バグダッド・カフェ

Out of Rosenheim
ラスベガスにほど近い砂漠の寂れたモーテル、バグダッド・カフェを舞台に描く人情と友情とそして吹きすさぶ風。1987年の大ヒット映画「バグダッド・カフェ」はコメディ路線ながら人の心に沁みいる永遠の名作。
バグダッド・カフェ

ドイツ人監督パーシー・アドロンによるアメリカを舞台にした大ヒット人情話です。
日本では1989年頃に公開され高評価の大ヒットロングランを続けましたが当時気になりつつ観ていませんでした。「ベルリン 天使の詩」や「バベットの晩餐会」などこの時期の有名作品の多くを観ていなくて、何か個人史的なアンチ的なマイブームの影響下のためですが、あとにずいぶん後悔したものです。観たいなー観たかったなーでも今更観るのやだなーとか。やだなーやおまへんな。いちびってないで観ておけばいいものを。

訳註:いちびる=調子に乗る、格好をつける

 特に「バグダッド・カフェ」に関しては、これより何年か前に観ていてお気に入りだった「アトミック・カフェ」という映画にタイトルが似ているというだけの理由で嫌っていました。全然関係ないのに。ほんと馬鹿ですね。それに映画以上に大ヒットした音楽「Calling You」という曲がですね、ほんとに良い曲なんですが、良い曲であるからこそ良い曲にうっとりする自分が情けなくて、さらに意識的に遠ざかっていたという、ほんと馬鹿です。数年後には完全版みたいなのがリバイバル上映されてまたまた人気沸騰していました。その時は再上映していることすら知りませんでした。

素直に「バグダッド・カフェ」を観たくなったのはさらに何十年も経ってからです。DVDでリマスターが出た頃に「あ、このポスター懐かしいな、観たいな」と。素直な子供になるのに何十年も掛かってしまったものです。で、リマスターの事もすっかり忘れていましたが思い出したので観ました。ついに。やっと。はじめて。このまま観ずに死ぬのも厭だなと思いまして。

つまらない前置きはいいとして「バグダッド・カフェ」ですが、アメリカはラスベガスにほど近い国道沿いのモーテルです。カフェを併設しています。
ドイツ人旅行者、夫婦に見えるおじさんとばさんの二人が砂漠のように何もない道路脇に車を止めて何やらトラブっているような様子です。暑くて喉が渇きイライラするとてもよい冒頭です。二人の事情はわかりませんが、まさかの置き去り離ればなれという「まじか」と思う突飛な始まりです。
おばさんはてくてく歩き、うらぶれたバグダッド・カフェに辿り着きます。
バグダッド・カフェでは毒舌の女将さんが亭主を罵っていたりしまして、元気あるんですがヤバそうな店にも感じます。おかみさんきっつーって思います。
このバグダッドカフェにドイツ人のおばさんが流れ着き、亭主は家出をして、モーテルの滞在客や何人かの常連登場人物たちがいて、女将さんがいて、そして小さい物語が紡がれます。

まあ、いい映画ですこと。そりゃあ観た人みんな大好きになりますわ、こんな映画。登場人物全員クセがあって面白いし、細かいエピソードたまらないし、ほこり臭いし、半腐りのカフェとか、ヨーロッパのコーヒーについてとか、人情とか、友情とか、ピアノとか、手品とか、こんなに面白いとは、ちょっとは思ってましたがいやほんと、すばらしいです。人間と情景にコテンパンに伸されます。音楽も染み入ります。今更何言ってんのこいつとか思われてもいいです。
唯一ちょっとだけ思ったのは最後の「やりすぎやろ」っていうあのショータイムのやりすぎ感ですが、まあ、そんなことはほんとに些細な問題なのでどうでもいいはなしです。

この良い映画を観たらやっぱり主人公のジャスミン、マリアンネ・ゼーゲブレヒトの虜になり興味を持ちます。バーシー・アドロン監督は「シュガーベイビー」でこの女優とのコンビ作品を作っていて、このあとにも「ロザリー・ゴーズ・ショッピング」があります。これらも観た人多いでしょうね、今更ですけど観たいものですね。
マリアンネ・ゼーゲブレヒトは96年に「魔王」にも出演していまして、これは「ブリキの太鼓」のフォルカー・シュレンドルフの作品です。それから最近は「バチカンで逢いましょう」(2012)で主演していますね。何かいろいろ興味湧きます。

今ウィキペディア見て知りましたが、最初の公開のあと94年に「完全版」のリバイバル上映、それは何となく知ってましたがさらに後2008年に全カットの色と構図を調整し直した「バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ・カット」が作られてカンヌで上映されたそうです。日本では公開20周年を記念して2009年にまたまた全国公開されたんですと。何という人気っぷりでしょう。わかります。当然です。私がDVD発売を知ったのはこのバージョンのやつですね。これを観たわけですね。長年我慢した甲斐あって、いいの見せてもらえました。

監督のパーシー・アドロンはよく見たら1935年生まれのすごく大人の人ですね。もっと若い監督かと思い込んでました。それと、パーシーというからには女流監督に違いないと思っていましたが男前のおとこのひとでした。勝手に思い込むなっつうの。

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