トラブル・イン・ハリウッド

What Just Happened
トラブル・イン・ハリウッド

ハリウッドの映画製作者ベン(ロバート・デ・ニーロ)が仕事やプライベートのトラブルに翻弄される姿をコミカルに描く映画業界内幕ドラマ。

トラブル・イン・ハリウッド

「トラブル・イン・ハリウッド」は紛らわしいカタカナ邦題です。タイトルは「What Just Happened」。売れっ子映画プロデューサーが同時発生的身辺トラブルにあたふたする姿を描く映画でして、ほぼ一人で大活躍するロバート・デ・ニーロを鑑賞するための映画です。
「トラブル・イン・ハリウッド」のタイトルでは、ハリウッドの内幕が最重要のテーマであると思いがちですが、実はそうではなく、あくまでもロバート・デニーロのアイドル映画であるということが重要です。

ハリウッドそのものをテーマと捉えた場合、どんなにあがいてももがいてもあまり面白い映画ではありません。内幕モノの名作「ザ・プレイヤー」という映画がありまして、面白さは足元にも及びませんし、なぜ今頃(2008年)このような映画を撮る必要があったのかもさっぱりわかりません。「ハリウッド」という言葉には、今時は力は宿っていません。邦題のセンスはかなり悪いと言っていいでしょう。

で、ハリウッドものの映画としてどういう点が物足りないかというと。

その1。ショーン・ペンが主演の映画のラストシーンについてのお話。

犬を殺す殺さない以前に、この映画内映画がちっとも面白そうではありません。寧ろ馬鹿みたいな映画です。これをひっさげてカンヌへ行こうっていうんだからあまりにも無茶苦茶です。映画内映画を登場させるなら、設定としてきっちりどんな映画か作っておいてほしいところです。
また、若手監督もあまりにもステレオタイプで人としての深みがありません。

その2。ブルース・ウィリスがヒゲを剃らないというトラブル。

ブルース・ウィリスが頑なにヒゲを剃らない野獣のような役者として登場します。しかしそれがどうした、と言いたくなるようなどうでもいい顛末です。ブルースを使ってどういう映画を撮ろうといているのかもさっぱりわかりません。適当な設定と言っていいでしょう。

と、このようにハリウッドのスターを実名出演させている内幕モノっぽいエピソードは底の浅いつまらないお話です。とくに「ザ・プレイヤー」と比較するとそのいい加減さ適当さは呆れるほどです。

それにもかかわらず、この映画、観ている間は結構面白かったりします。それはなぜか。それは、テーマがハリウッドの内幕モノというより、ロバート・デ・ニーロのアイドル映画だからです。
ロバート・デ・ニーロのあたふたする様子だけで2時間を引っ張るんですね。これ、デ・ニーロさんの演技力があればこそですね。

というわけで「ハリウッドのトラブル」と思って見るとつまらないのですが「 What Just Happened」と思って見ると楽しめたりするわけです。
そういう優しいまなざしを前提とするならば、先ほど貶した部分も別の面白さを醸し出すことを発見できます。

まずショーン・ペンの阿呆映画ですが、演技派ショーン・ペンがこんな役をやるわけがないというB級スパイアクション映画でして、港か工事現場みたいな場所でごろごろ転がったりします。犬が舐めたりもします。そういうお馬鹿映画に、芸術性云々という話までついてまわります。つまり実際は超演技派であるショーン・ペンにわざとB級アクションのお馬鹿映画をやらせて、しかもそれを芸術性と言ったりするという二重の捻りがあるハリウッド娯楽作品自虐系パロディなわけですね。実はショーン・ペンさん、この撮影けっこう楽しんでるのではないかと。
そしてこのくだらなそうな映画をカンヌへ出品するという。ハリウッドの成功者にとってもカンヌは憧れであり劣等感の対象というわけですね。これも、B級アクションをカンヌに持っていくという狂った設定がブラックジョークとなっています。
「『アモーレス・ペロス』を見たか!」なんていうセリフも飛び出します。
若い監督は典型的なアーティスト気質の監督で「ザ・プレイヤー」にも似たテイストの若手監督が出てきます。ひとつの典型なのですね。これももちろん、こうした芸術かぶれの典型の若者を皮肉ってます。

ブルース・ウィリスも変です。彼は仕事に打ち込む真面目な役者として有名で、撮影のためにいろんな努力をするタイプです。人も良さそうです。お気に入りのヒゲを剃りたくないと駄々をこねるこの役も、実際のブルースとはまったく逆のまがままな売れっ子俳優という役所で、このブラックジョークの役柄もブルースさんは楽しんでやっているに違いない。
しかも出演の最初、なかなか顔を見せず、観客は「ブルース、ブルースって言ってるけど、これ本物のブルース・ウィリスか?代役では?」と思わせる撮り方をしてるんですねえ。一体何のためにそんな 馬鹿な撮り方をしてるのかわからないですが、多分、撮影現場はとても楽しかったであろう事が伺えます。

というわけで内幕モノというよりはスターの楽屋落ちモノという観点で微笑ましく見るのが少し楽しめる秘訣であるというお話でした。

ハリウッドのプロデューサーをテーマにした映画に興味があるなら、こんなのよりロバート・アルトマンの「ザ・プレイヤー」を観たほうがいいです。
ブルース・ウィリスの役所もこっちのほうが断然いい。ちゃんと実際の活躍を面白くパロってて映画的な落としどころも絶妙なんです。誰かを助けにいく必死なブルース・ウィリスが最高ですよ。

 

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