ポルノグラフィア

Pornografia
ポルノグラフィア
公開年:
2003
製作国:
監督:
製作:
脚本:
原作:
撮影:
  • クシシュトフ・プタク
音楽:
  • ジグムント・コニエチニ
主演:
出演:

ドイツ占領下のポーランド。インテリ男が二人、友人に誘われ田舎の大きな家でしばらく暮らすことに。友人の娘とその幼なじみの青年をいっちょくっつけてやろうかと画策。緊張時代の暢気な目論見。

ポルノグラフィア

あまり積極的でもなくこの「ポルノグラフィア」のタイトルが頭に残っていて、それはなぜだろうと不信に思いつつ観てみることにしました。

そして見終わって映画的興奮と感動に打ち震えてのたうち回って転げ回り褒め称えわめき散らしながらビールをたらふく飲んで配給会社に文句を言ったり感謝したりしたりして、だんだん落ち着いてきたので検索して人名を眺めたりしていてそれで気づきました。
リンチの「インランド・エンパイア」に出演しているクシシュトフ・マイシャクが共通点だったんですね。→ アーカイブ クシシュトフ・マイフシャク

人名を何も考えずがんがんタグ登録していまして、アーカイブで関わりを見ることができます。そのほとんどが何の説明もなく関連記事もひとつだけだったりしてまるで役に立たないのですが、ごく一部、思いついたときに説明を入れたりしています。クシシュトフ・マイフシャクは数少ない説明付きの人物説明でした。これを書いたときの記憶がかすかに残っていたようです。

てなわけで「ポルノグラフィア」を観てみたわけですが、いやはや、観て良かった。ほんとに良かった。これはすごい。これは大好物。これは感激。

舞台はドイツ占領下にあるポーランドで状況的にはかなりややこしい頃です。ドイツ軍はいるわソ連侵攻の危機だわ地下ゲリラ組織は暗躍しているわ芸術家は美や思想について語るわ、混沌の怪しい時代の物語です。
田舎の大きな家に招待されて厄介になる二人の男、一人が映画の語り手、もう一人が真の主人公と言えるトリックスター的振る舞いのフレデリクという男です。
二人が招待される家には年頃の娘ヘニアがいて、二人の中年男も彼女が気がかりです。
ヘニアには名家のぼんぼんである婚約者もいるのですが、不釣り合いと感じ、幼なじみのカロルという青年とくっつくことが良いと二人の男は勝手に判断、若い二人の仲を取り持つ作戦を開始します。

で、そうですね、どういう風に観るかというと、二人の芸術家の中年男たちがまず信頼できないと観る者は感じるかもしれません。この男たちはどういうやつらなのか、もしかして女たらし?ロリコンの変態?みたいな感じもちょっとだけあります。ほんのちょっとだけです。
世話になる夫婦もちょいと怪しい感じ、旦那は陽気な振る舞いですが裏がありそうだし、奥様も危うい感じです。
下働きの少女なんかもいい感じの怪しさです。
ヘニアの婚約者はちょっと軟弱者で、この男は怪しさはほとんどありません。
後半には婚約者の母親やドイツ人将校などの人物も絡んできて、ドラマは始終なんとなく不穏な空気に満ちています。田舎の景色はあんなに美しいのに。
そういう不審な人物たちが緊張感漂う戦時の中、牧歌的で暢気な田舎生活を送ります。不信感を基本にスリラー的に観ることは間違いでもないです。

少女ヘニアを婚約者から引っぺがし幼なじみの美少年カロルとくっつけようとする話が大筋にあります。戦時下に人ん家でおっさん二人が何をくだらないことに一所懸命になってるんでしょう。
そういう、コミカルなお話として観ることも間違いではありません。

目立たなく進行するのがまさに戦時の緊張物語です。牧歌的なストーリーの軒下レイヤーにはこの緊張が絶えず横たわっています。
占領下のポーランド情勢レイヤー、物語の舞台である田舎の町のレジスタンスレイヤー、そういった暗い影の上に牧歌的な暮らしや少女のエロス、おっさんの道化た物語が重なっています。
そういった文芸作品ならではの多層な深みを感じ取りながら観る見方ももちろん重要です。

