太陽に恋して

Im Juli.
ファティ・アキン監督2000年の青春ラブコメロードムービー「太陽に恋して」の捨てがたい魅力はいったい何事でしょうか。
太陽に恋して

ファティ・アキン監督もかなり好きな監督です。この監督の経てきた知性遍歴に共通点もあって、なんかいろいろツボなんですよ。リアルタイムでは全然知らなかったんですが、どの作品も最高に好みの傑作ばかりで、遅咲きファンであります。古いのも観ます。

「太陽に恋して」は主人公のまじめ教師ダニエル(モーリッツ・ブライブトロイ)の恋のどたばた珍道中です。おとぼけラブコメロードムービーと言っていいですね。

ドイツからイスタンブールへの旅をするお話です。途中でいろんな人と出会います。最初に道端で彼を見初めて惚れてしまうキュートで強気なユーリ(クリスティアーネ・パウル)との腐れ縁みたいな展開もあり、それ以外の人達とのあれこれありです。
冒頭はちょっと変わった感じでスタートします。

えーと、冒頭はちょっと置いといて、順序立てて書くのが億劫なのでいろいろすっ飛ばして先に最も気に入った部分について書きますね。

この映画の最も注目すべきシークエンス、私がハート魔神と化しひゃっほーひゃっほーと喜びむせんだその箇所は、物語の中ほどで出会うトラックドライバーのルナとのエピソードです。

このトラックドライバーのルナ、ドイツ語も英語もわからないと無言を貫きつつ、いかつく煙草を吸い主人公をドラッグでへろへろにさせるかなり怪しい女ですが、このルナを演じてるのがですね、「黒猫・白猫」のブランカ・カティッチなんざます。
「黒猫・白猫」はエミール・クストリッツァの大興奮ドタバタ映画で絶賛大好物映画ですがその中でもヒロインを演じたブランカ・カティッチの魅力はもう太陽の如しでした。
「太陽に恋して」は2000年の映画なので、「黒猫・白猫」のほんのちょっと後、近い時期ですので、あの時と同じような、否あるいはそれ以上のこの時期の彼女の魅力を堪能できます。超貴重、超素敵。この、ルナが大活躍するシークエンスがあるだけで「太陽に恋して」の価値は100倍くらい上るのであります。

太陽に恋して ブランカ・カティッチ

いささか興奮気味で申し訳ありません。
さて話を戻して冒頭ですが、いきなり何もない砂漠みたいなところでヒッチハイクしようとするところからです。乗り物がない野暮ったい男と、車で通りかかるバイオレンスな感じの男です。
車のトランクには死体らしきものが。そしてごたごたしたあげく、野暮ったい男を軽くはね飛ばします。最初こんなシーンを見て「げげっ」とのけぞります。バイオレンス映画であったか、と思ったほどですが、どうも様子が変です。
結局、バイオレンス男は野暮ったい男を乗せてやり、話を始めます。で、野暮ったい男がここまでどういういきさつがあったのかを話し始めて映画本編が始まるんですね。
ずいぶん経ってから、またこの車のシーンに戻ったときのこの二人の立ち位置がとても面白いです。

野暮ったい教師ダニエルを道で見初めて惚れてしまうキュートなユーリが登場します。ユーリがちょっとした占いみたいなことを言ったがために、その一言が原因でダニエルは別の美女との恋を夢みてイスタンブールへの旅に出る決意をします。ユーリと同行する羽目になり、二人で旅しますがダニエルの恋の目的はあくまでも別の美女です。でもまあ、そのへんは予想通りのラブコメ展開しますのでね、あれですよ、そんなもんです。

旅の途中はほんとにいろいろあります。いろんな人と出会い、マリファナ吸ったり煙草吸ったりドラッグ盛られたり盛り沢山です。国境でのいざこざ、どろぼう事件、きらりと光る細かい部分のハイセンスな描写の面白さはまるで音楽のような作りです。

太陽に恋して scene

ほんわかラブコメ調の収束にて大筋ではいたって普通の、日本人にもなじみ深そうな漫画のようなテレビドラマのようなお話ですが、人と人とのやりとりや見逃してしまいそうな細部の抜きんでた面白さが全体を包みまして、安っぽくもないし軽すぎもしないし、気恥ずかしいながらも素直に「おもろかったなー、おもろかったなー」と絶賛できる仕上がりの青春映画で、若さ溢れる映画なのに見る人の年代を選びません。

ファティ・アキンの映画はシリアスなものもコミカルなものも、流れるようなストーリーと魅力的な人物描写で見るものを虜にしますね。

「太陽に恋して」はちょっと前の映画ですが、初めて見る人にとってはそんなの関係なく今そのものです。旬がある映画もあれば、時代と無関係に面白い映画もあります。

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