雑魚

Agallas
雑魚
公開年:
2009
製作国:
監督:
脚本:
撮影:
音楽:
  • サビエル・フォント
  • アルトゥーロ・バケーロ
主演:
出演:

冴えないチンピラが右往左往。汚いことやってでもビッグになってやるぜ重要人物になってやるぜと野心に満ちたチンピラ兄ちゃんだが所詮雑魚は雑魚なのか。スパニッシュノワール...というか何というか、独特のノリで進行するチンピラ物語、面白いよ、これ。

雑魚

さてスペイン映画の「雑魚」という邦題が付けられたこの映画、元々のタイトルは「Agallas」つまり「根性」っていう、逆接的な言葉です。

主人公の兄ちゃんは根性が座ってるところもありますがそうじゃないところもあります。他の登場人物もどっしり構えてるかというとそうでもなかったりします。登場人物全員、根性根性ど根性と言いながら全然根性がなかったりするんですね。それでこそ「根性」というタイトルが効いてくるという、そんな感じです。

それに対して邦題の「雑魚」はまさに雑魚です。チンピラも雑魚、親分だって雑魚の一種かもしれません、大物面していてもこいつらまとめて雑魚なのじゃーっっていう、そんな意味を汲み取れるという、なかなかいい邦題かと思います。

で「雑魚」ですが、悪党のチンピラ兄ちゃんは家を追い出され街も追い出され、それで負け惜しみみたいに野心に火を付け、企業経営している裏稼業をやってるっぽい社長を見てにピンと来て近づきます。出世のために非常に汚い手を使ったりします。

悪党は悪党を臭いでかぎ分けます。チンピラ兄ちゃんの読み通り、近づいた社長は麻薬の取り引きをやっている裏街道の親分で、どんどんと内側に入っていきます。

話はとんとんとん、と進み、展開に次ぐ展開を果たします。その隙間に小さく垣間見れる登場人物の人となりがとても味わい深く、適度に軽くていい案配です。

冒頭からしれーっと見ていると、なんかちょっと古いテレビドラマを見ているような気分になったりして、つまりB級っぽさを感じるわけなんですが、安いドラマかと思いきや、実はとても個性的で面白いんですわ「雑魚」

どういうところが面白かったかと言いますと、まずは全体を包む安っぽさです。これ、安っぽさというか、ノワールっぽさなんでしょうか。多分そうなんでしょう。でも安っぽく見えます。これがいいところです。そしてこれが罠です。油断します。

冒頭のごたごたの後、狙いを付けた企業に潜り込み、信頼されたりして、担当のおじさんと仲良くなります。このおじさんのおうちに招かれるあたりの人情的で個性が立ったシーンで「おっ」ってなります。「いいやん。この映画、いい感じやん。義理の人情やん」とわかってきます。

そしてその直後、人情的にぐっときていたこちらをかなり突き放す展開もやってきます。こういう非情なところがこれまたいい感じなんです。こちらはちょっとのけぞります。

重要登場人物、裏ビジネスのボスに気に入られ、まんまと重要ポストに就くチンピラ雑魚の兄ちゃんです。この兄ちゃんもそうですし、ボスもそうですし、他の子分も他の登場人物たちも、みんなとてもいいキャラクターです。

一見、この手のお話の類型です。よく見ても類型です。でも変なところがときどきあります。そこはかなり個性的です。設定的にも実に不可思議、類型と言えば類型ですが、類型を超えた軽さや可笑しさに充ち満ちています。

どうもただのちんぴらやくざのお話とは違っています。どこかが素っ頓狂なのです。この素っ頓狂さが物語の随所で味わいを際立たせます。オチあたりに極めつけもやってきます。最後にはけらけら笑って「おもろかったなー」とすっきりさわやかです。

ボスのもう一人の子分と三人でプールにぷかぷか浮いて会話するシーンや、妙な作戦を実行するあたりの面白さはちょっと他では味わえません。

このヤクザたちの作戦はそもそもある危機のために行われるわけですが、その危機というのが・・・・いや、これは言うまい。オチに繋がってしまいます。もうね、このあたりは最高です。

それから特筆すべきボスの娘です。可愛らしい娘が登場するのですが、まあ脚本的にも演出的にも女優的にも映画的にもこの娘は最高ですよ。この娘は話の節々に登場して、その登場の仕方から顛末まで、練りに練られています。つまりノワールの要となる女性は何とこのデブ娘というわけですよ。

エピソードをいちいち紹介しないと、この安っぽくてシリアスかつ素っ頓狂で個性的な独特の面白さは伝えきれませんが、とにかく私の好きな感じです。一面だけで評価してはいけない系です。無条件にお勧めはしませんが私はこれ観て大喜びしました。

さてそういうわけで役者さんです。主な主人公はスペインを代表する俳優ウーゴ・シルバと、大物カルメロ・ゴメスです。二人の危うい関係が見どころのメインとなりますが、そっちのメインのストーリーもいい感じですよ。信頼、裏切り、駆け引き、オーノワァァールって感じで。でもまあ、緊迫感に満ちていながらも力の抜けた騙しあいがほんとにおもろい。演技も面白い。
「雑魚」でカルメロ・ゴメスは映画作家協会賞最優秀主演男優賞にノミネートされたんですって。

あのすごい娘を演じたのは...誰でしょう。役名なんだっけかな。忘れた。はち切れそうな可愛らしさと、人を突き落とすブラックさ、もちもちのお体で存在感放ちまくりのこの女優は...Rala Blancoでしょうか。ざっと見たところ、他に映画の仕事していないっぽい?もったいない。

そして最初ぜんぜん気づきませんでしたが「800発の銃弾」でメロメロのヨイマ・バルデスもボスの馬鹿奥様役で出演しています。メロメロはわしだけですか。そうですか。

味わい深いおじさんはセルソ・ブガーリョ。「海を飛ぶ夢」「サルバドールの朝」で見ました。いい顔してます。

[広告]

コメントを残す