変なおじさんフレデリクの物語でもあります。この人はどういう人なんでしょうか。何かを秘めている。悪巧みなのか狂気なのか現実逃避なのか深い傷なのか。
人を巻き込み翻弄し影響を与えるトリックスター的側面を持っています。彼に引き込まれるのは友人の奥さんや下女だけではありません。我々観るものも謎を謎のまま引きずり、彼の魅力に翻弄されていきます。
この男の物語を堪能する見方も十分ありです。

で、ですね、それぞれいろんなレイヤーで歴史やドラマや道化を繰り広げていくわけですが、それを裏付ける映像の力、これを堪能し鳥肌を立てることが「ポルノグラフィア」の映画的興奮を導く大きな力となっています。

もうね、冒頭の芸術家の集う室内シーンからずっと、半端ではない映像美の曲芸を見続けることになります。映画は映像だけではありませんが、映像の力はあまりにも何もかもを凌駕しております。絵としての構図はもとより、陰影から色使いから角度から、そして動きを伴うダイナミックな力にあふれたシークエンス、写っている人、写っている景色、動き全体、すべてが一級品です。
時には一枚絵のようなびしっと決まった構図、時には「これぞ映画」というような役者の洒落た捕らえ方、時には被写体を追う獣のような広角カメラ、この手の映像が元々好きな人にとっては映画的興奮のるつぼであります。
深みのある物語とオーラ出まくりの役者たちを捕らえる映像美は、映画としての至福の時をもたらします。

シークエンスの優れた切り取り方もまた壮絶に良いです。
冒頭のカフェ代わりの一室でフレデリクと女性の会話シーンなんかのっけから大興奮。インテリな冗談めかした会話、恰好を付けた煙草の火、掛け合い、いきなりのめり込みます。
暗い屋敷の室内でバク転をする少年、バク転しながら玄関を出、走っていって人形劇を観るシーンもそうです。鳥肌ものの名シーン。
川での奥様との戯れ、カバーアートにもなっているジャガイモ少女、婚約者の母親との会話、ラスト近くのフレデリクを追うカメラ、かっこよすぎてずっこけるほどの名シーンの数々は物語性と抜きんでた映像表現のパーフェクトな結婚です(変な翻訳調)
しかしまあ何というべた褒め。

ポーランド映画はほとんど観る機会がありませんが、時々こういった恐るべき作品に出会えて、そのせいで「ポーランド天才っ」とアフリカ象と化して叫びそうになりますがもちろん数多くの作品のうち凄い作品だけをこうして観ているのでありましょうから油断は禁物です。
「ポルノグラフィア」はそういうわけで「ブリキの太鼓」と印象が近いです。個人的見解ですが芸術的構図やインテリジェンスあふれる野蛮感、少女のエロティシズムに戦時の緊張、その中でのある一家の道化た有様、文芸的狂気、不穏で暢気、厭らしくて牧歌的、といろいろ共通しています。

カメリマージュ金のカエル賞受賞
フランドル国際映画祭、ジョルジュ・ドルリュ賞受賞、ゴールデン・スパー賞ノミネート
ベネチア映画祭、金の獅子賞ノミネート
など。らしい。

「ポルノグラフィア」を配給してくれて配給会社さんありがとう。
けど邦題とキャッチコピーはちょっと許しがたい。「ポルノグラフィア 本当に美しい少女」とは一体全体どういう意図の副題なのでしょう。意味分かりません。Movie Booでは時として間抜けな邦題の副題を無視してさしあげていますが今回も無視しますので皆様も無視してあげてはいかがでしょう。
宣伝文句がまたひどい。
「ジャンル:エロティック。ミステリアスな美少女に男たちが翻弄される官能ドラマ」て、嘘ばっかりついてるんじゃないよ。ジャンルはエロじゃないしミステリアスでもないし男たちは翻弄されないし官能ドラマでもありません。よくまあ出鱈目ばかりへらへらと書けるもんだとあきれます。
広報が馬鹿なのかあるいは客を馬鹿にしているのかどちらかですよ。ひどいですね。
でも配給してくれてありがとうございます。これからもよろしく頼みます。

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