カティンの森

Katyń
カティンの森事件を多家族の目線からパノラマ的に描く。ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダが放つ強烈な情念。
カティンの森

ものを知らないとは恥ずかしいことです。「カティンの森」事件もそのひとつ。でも知らないことを恥じるべきでない。知ればよろしい。
ということでカティンの森事件の詳細をあまり知らぬまま見始めました。

カティンの森事件とは、第二次世界大戦中にポーランド軍将校、警備隊員、警官、官吏、聖職者が大量(4400人〜15000人との説)に虐殺された事件。この事件=犯罪は長い間タブー視され、政府が公式に認めたのは1990年のことだという。
ワイダ監督の父親もこの虐殺事件の被害者であるそうで、監督の並みではない情念が詰まりまくった映画になってることが伺えます。

1939年、西はナチスドイツから、東はソ連から侵攻され、それぞれ逃れてきた市民が橋の上で出会う場面から物語は始まります。戦争時に大変な目に遭わされた小国ポーランドを一発で表現する実に象徴的な見事なシーンです。

この映画にはアンジェイ大尉とその妻アンナ娘ヴェロニカを軸として、アンジェイの両親、大尉とその妻、飛行技師の兄を持つ妹、アンジェイのお友達、父親を虐殺されたレジスタンスの若者など、多くの家族、とりわけ残された女性たちを中心に多角的に描き、戦争・虐殺事件が持つ家族や個人の悲劇的側面と政治の歴史的側面の両面を同時に描いています。

まるで当時のドキュメントフィルムを観てるような錯覚を起こす抑制された画面構成や色、淡々と描く人間模様は一見すると冷静な映画のように見えますがとんでもない。短いショットや細かい演出に、監督の強い思いが隠りまくっていて、スクリーンから血がにじみ出てきそうなほどです。強烈です。
事実の強さをフィクションからこれほど噴出させるには相当な技術的こだわりもあったことでしょう。脚本の練り直しを含め、構想から完成まで大変な時間がかかったらしいです。ワイダ監督の執念と言うほかありません。

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