タッカーとデイル

Tuker and Dale VS Evil
スプラッタ映画とコメディ映画の華麗なる融合、主人公デコボココンビと大学生たちの死闘、可愛子ちゃんあり血しぶき残虐あり、ほのぼのハートウォーミングあり、誤解と偶然ドキドキサスペンス、娯楽の殿堂、楽しい時間は保証付き。「タッカーとデイル」は2010年カナダからの素敵な贈り物。
タッカーとデイル

どこかで予告編に触れて、あ、面白そう、観たいな。と思っていてもそのまま忘れてしまうことがよくあります。何年経とうが覚えていれば観ますがそんな中コメディ映画ってのは不遇で、旬を過ぎれば観たい熱も冷めやすいのではないでしょうか。何かそんな気がしますがどうでしょう。

てなわけで「タッカーとデイル」もそのような映画でした。でも思い出しましたので観ました。ただのコメディならそのまま忘却の彼方だったかもしれませんがこれはホラーコメディですからきっと楽しいはず。

「タッカーとデイル」は幼なじみの親友タッカーとデイルが森にやってきた若者グループと一悶着を起こすお話です。一悶着起こすと言っても起こすのは主に大学生のほうで、彼らはタッカーとデイルを森の殺人鬼だと思い込むんですね。何をやっても殺人鬼に見えてしまう誤解と偶然が重なり事態は悪い方悪い方へと突き進みます。

タッカーとデイルは真面目に働いてコツコツ貯めたお金で森の別荘を購入し、ボロボロなので休日を利用してリフォーム工事にやってきただけなんです。太っちょデイルは魚も殺せぬ優しい男、タッカーは弱気なデイルに「もっと自信を持て」とけしかけます。そんな伝統的なデコボココンビで観ているこちらも自然に彼らの味方になります。

湖に落ちて頭を打った可愛子ちゃんを助けていると遠目に見ていた大学生たちが「殺人鬼がアリーを拉致した」って思い込みます。

誤解と偶然がスプラッターな事態にまで発展するストーリーが大変面白いです。「タッカーとデイル」は単にスプラッタをパロっただけの安い脚本ではありませんで、細かくよくできています。残虐と笑いを繋げる事にかけても随分慎重だと思いました。

誤解が高じて起こるスプラッタ事象やタッカーとデイルに降りかかる災いを「これでもか」とばかり追い込むと、見ているこちら側はきっとすごく不快になると思うんです。派手にやれば良いというものでもありません。この映画ではその不快感を取り除く要素としてアリソンちゃんというヒロインを用意しました(カトリーナ・ボウデン

最初に湖に落ちて二人に助けられる美女です。ただの美女ではなく優しい女の子です。しかも牧場育ちのワイルドさも持っていてしかも社会心理学を学んでいるというパーフェクト設定、この彼女がタッカーとデイルの側にいることが見ているこちらの安心感に繋がります。

勢いがありすぎる映画だったら、この女の子を直ちに被害に遭わせてタッカーとデイルをもっと追い詰めるかもしれません。「タッカーとデイル」の脚本はそこまで酷いことをやりません。だから派手派手しいスプラッタ描写でも笑える心のゆとりというものを失わないのですね。そう思います。

これはイーライ・クレイグの「ここまでやる」「ここまではやらない」「見る人をこんな気持ちにさせる」「楽しませる」みたいな明確な意図が貫かれているからだと思います。つまらないパロディに終始することもないし、マニアックなネタをこれ見よがしに出してくるようなこともなく、とても好感が持てる映画に仕上がりました。

最初「タッカーとデイル」を作ったとき、なかなか上映することができず監督はとても苦労したそうです。そりゃあまあスプラッタで笑いを取るなんてことは善良な一般庶民にしてみたら悪趣味に見えるかもしれないですけど、基本的に伝統的なデコボココンビによる人情味溢れる良い映画で、見た人はみんな笑顔になれるはずだし、多分この映画はもう伝説的に良作扱いになっていると思います。

親友のコミュニケーション、女の子と気弱な男のコミュニケーション、そして大学生たちとの完全なるコミュニケーション不全をよく練った脚本でぐいぐい見せます。

日本では2011年に公開していました。見た人にはみんな好評でしたね。やっと観れました。思い切り楽しめました。

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