ロックダウン

Monolith
ソリッド・シチュエーション・マカロニ・ハイテクカー・砂漠で母の孤独な戦い映画2016年「ロックダウン」です。ハイテクカーに子供を乗せたまま外に出たらうっかりロックがかかってしまい手も足も出ません。
ロックダウン

正式な邦題は「LOCKDOWN ロックダウン」ですって。「ロックダウン」という有名映画がすでにあるからこのようにしたと思われます。原題は「モノリス」でした。これはハイテクカーの名前なんですが、まあ、モノリスなんてタイトルにしたら各方面からいろいろと文句が来そうですからこれを避けたんでしょうか。

若い母親の奮闘記です。新しい車(ハイテクカー、モノリス)に赤ちゃんとちびっ子の中間くらいの年齢の息子を乗せてドライブ、ちょっとした妄想から行き先を変更し、間が悪いことにこの先事故渋滞てことで砂漠へ迂回、またまた間の悪いことにちょっとしたきっかけから鹿を轢いてしまい引っかかって動けない、様子を見るために車に出たところでまたまたまたまた間の悪いことにチビ助が携帯を弄ってハイテクカーは防御モードの完全ロックに!いえーい。

ハイテクカーの防御モードが仇になり何をやっても車に入れない。夜は暗く昼は暑い誰も通らない砂漠で母親はパニック、何とか息子を助けることは出来ないかと奮闘します。

これね、意外と面白かったです。唯一のへんなところを除けば、かなり良いと言っていい。

まずこのようなソリッド・シチュエーションものでは、世界中の観客のツッコミに耐えられるようなシナリオが必要となります。しかしそこから逃れる方法もあります。主人公をあまり賢く設定しないことです。賢い設定すると世界中のツッコミどころ満載野郎が重箱を突いて「なぜこうしない」「なぜああしない」と大変ですが、主人公が賢くなければ「いえ、お客さん、主人公あまり賢くないんで、最適な方法をパッと思いついたりできないんですよ、すいませんね」と、こういう言い訳ができます。

主人公を若い母親、しかも元ロック歌手のまだ遊びたい盛りの設定にしたことで、感情的だったり思いつきで行動したりすることに説得力を持たせます。そんでもって、アホかと思っていたら意外と知恵があったりするシーンを混ぜ込むことで「意外と賢いやん」「がんばれ」と、好感度を上げたり客の応援魂に火をつけさせることもできたという、なかなか侮れないです。

この手の映画では、最初は綺麗な主人公がどんどん汚れてきたりするのも見せ場の一つ。美しい主人公母は、後半どんどん力がみなぎってきて、戦うカッコいい女になります。女優さんがんばってますよ。うおーっとか、あわわーとか、単なる美女など映画の世界では何の価値もありません。如何に猛烈に個性を出し汚れ役で様になるようがんばるかに掛かっています。この女優はそれが出来ています。むしろできすぎています。出来すぎたことが仇になった話に繋げましょう。

女優ががんばり設定を超えた話

「ロックダウン」のオチのネタバレしますけど、まあ大方の予想どおり、絶望的な中で最後の最後には子供は助かりますね。わかりきってるからこれくらいバラしても良いよね?

で、その、最後の助かることになる大事なシークエンスですが、何とここだけこの映画は失敗しています。

何が起きたか。母親が最後の最後にある突飛な行動を取るんです。あっと驚くような行動ですが、それを行ったために結果的に助かるという映画の盛り上がりっぽいシナリオなんですけどね、その行動があまりにも「?」なんですよ。これはもう「ともしび」や「サンセット」の比じゃないくらいの謎行動で、見終わって映画部の部員は全員叫びました。「なぜ?何で?意味わからん。ぜんぜんわからん。なぜあんなことしようとしたの?教えて知恵袋」

誰も教えてくれないので映画探偵Moviebooの部員が推理に推理を重ねた結果、ひとつの仮説を得ました。

つまり、何をやっても歯が立たず、絶望のあまり心中を図ろうとしたのではないかと。これは映画「ミスト」のお父ちゃんのように、あまりにも辛すぎる絶望から、また、あまりにも我が子を愛しすぎているため苦悩を取り除くために死を選択するというような、そういうことじゃないのか?と。

