ピアノチューナー・オブ・アースクエイク

The Piano Tuner of Earthquakes
ピアノチューナー・オブ・アースクエイク
公開年:
2005
製作国:
監督:
製作:
製作総指揮:
脚本:
撮影:
主演:
出演:
  • ゴットフリード・ジョン
  • アサンプタ・セルナ
  • セザール・サラシュ
  • リュビシャ・ルポ=グルジュチック
  • マルク・ビシュショフ
  • ヘニング・ペカー
  • ジル・ガボア
  • フォルカー・ザック
  • トーマス・シュミーダー

クエイ兄弟による幻想的なアート映画。独自の世界観と映像美が冴え渡る。魂を失った歌姫、歌声に魅せられたマッド・サイエンティスト、招かれた調律師が織りなす美の饗宴。

ピアノチューナー・オブ・アースクエイク

「ストリート・オブ・クロコダイル」が近隣に降臨したのは、大阪の扇町ミュージアムスクエアという小さなホールというかスタジオというか会議室みたいな場所で、折りたたみ椅子が並べられた小さなスクリーンでの上映会でした。こんなわけの分からん映画を何故にこれほどの人が見に来るのかと疑問にお口あんぐりの満杯の客、人の頭でスクリーンが何も見えないという最悪の状態での鑑賞でしたが、このときの感動は忘れがたい体験です。「今の時代にこんな映画を撮る人がいたのか」と、アート映画の虜だった若い頃を(このときも十分若いが)懐かしむやら美的興奮に沈み込むやら「やられた」感に落ち込むやら大変でした。
後の時代になって「ストリート・オブ・クロコダイル」の日本での上映が国内アニメーション史にとって大きな転換期になったという話を見聞きしましたが、まんざら大袈裟な話ではないのかもなあと実感します。
というのも、個人的な話ですが「ストリート・オブ・クロコダイル」公開前後に、ブルーノ・シュルツやヤン・シュヴァンクマイエルを始めて知ったのであり、即ち魂の一部をまだ世界から取得し切れていないのだと実感したのであり、アート映画が過去のものではないと教えられたのであり、映像の力の再発見にも繋がり映画の裾野の広さを見せつけられたと、そう言っても過言。(若干大袈裟に書きました)いやその、つまりそういった個人的体験はもちろん個人だけの体験ではなく、このときのクエイ兄弟のブームが周辺知識の輸入や国内販売のきっかけになったのであり、つまり多くの人に同じような体験がもたらされたという、そういうありがたいブームだったのでありまして、その後のアニメーション作家やなんかも、この洗礼を受けた人が沢山いたのではないかと容易に想像できるわけなのであります。

そういえば(と、さらに完璧に個人的な話ですが)ちょっと後に無理して買った「ストリート・オブ・クロコダイル」のVHSのケースだけが手元にあるんですが、多分何かの拍子に誰かに無理矢理貸し付けて借りパチをさせてしまったのだろうと思います。当時は酔っ払ってはその気もないやつに「これを観ろ」「これを聴け」「これを読め」と名作の数々を押しつけるタチの悪い人間だったのでありまして、無理矢理押しつけられた人もさぞ迷惑だったことだろうと思います。結果、読みもせず観もせず聴きもせず、バツが悪くて返そうにも返せない辛い気持ちにさせてしまって結果的に借りパチを誘発したのであり、全部悪いのは私なのであります。
ついでなのでこの場で書きますが、私から押しつけられたそっち系の以下のものをまだお持ちの方は是非返してくださいお願いします。
エルンスト「百頭女」「カルメン修道会に入ろうとした少女の夢」、ベルメール「イマージュの解剖学」 クエイ兄弟「ストリート・オブ・クロコダイル」シュヴァンクマイエル各種ビデオその他。

さて下らないこと書いてないでクエイ兄弟ですが、アメリカはペンシルベニア生まれのスティーブンとティモシーの双子の兄弟です。ヤン・シュヴァンクマイエルを敬愛し影響を受け、独特な映像美の主にアニメーション作品を作っています。
1986年、ポーランドの作家B・シュルツの「大鰐通り」をアレンジした「ストリート・オブ・クロコダイル」で世界中に衝撃を与え注目されました。
1995年には初の長編・実写作品「ベンヤメンタ学院」を発表、長編2作目にあたるのが本作「ピアノチューナー・オブ・アースクエイク」です。

テリー・ギリアムもクエイ兄弟の大ファンを公言しており、本作では製作総指揮に名を連ねました。
作品の原案はビオイ=カサーレスの「モレルの発明」とレーモン・ルーセルの「ロクス・ソルス」らしいです。

歌姫の声に魅せられた科学者が彼女の魂を抜き取って連れ去り演奏機械のコレクションに加え破壊的オペラ演奏を企てます。何も知らずに招かれたピアノ調律師は演奏機械の調整を命じられますがなぞの女性に惹かれたことから救出を目論みます。
「なんだそりゃ」と思うなかれ。夢の世界だけで成り立つような妙ちくりんな設定を大胆映像美で描ききります。
気をつけねばならないことは、この作品、かなりアート寄りの映画なので若干観る人を選びます。それと、演奏機械の壮絶シーンや木こりが出てくるアニメシーンは必見ですが全体にアニメーションの比率は少なめです。クエイ兄弟のアニメーションだけを目当てにすると、そのシーンの少なさにちょっとガッカリするかもしれませんので、あまり「アニメと実写の融合」みたいな宣伝に惑わされないほうがいいと思います。

2009.06.30

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