ダリオ・アルジェントのドラキュラ

Dracula 3D
ダリオ・アルジェントがドラキュラ撮ったんですって。
ダリオ・アルジェントのドラキュラ

最近はもうダリオ・アルジェント監督の不可思議さにもすっかり慣れっこです。ですのでこれ観ても大丈夫です。全然気にしません。師匠には一生付いていきますとも。

何が起きたかダリオ・アルジェント師匠がドラキュラを撮りました。一応原作にブラム・ストーカーの名を出すほどに原作を意識した作品です。
ジョナサン、ルーシー、ヘルシング教授、ミナ、ドラキュラ伯爵、お馴染みのキャラクターが登場しますよ。

映画が始まってすぐ気づくのは、作風が所謂「昔のドラキュラ映画」って感じに徹しているところです。ホラー映画という言葉がまだなくて「恐怖映画」と呼んでいた頃の古き良き映画の作風です。
画面の色合いや人の顔の白飛びや夜でも局所的に明るい照明や演技の辛気くささやこけおどしの森や美しい女優や馬鹿馬鹿しい展開ですね、そういうのが郷愁感をくすぐります。
残念ながら映画の内容自体は古き良き恐怖映画の頃の作品に完全に負けていますがそんなことは織り込み済みなので気になりません。

個人的なお話になりまして恐縮ですが、私はクリストファー・リーのドラキュラシリーズに特別な思い入れがあるのでして、シリーズほとんどをテレビの洋画劇場で観たのですが、ドラキュラ映画と言えば夏の恒例でした。同じ作品を毎年毎年飽きもせず観ておりました。
1年生の頃、眠い目を擦りながら洋画劇場の恐怖映画を観ます。怖いくせに観ます。当時、夏は兄弟揃ってボンボンベッドというもので寝ておりまして、恐怖映画を見終わるとまず背中が怖くなります。ですので、必ず家族の誰かがいる方向に背中を向けたものです。蚊取り線香の香りと扇風機の音、ボンボンベッドの上でもぞもぞと丸まるその記憶が鮮明です。背中を家族に向けてもまだ怖いので両親にせがんで買ってもらったお気に入りのクラシック小品集を掛けてもらいました。最初はそれで心安らかになりましたが、2年ほど繰り返しているうちに恐怖とクラシック音楽が条件付けされてしまい、クラシック音楽を聴くと怖くなるという恐怖症にかかりました。これは基本的に今も治っていません。
クリストファー・リーという役者の名前を始めて意識したり「映画」が特別なものであるということも知りまして映画好きになった最初のきっかけです。ドラキュラやハエ男、何より淀川長治先生のおかげです。それと、テレビをまだみんなが観ていた昭和の頃、テレビで映画をやるというそれこそが衰退しかけていた映画のファン層を新たに獲得する強い力となっていたわけですね。

そんなわけで、ダリオ・アルジェントが目的としたであろう60年代〜70年代はじめあたりまでの恐怖映画の絵作りに、ある程度以上の年齢層はわりとぐっときたりするわけです。

近年、映画的ノスタルジーの作風ってのがよくあります。無声映画で作ったりノワール調で作ったり50年代風にやってみたり、いろいろあります。何作かはほんとに上手く作っていてそれだけじゃなくちゃんと凄く面白かったりします。
ダリオ・アルジェントのドラキュラはそういう意味ではそのあの、内容的にはその、あの、あれですが、でもまあまあ上手くいってます。映像は綺麗だし、時々今風のネタを唐突に入れて笑わせてくれたりします。
ですので本作は決して悪くない一本です。ただダリオ・アルジェントのファンでなければ特に観なくてもいいかという、これ観るならクリストファー・リーのシリーズをレンタルするか「ノスフェラトゥ」かまたはぐっと古く「吸血鬼ノスフェラトゥ」を観たほうが・・・あ、いや、まあ、いいですけど、そんな感じです。しかしながらしつこいですけど個人的には好感度高いんですよ。
タニアの泣くところとか、お気に入りシーンもあります。

アーシア・アルジェントがまたまた出ています。今回はルーシーの役ですね。ちょっと活躍しすぎのヘルシング教授をルドガー・ハウアーがやってます。ミナを演じたマルタ・ガスティーニという女優さんもいい感じです。
ドラキュラの手下となったおっぱいわがまま娘をやってるのがミリアム・ジョヴァネッリという女優で、名前に書き覚えがあったんですが「鶏小屋」に出てた彼女だったんですね。今作はこのキャラクターの勝利です。

ドラキュラ伯爵のトーマス・クレッチマンは、クリストファー・リーの美しさもクラウス・キンスキーの儚さもありませんで、ちょっと妙な感じです。でも途中でいろんなものに変身したり派手に振る舞ったりして親近感のある面白バンパイアとなっておりました。

まあまあだるいけどノスタルジー心をくすぐり好感の持てるダリオ・アルジェントのドラキュラでした。

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