もしそうだとすると、シナリオ上はともかく映画は失敗しているのです。なぜかというと、若いガンバリ母ちゃんをずっと見続けても、この人から完全な絶望とか、苦悩より死を選ぶとかいうそんな選択をする人間性を微塵も感じないからです。映画中、確かに何をやっても上手くいきませんが、それでも最後までがんばって、オオカミに「うおーっ」とか吠えて追い返したりするくらいがんばってました。汚れ役をこなし、キレイキレイのお姉さんがワイルドかーちゃんとしてがんばる姿こそが映画のメインでした。

そうです。この女優さん、カトリーナ・ボウデンさんです。「ロックダウン」ではほぼ一人芝居。ひとり出ずっぱり。「タッカーとデイル」では惚れました。この女優さんはスタッフの期待以上にワイルドかーちゃんをやりとげ、弱気や絶望を感じさせる隙を与えなかったのです。スタッフ一同、だんだん絶望に追い込まれる弱い女性像をイメージしながらも、カトリーナの壮絶演技に駄目出しする勇気もなく「OK」「OK」と言い続けた結果、シナリオとキャラクターが分離してしまったという、そういう悲劇が訪れてしまいました。

と、映画より面白い妄想に浸る映画探偵MovieBooですが、妄想ついでに次はGoogle Mapsいきます。

Google Maps

ハイテクカーに搭載されているナビはGoogle Mapsではありませんが、まあ似たようなもんです。
高速道を走っていて「この先、事故渋滞です」と、迂回コースを提案してきます。うっかりナビの言うことを聞いて迂回する主人公。すべての悲劇はここから始まります。

私も覚えがあるのです。Google Mapsで高速道路の先が真っ赤っか。目的地まで9時間とか表示され、事故渋滞を知ります。Google Mapsが国道に降りて迂回するコースを提案しました。遠回りですが5時間で着くということで、言うことを聞いたんですよ。結果、7時間かかりました。そして後で聞いたところ、高速道路の事故渋滞コースを選んだ知人は4時間以内に抜けて目的地に到着していたんですよ。おのれGoogle Maps。こういうことが度々ありました。

つまり何を言いたいかというと、この映画を思いついたひとはきっとGoogleに同じ目に遭わされた経験があるんですよ!その体験がこの映画を生みました。間違いありません。そうに違いありません。

妄想探偵MovieBooが吠えているついでに、悲劇のもうひとつの直接的原因について考察しないではおれません。近頃統合した「紫煙映画を探せ」から紫煙さんに登場してもらいます。

コラム 紫煙映画しicon 紫煙映画を探せ

映画「ロックダウン」の根底のテーマは「たばこが大事」である

悲劇の直接のきっかけは主人公がたばこを吸うシーンです。たばこを吸っているだけなのに、アホのハイテクカーが「煙を検知しました」と意地悪を仕掛けてくるんです。そのせいであたふたして事故にあいますが、このシーンのあとも主人公は「ちょっと落ち着きたいの」とたばこを吸います。

そうですその通り。パニックになるのを抑えるにはたばこが一番です。落ち着きを取り戻し、人を賢児に戻します。その素晴らしい効果を持つたばこを、ハイテクカーは意味もわからず排除しようとして、それがきっかけとなり悲劇の事故が起こります。

結論はこうです。どんなにハイテクであろうと嫌煙ムードこそがすべてを台無しにするアホの極致である。

車から追い出された主人公のポケットにたばこが残っていました。そのたばこが、彼女に冷静さを取り戻させ、生きる力を与えましたね。

もうひとつの結論はこうです。人が窮地に立たされるとき最も必要なものはたばこである。

この映画を作ろうとした人には、たばこのテーマが根底にあったのです。

妄想の相手をしないようにお願いします。本当のところは監督がインタビューで語っている模様です。

監督インタビュー Interview to the Director and the Screenplayer of Monolith: Ivan Silvestrini and Mauro Uzzeo | The Italian Rêve

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です