神様メール

Le tout nouveau testament
神様メール - thumbnail
公開年:
2015
製作国:
監督:
製作:
製作総指揮:
脚本:
撮影:
音楽:
  • アン・ピエールレ
美術:
  • シルヴィー・オリヴィエ
編集:
  • エルヴェ・ド・ルーズ
主演:
出演:

ジャコ・ヴァン・ドルマルの新作映画「神様メール」は神様の娘が6人の使徒を探し出し新たな新約聖書を作ろうとする物語。ちびっ子ファンタジックコメディで垢抜けたジャコの素敵な一品。

神様メール

最近ちょっと前まで公開していた「神様メール」です。神を扱ったコミカルなファンタジー映画、コミカルじゃなかったら宗教関係者から総攻撃を食らいそうなネタですがとっても面白いです。

神様は妻と娘の三人暮らしで、以前は息子もいましたが磔にされてしまいました。娘はテーブルのコップを念力で動かす程度のちょっとした奇跡を起こせますが父である神様には特殊能力がなく、書斎のパソコンに入力して世界を操ることしかできません。粗野で乱暴でせこい神の行いに辟易しているブラックな娘10歳はある日父親の書斎に忍び込んで全世界の人間に寿命をカウントダウンするメールを送信、そして兄貴の誘導で人間世界に家出します。目的は絶望時代に6人の使徒を集めて新・新約聖書を創り上げることです。兄貴の使徒が12人いましたから、併せて18人になり、母親が好きな野球が出来る数になります。ですのでとりあえず6人を目指そうと、そういうことのようです。

てな話でして、娘エアが人間世界に降り立ち、聖書の筆記係と無作為に選んだ6人の人間に接触してささやかなミラクルを与えて回るという、そんなお話ですね。とてもファンタジックです。基本コメディでハートフルです。

ジャコ・ヴァン・ドルマルは作品数の少ない監督の一人ですが「トト・ザ・ヒーロー」で一世を風靡して、比較的最近の「ミスター・ノーバディ」ではやや難解な作品を世に放ちました。「八日目」というちょいお涙頂戴の散漫な作品もありました。で、それで最新作では何が起きたかスカっと垢抜けたキュートでホットでコミカルなファンタジーを作りました。

キラキラしていてちびっ子は可愛いし父である神様の粗野っぷりは面白いし展開はさくさくでストーリーの運びも楽しく最後まで観たときの気分の良さったら最高で、ベルギーはもちろんヨーロッパ各国で大ヒットしました。そんなポジティブで明るい誰にでも好まれる「神様メール」ですが、でも根っこの部分はこれまでの作品と変わりません。

ノスタルジー

それはすなわちノスタルジーの亡霊です。少ない作品から見えてくるのはこの監督のノスタルジーに取り憑かれた世界感です。子供の世界を体で覚えているピュアな芸術家は、子供世界の匂いや恋や冒険の瞬間、親の目線や世界というものをどう見ていたかを多分昨日のことのように記憶しているに違いありません。エピソードの節々にそれが感じられます。

脳の大事な部分に大きく締める記憶の重荷は、時に芸術家を苦しめますが時に晴れやかですがすがしい気分にもさせます。前作「ミスター・ノーバディ」ではそういう意味でノスタルジーの重荷の映画でもありましたが今作「神様メール」はノスタルジーが素敵なファンタジーとして昇華された映画であると強く感じられます。

そして観客である一般庶民の老若男女の誰しも、子供時代の記憶があり空がどう見えたか少しは覚えています。忘れていた人もいますが「神様メール」を観ると思い出すでしょう。それが感動に繋がり面白かったーってなりヒットします。普遍性があるんですね。それを表現できるということ自体、素晴らしいことと思います。

キャスティングの妙を味わえます

ややブラックなところも持っている少女エアをピリ・グロインという子役がやっています。誰かと思いきや「サンドラの週末」のエステルですって。

粗野で乱暴、どちらかというと悪役である父神様を演じる人が面白くてですね、この人いいよなあって思っていたらこの人は「ありふれた事件」の人殺しベンであるところのブノワ・ボールヴールドでした。「ありふれた事件」を創り上げた若者三人のうち、仕事を続けて著名になった唯一の人です。ブノワ・ボールヴールドはもちろん他に有名映画にも出ています。でも私は「ありふれた事件」しか知らないもので。これには驚いてパンを落としました。パンを落としたときは必ずジャム側が下になりますね。

片腕の女性に惚れる人殺しフランソワをやったひとは味わい系まろやか顔のフランソワ・ダミアン。「ナタリー」で印象深いですが「タンゴ・リブレ」が私はめちゃ良かったです。

片腕の女性はローラ・ファーリンデン、この人はちょっとだけオドレイ・トトゥを彷彿とさせてくれましたが「ロフト.」にシャロンという役名で出演していますね。「ロフト.」の誰でしょう?シャロンて誰でしたっけ。よく覚えていません。

大女優カトリーヌ・ドヌーヴがですね、あろうことかあんな役でご出演。よくやりましたねえ。この方、ちょっと怖そうと私は思ってるんですが、今回の役どころは観ているこちらまでも緊張してしまうようなちょっと妙なキャラクター設定ですよ。カトリーヌ・ドヌーヴもすっかり垢抜けてこんな役でも楽しそうにやるお人になったのでしょうか。元々そうなのでしょうか。

そして忘れてならないヨランド・モローです。こういう役の時には必ずこの方がやりますね。独特の風貌で一度見たら忘れない女優さんです。売れっ子ですねえ。必ず呼ばれますねえ。

ちょっと思い出す監督たちがいます

いたずら少女がミラクルを起こしていく展開にふとジャン=ピエール・ジュネを思い出します。そうなんですよ。「神様メール」の作風、何となく「アメリ」や「ミックマック」なんかを思い出すところもあります。ヨランド・モローも出演してるし、ジュネのことは多くの人が思い出したんじゃないでしょうか。

実を言うと、他にも実はテリー・ギリアムを思い出したりもします。神様の書斎とか、時々現れる力強いカメラアングルなんかにですね、ちょっと感じます。が、それは思いすぎかもしれません。

お話もブラックさとキュートさの両立が見受けられますね。こんな可愛らしい映画なのにかなりおとな向けのネタも混ぜていて、毒も大いに含んでいます。決して子供だましのゆるゆるふわふわファンタジーではないってところも上記監督たちとの共通点と思いました。

褒めてるつもりでも他人に似てると言われたらいい気がしないに決まってるので大概にしておきますが、つまり何を言いたいかというと、「神様メール」ですごく垢抜けて突き抜けた感じがして、そこんところに大御所の力強さすら感じるということが言いたいのでした。

細かい会話やギャグがたいへんよろしいです

時にありきたりなネタを含ませつつ、際どい宗教ネタをベースに毒気たっぷりのブラックさを交えつつ、時に大人向けのお話を含ませつつ、時に夢心地のファンタジーを交えつつ、細部に命を吹き込みました。軽妙さを維持しつつ細かいギャグを詰め込み、ノスタルジーも詰め込み、いろんなバランスが絶妙な本作です。

はじめて「トト・ザ・ヒーロー」を観たときはどんな大御所の監督が撮った映画だろうと思いましたがあのときまだまだ若く、そんでもって年を取るごとに作風が若々しくなっていく数奇な運命みたいな印象さえ受けるジャコ・ヴァン・ドルマル監督です。

「神様メール」の原題は「新・新約聖書」ですか。これはたいそう面白かったです。ついこないだまで公開してたのにもうDVDや配信で気軽に観れます。というかついこないだまでやってたのは田舎で公開が遅かったからですか。そうですか。

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