新聞記者

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時事ネタをストーリーに組み込んだことで一部から好意的に迎えられた一見社会派職業人映画ですが悲しくなるほどの出来栄え「新聞記者」映画感想。この映画を気に入っている人は読まないでください。
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SNSでは社会派の人々の間で絶賛が目立った「新聞記者」という映画です。いやな予感がしていたのですが観てみました。いきなり感想いいますけど気分悪くしないでくださいね。見るも無残なひどい出来栄えでした。

目指したであろうところは支持します。それは多分このようなことでしょう。
ジャリタレントの色恋話ではなく職業人の映画を作りたかった。
時事的な社会問題をテーマとして扱いたかった。
満遍なく照明を当てる安いテレビドラマみたいじゃない画面作りを目指したかった。

その志は支持します。ですので嫌いな映画ではありません。残念なだけです。

出来の悪い映画は比較的好きなんです。出来の悪い映画からは映画製作の技術を学べます。なぜどういうところが駄目なのだろうということから出来のいい映画との比較が始まり、細かな脚本やカット尺やカメラ位置や事象の説明表現方法など、その違いが明白になります。しかし出来が悪すぎると学ぶべきポイントもまた低すぎてあまり得ることもありません。

この映画の作りととても似ている映画を最近観たのであげておきますが、それは「シスター」です。

共通点は、観念的な映画だということです。軽く空想できる「こういう映画のこういうシーン」っていう某かの結果のイメージですね、肝心の某かをちゃんと描写せず、結果のシーンだけを繋げて作られています。分かりやすくいうと、長い予告編です。肝心の出来事そのものはさほどありません。

内容についてですが、社会派SNSのみんなが喜んだのは詩織さん事件や安倍晋三獣医学部事件など時事ネタを盛り込んだところのようです。それだけのことで喜ばねばならない日本の惨状を嘆きます。

獣医学部事件みたいなのを取っかかりにしながら、悪の軍事陰謀に繋げるという子供じみたオリジナルストーリーにまずずっこけますが、悪の組織で苦悩する若手マンと仕事をせずTwitterばかり観ている新聞記者が絡むというこのストーリーの原案が望月記者の書籍というのだから大丈夫か望月記者とちょっと心配になりますが多分原案ってもあまりプロットには関わっていないのだろうと好意的に解釈しておきたいと思います。

ということで、出来のよくない映画を観て嬉々として「勉強になったわー」とか言ってる映画自虐Moviebooの戯言などは無視して、ジャーナリズムや事実に基づく社会派映画に興味あるなら「ペンタゴン・ペーパーズ」なり「記者たち」なり「フェアゲーム」なり「リダクテッド」なり「スポットライト」なり桁違いの他の良作をご覧になるのがいいと思います。

酷い貶しっぷりなので最後に日和ってちょっとだけ擁護しておきますが、さっきも書いたようにこのレベルですら「シナリオに時事問題を取り入れたこと自体、勇気ある行動で評価できる」とする見方があるわけで、情けないと同時にそれは事実でもあります。日本からジャーナリズムが失われて数年以上経ちます。ジャーナリズムが失われた状態でジャーナリズムを扱う映画がまともに作れるわけがありません。必死で作ってこのレベルであっても仕方のないことかもしれません。そういう意味で映画は褒められませんが志だけは貶すまいと思うわけでございます。

 

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