ヒューマン・レース

The Human Race
街の人々がどこかわけのわからない場所に連れてこられて競争させられます。最下位で差を付けられたり、ルートを外れたり、放棄したり、そういうことすると無残に殺されます。
ヒューマン・レース

「なんかホラーとかスプラッタとかスカッとする映画ないんかい」と時々わけもなくアホみたいな映画が観たくなるわけですがそんな時にピッタリなのかどうなのか、死を賭けた競争の映画「ヒューマン・レース」を観てみました。

街の至る所で人々がピカっとさらわれて、変な場所に連れてこられます。そこそこ下町っぽくてそこそこ何にもなくてたまに建物がある変な場所です。天からの声が響き渡ります。「おいみんな、決められたルートをぐるぐる回って競争しろ。周回遅れは死な。それと、最終的に一等賞以外は死な」となげやりな指令。バトルロワイヤルや銀齢の果てやハンガー・ゲームでさえもう少しましな理由付けを行います。
「あほらしすぎる」と天の声を無視した人は頭が破裂して死にます。
「ヤバい、逃げよう」と道を外れた雑草を踏んだとたん頭が破裂して死にます。
この、ちょっと道を外れて雑草を踏むと死ぬというのが、子供っぽくて懐かしい発想です。
「この白線のところだけが道な」
「おう。ここだけ道な。ここからはみ出たら死ぬのな」
「そやで、はみ出したら頭が破裂やぞ」
「こら押すなや」
みたいな。

しょうがないので、人々は競争することになります。駆け出したりとことこ歩いたりします。

予想通り、他人をわざと突き飛ばしてルートを外れさせたり、か弱きものを無慈悲に見殺しにしたりといったそういうことが起きてきます。「乗せられずにみんなで知恵を出し合おう」なんて人もいたりします。
謎や理由付けについては考えるのを放棄しつつ、バトルロワイヤル的死の競争が本編の全てです。

多分すんごく低予算の、ほとんど自主作品に近いレベルの映画じゃないでしょうか。最初からそういう映画だと思っていましたので何ら抵抗ありませんが、でね、そう思って舐めてかかると、これがちょっと面白いんです。はい。

バトルロワイヤル的な工夫はと言えば、無慈悲に殺しまくるとか、いわゆるお約束的なものごとをさくっと裏切るとか、そういう範囲です。特に目新しくもないのですけど、全然面白くない訳でもなくて、そんでもって、低予算のこの手の映画なのに、比較的まじめにちゃんとやってます。照れ隠しみたいな楽屋落ちや下手なギャグに逃げたりしません。
映画の説明から受ける印象ほどは軽々しくなくて、意外と好感あるなーと思った「ムカデ人間」なんかとちょっと似た印象かもしれません。
しかしまあ、辺境のロケ地の狭い範囲をただぐるぐる回って次々に人が死ぬだけのヘンテコな映画ではあります。なんせ何十人も死にます。

それでも映画の後半に差し掛かるころには「この話、それでどうオチを付ける気なのか」と少し気になってきます。

オチの一歩手前に素晴らしいシークエンスがありました。この一箇所だけは褒めます。つまり、本編中、安いロケ地の妙な映像の端にちらちら映っていたあるものが突然注目を浴びるシーンです。これは驚きました。今までそれが薄ぼんやり遠目に映っていたのは知ってたのですが、てっきり風力発電の羽根かなにかと思ってたんですね。誰でもそうですよね。それがあなた、まさかのあれですって。この異常シチュエーションのネタのためだけに本編をがんばって作ってたんですね、ハフ監督。これは素晴らしいです。監督の心意気に免じて断じてネタバレはしません。かといって「気になる人はレンタルでも何でもして観てみることをおすすめ」とまでは思いませんが。

そしてその勢いのまま、妙なエンディングを迎える訳です。ここまで来ればヤケクソでしょうか。いえ、なかなかよろしいオチの付け方だと思います。ただしこのラストシークエンスのためだけに本編の阿呆らしい殺し合いがあったのかと思えば、何ともいえない阿呆らしさに包まれてしまうのもまた事実。

というような珍妙な映画でした。珍妙であることは価値あることです。いいと思います。

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