないな、まあ、何ですか、ドラマです。

そういえば映画にはジャンルというものがあって、宣伝のためのキャッチコピーの一種ですが、多くの映画が簡単なジャンルには収まりません。「ジャンル映画」という悪口もあるくらいです。一般的なジャンルの中でどうしても抵抗があるのが「ドラマ」というジャンルです。何ですかドラマって。よく分からないジャンルです。分からないのでこのブログでも「ドラマ」ってカテゴリを作っていません。でもそのせいでジャンルわけが悩ましいことが多くて、何で「ドラマ」作ってないんだろと自分を呪うこともしばしば。

と間抜けながら奥の深いこのテーマはいずれもうちょっと自分で整理しないといけませんが、そういうのは関係なくこの「優しく殺して」というドラマはですね、コメディにもスリラーにもなり損ねたドラマっていうのがふさわしいような気がします。一応コメディなんですか?そうかなあ。まあそうかも。

お話は・・・ひとりの女に関わる家族や人間たちのドラマで、この女がまあとんだ悪女で、主人公にこんな奴を持ってくるなんて凄いなと思うほどのぶっ飛びぶりです。冒頭からいきなり母親の目を盗んで自室で売春などしております。

主人公の女の子は奔放で明るくエロティックでわがままで自己中心で人非人。モテます。
売春の客は歯科医です。その歯科医の義父は妻を亡くして寂しいパン屋店主。このパン屋に主人公の女の子がバイトに行くことから、店主に気に入られます。エロい目で見られたりしますね。
もうひとり主人公に惚れるのが金貸しの取り立て人です。この取り立て法が変わっていて、うさぎの着ぐるみを着て付きまといます。うさぎに付きまとわれて気持ち悪すぎて借りた金を返してしまうという寸法ですね。なんだこれ。めちゃおもろいやんか。
「うさぎはもういやなんだよ」と愚痴る取り立て人。雇い主は「出世したら脱げるからがんばれ」と言い放つイタリア顔の男です。このイタリア顔の金貸し社長がまた鬱陶しい厭なやつでして、この映画、人を不愉快にさせるキャラで満ちていますね。でもそこがいいの!
でも人をほのぼのさせるいいキャラにも満ちています。そういう人たちのいい人っぷりがもうすごくいい人で、アホだったりしますがいい人で、その魅力がすべてを打ち消します。いい人の筆頭がうさぎの着ぐるみを着ているチンピラ彼氏です。

てなわけで遺産目当てに店主と結婚しつつ借金取り立て人のいい人チンピラとつきあう主人公女性です。チンピラ愛人に「すぐ死ぬと思ったらなかなかしなない亭主を殺してよ」と促します。チンピラくんは母親思いのいい男なのでビビってます。人殺しなんて・・・ががががんばります。みたいな。このチンピラくんの母親は立ちんぼ売春婦のジャンキーでボロボロのおばさんだったりします。

だらだら筋を書いてもしかたないんですが、でも何だか魅力的でしてね、酷いストーリーで主人公も最悪の人間ですが目が離せません。個人的感想なので強制しませんがこの映画はとても面白いです。

スペイン語圏の女性はどういうわけか声が甲高い人が多いです。甲高い声でまくし立てるスペイン語の響きがたいそう心地よいです。特にこの映画の主人公みたいな性根の腐った美女が甲高いスペイン語でまくし立てるのが何とも味わい深くて、いったい何のためにこんな映画を作ったのかと不思議がりながらもたっぷり楽しめました。

物語後半になると、チンピラくんの味わいが抜きんでてきます。彼の人の良さこそこの映画のキモですよ。主人公のお姉さんもとてもいいけど。

という簡単な感想で、この映画は一般的にはあまり評判よくないっぽいんですけど私はとても気に入っています。といいうか、一般的には観てる人少ないか?

ところで「実話に基づくフィクション」って書いてあったけど、どういうところが実話に基づいてるのかよく分からないし、実話に基づいているからってそれがどうした、という気もしますが詳細不明にて謎が謎を呼んでおります。

もひとつついでにところで、「優しく殺して」というニッキ・フレンチの著作が原作の「キリング・ミー・ソフトリー」(チェン・カイコー:2002年)とは何の関係もありません。

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