スリーピング・タイト 白肌の美女の異常な夜

Mientras duermes
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ジャウマ・バラゲロ監督2011年の「スリーピング・タイト」は夜な夜な女性の部屋に忍び込む屈折した犯罪者を描くサイコスリラーで最大の気持ち悪さと同時に哀れと味わいをも堪能できる変態リトマス試験紙のような乙な作品。

スリーピング・タイト 白肌の美女の異常な夜

ジャウマ・バラゲロ監督作品だったんですね。言われても気づかないくらいにらしくない感じを受けていました。

この映画のストーリーというか冒頭やお話の部分など説明しますと、如何に変態的な映画か分かります。
とてもいい冒頭です(←変態的とちゃうんかい)...こんなのです。

夫婦のように男女が寝ていて時計を見ると朝になっていて、それで女性が起きないようにそっと男が起き上がって歯を磨き「君はゆっくり寝ていればいいよ」みたいな目線を投げかけ、出かけます。
この後、女性がむくりと起き上がり、ひとりで準備して出かけるところまで描きます。

普通に眺めていますと普通の夫婦の冒頭シーンみたいですね。ところがね、これがね、この女性ね、一人暮らしなんです。なんと、男が夜に忍び込んで薬で女性を眠らせ、夫婦のように添い寝して朝こっそり出て行くという、歯を磨いてましたが、歯ブラシも女性のですよ、そういうことをやっている犯罪者の話です。せっかくの素晴らしい冒頭をネタバレしてご免ですがこれくらいは配給の広報レベルみたいなので許してください。

これ普通に女性が見たら嘔吐しかねない気持ち悪い犯罪です。さらにもっとあります。毎日使ってる化粧品に細工したり、虫をその、虫をあれしたり。さらにもっともっとあるんですがこれ以上は酷すぎるのでやめておきます。

この映画の困ったところは、この屈折しまくった犯罪者の男こそが主人公で、始終彼の目線で、恐ろしいことに彼に感情移入して観る羽目になるわけです。彼が危なくなると「危ない!」って思ってしまうんです。しかもですね、それにもかかわらずこの映画は面白いんですよ。これは困った!こんなのおもしろがるおれって救い難い変態?と、自分に自信がなくなってきます。
でもご安心、ほんとにいい映画なんです。安心できませんか。では女性である映画部の奥さまにインタビューしてみましょう。

「この映画どうだった?」
「めっちゃよかった。最っ高!」

ほらね、安心です。

ストーリー的にも映画表現的にもとてもいい出来なんです。まじで。お話の転げ具合も予想を超えたぶっ飛びっぷりだし、登場人物たちの魅力も満開、脇役の掃除のおばちゃんとその息子とか、好きなテイスト入りまくり、被害者女性を演じるマルタ・エトゥラの素敵さ、犯罪者の非道っぷりと哀れとえぐさを表現しまくったルイス・トサルの怪演、アパートのロケーション、撮り方、すべてわりと見事なんですよ。いやほんと。でも話は救い難いほど酷いんです。なんですかこれ。

細かくネタを書いていってもいけませんので気に入ったポイントだけを掻い摘まんで書くと、アパート1階のロケーションです。ここに管理人がいて、住人がエレベーターから降りてきて「おはよう」とか言いながら通り過ぎます。被害者女性もいますし、犬好きの孤独なおばあちゃんもいます。それからちびっ子女の子が登場します。この女の子が強気な子供で、すごくいいです。こうした人々のシーンがとても印象に残っていて、そういうところがお気に入りなところです。印象に残すことで、後半に彼らがどのようなことになっていくか、目の当たりにして最悪で効果絶大です。

2011年の映画です。ついこの間観たばっかりと思っていたらもう数年前になるんですね。ルイス・トサルとマルタ・エトゥラ「プリズン211」に続いての共演という触れ込みで、それでこれほど酷い映画を作ってしまうという、その心意気に敬意を表します。ちょっと考えられないくらい変態的でとんでもなく酷い話で、これをルイス・トサルが演じきり、著名監督が監督し、大きく宣伝売ってしまうという、スペイン映画の懐の広さを垣間見たような気がします。

この映画を普通の人が観たらどう思うでしょう。これを観てルイス・トサルをつい応援したくなったりしたらもう変態確定ですよ。見るに堪えないと途中でやめてしまうのも潔癖症な感じがしますが、普通なら観てる最中もそれからあの酷いラストを見たあとも、耐えがたいほどいやな気持ちになることでしょう。まるで変態リトマス試験紙のような映画ですね。

我々映画部の面々は全員が絶賛しておりますので試験紙の色は真っ赤っかですか。困ったもんですね。

予告編ですが、これも見せすぎです。これから見る人の楽しみを大きく損なう可能性がありますので、未見でこれから観たいって人は再生しないほうがいいと思います。でもいじわるなので貼っておきますね。

こないだ「暴走車 ランナウェイ・カー」観たのでルイス・トサルプチ特集の一環でこれ書いときました。
...次のルイス・トサル「ネスト」につづく

あ。そういえばジャウマ・バラゲロ監督と言えば「REC4」がありましたね。撮影してるときからスペインのテレビ番組とか見てわくわくしていました。あれも忘れてた。何か書いときたいですね。
...というわけで「REC 4」にもつづく

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