昼顔

Belle de jour
医師の夫を持ちパリで幸せに暮らす若妻セヴリーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)の禁断の妄想。幻想と現実。
昼顔

響き渡る馬車の音と森での陵辱。胸騒ぎの冒頭から始まり、この作品、不安感と後ろめたさとエロティシズムと幻想と妄想に打ち震える恐るべき作品。今時だったら「シュールだよね」なんて言われてしまいそうですがシュルレアリスムの本家本元ルイス・ブニュエル大先生の作品だから当たり前なのであります。

「昼顔」を撮った1967年は63年にフランスに招かれて「小間使の日記」、65年「砂漠のシモン」を撮った後で、私が大好きな「銀河」を撮る前年です。文学的あるいは耽美的な映画を撮ってフランス映画界での重鎮となったころですね。
以前取り上げた「熱狂はエル・パオに達す」のメキシコ時代とは全然タイプが違う映画となっています。

カトリーヌ・ドヌーヴは当時23歳。イヴ・サンローランの衣装に身を包み、幼少期に抱えるトラウマから性と愛への複合観念、妄想幻想白日夢、現実との境界を見失ったか、禁断の扉を開けてからがさあ大変、そんな役所をしれ〜っと演じます。些細なきっかけが雪崩的に彼女の周囲を巻き込み、混沌を招き入れ、人を傷つけ、己をも傷つけた果てに来る結末や如何に。

この映画、やたらと彼女の美しさばかり話題になりますが他の人物たちの造型もいいし、幻想的な展開も一級品だし、サスペンスとしてもかなりのドキドキ感を味わえます。そして最後にはやはりこの映画が愛の映画であったということを痛感し、その愛たるや深みに深みが重なり複合的な罪悪感を併せ持ち悲哀と後悔と安堵と狂気に満ちた混ざり合いのぐちょぐちょのどろどろであると,そういうことになっております。

これはすごいす。馬車の鈴の音が頭にこびり付きます。
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞。

2010.02.26

2006年になって、巨匠マノエル・デ・オリヴィエラ監督が本作の続編「夜顔」を撮りました。実に40年ぶりの続編。特別企画。「昼顔」の40年後が舞台ですって。どんなんでしょう。カトリーヌ・ドヌーヴは出演していないそうです。

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コメント - “昼顔” への4件の返信

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