リトル・ランボーズ

Son of Rambow
リトル・ランボーズ

「銀河ヒッチハイクガイド」のガース・ジェニングスによるちょっとノスタルジックな少年映画制作物語。対照的な2人の少年が出会い、ビデオカメラで「ランボー」もどき映画を撮影開始。

リトル・ランボーズ

「リトル・ランボーズ」は2007年の映画ですが日本で公開されたのが2010年、そして最近DVDになりました。
我が辺境の地元で劇場公開する頃にはすっかりタイミングを逃していて、DVD発売の噂もちらほら。遅すぎる公開日程に嫌気がさしてこうして発売待ちというよくない習慣がすっかり根付いております。

「銀河ヒッチハイクガイド」があまりにも素晴らしかったわけですが、ガース・ジェニングスのその後はこの「リトル・ランボーズ」のみです。2007年とはつゆ知らず「銀河のあと全然作品ないなあ」なんて思ってました。「銀河」から2年後の作品だったんですね。
ガース・ジェニングスは映画を撮らずに面白いミュージックビデオを沢山撮っていてポップカルチャーの人ですが、この人の作品に含まれる文学的センス、カメラセンス、ファンタジーセンス、コメディセンス、垢抜け感、それらが私の大好物のある種の系統に属していると感じていまして、今後ぜひ大物になっていただきたいと思っている次第です。

さて「リトル・ランボーズ」は、ガース・ジェニングスの少年時代の体験がモチーフになっているようでして、時代は1982年、ビデオカメラを手に映画を撮る少年たちのお話です。
主人公は宗教一家で育った世間知らずの、聖書に漫画を落書きしまくりパラパラ漫画を描きまくっている大人しいながら個性的な芸術家タイプの少年です。
もうひとりの少年は金持ちながら子供を顧みない親の元に生まれた悪ガキ。
兄貴のビデオカメラで映画館に海賊版撮影しにいくシーンからの登場です。座席にビデオカメラをセットして「ランボー」を撮影しながら煙草をふかす登場シーンはとても印象的。このとき撮った「ランボー」が2人の少年を結びつけます。

対照的な2人の少年が出会い、大ヒット映画の影響を受けてBBCのコンテスト用映画を撮影します。おとなしい主人公も大張り切りで「ぼくはランボーの息子だ!」
そしていつしか友情が芽生えます。いいですね。

友情が芽生え、亀裂も入りつつ、いろんな要素を絡めつつ、ポップロックも絡めつつ、多分みなさまがご想像通りの、裏切りのないストーリーが進みます。
全体的にはある意味ベタなお話ですがそこがまたいい。
ベタな話だからこそ、細部に凝れるのです。細かい部分での予想を裏切る展開やディティールのハイセンスさこそがこの作品の見どころ。
そして最後にはベタな涙が流れます。いいのです、これで。

子供、田舎町、友情、兄弟、友だち、そして映画。いいじゃないですか。素晴らしいじゃないですか。
これはどなたにもお勧めできるピュアで素敵な、でもどこか垢抜けていて妙な味わいがあって広角カメラも美しい、マニアでも食いつく素晴らしい映画です。
私はこれを「ニュー・シネマ・パラダイス」に匹敵する「少年と映画」ジャンルの傑作だと思いますよ。贔屓目に見て。

二人の少年も大変よい人選です。とくに悪ガキのリー・カーターを演じるウィル・ポールターの味わい深いこと。
フランス人留学生の変なやつも出てきますが、最初なんじゃこりゃと思ったものの、あれはマイケル・ジャクソン風だったんですね。不思議ですね。

80年代のポップカルチャーと不良ってのは70年代と大きく違う点があります。
70年代がワイルドで強い不良のイメージなのに対して、80年代は孤独でオタクで変わり者のいじめられっ子のイメージです。
ロックも映画もアートもみんなそうです。80年代の不良は大抵子供の頃友達が少なくて家でチマチマギターの練習をしたりしていたタイプなわけです。

この映画の子供たちもみんなそうです。悪ガキのリー・カーターもそうです。かれは不良のボスではなく、学校では女子に「臭い」と苛められています。
フランス人の彼もそうです。イギリスではモテモテの親分になりましたが帰りのバスのシーンでの同級生の態度で一気に彼の本国での待遇が明かされます。

それぞれが自分の問題を抱え、社会不適合者に育つ下地を持っています。そんな彼らが映画制作に夢中になる姿は、それだけで涙腺がぼわぼわしてきます。
主人公ウィルの調子に乗る姿も他人とは思えず、数々の若い頃の痛い思い出が蘇ります。
ある種の似た人種にとってこの映画の人物たちは、ただ単なる子供には見えないでしょう。
一見ピュアな子供世界の映画ですが、もちろんそこには大人世界を模した世界が展開されます。
そういった捻くれた見方でも十分満足を与えてくれることでしょう。

ガース・ジェニングスの映画には映像の力も絶大です。キューブリックを教祖に持つ、テリー・ギリアム〜ジャン・ピエール・ジュネに続く「広角カメラでファンタジーでハイセンス:コミカル」路線の正当派後継者であると断言します。

というわけで予想通りのべた褒め映画「リトル・ランボーズ」でした。是非どうぞ。

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