最終爆笑計画

Spanish Movie
最終爆笑計画

スペイン映画のためのスペイン映画パロディ映画、大ヒットしたいくつかの作品をベースに、スペイン映画ファンなら思わずにんまりの、力が抜けてお馬鹿で雑な(褒めことばです)その名も最終爆笑計画こと「スパニッシュムービー」

最終爆笑計画

映画のパロディ映画なら何でもかんでも「最終何とか」って邦題をつけるっていう情けないセンスについては横に置いといて、「最終爆笑計画」こと「スパニッシュムービー」は、まさにタイトル通りの大ヒットスパニッシュムービーのパロディ集大成。

2009年の作品ですが、大抵の映画は数年遅れて日本にやってくるのでまだまだ記憶に新しい映画もパロディのベースになっています。
マニアがにんまりするような気づくか気づかないか微妙なパロディにはあまり偏らず、思いっきりわかりやすく、はっきりくっきりパロってくれます。

スペイン映画という大雑把な括りで失礼ながら、スペイン映画大好きなんですよ私。どのくらい好きかというと、優れた作品もヒットした作品も、優れてない作品もぜんぜんヒットしてない作品も好きなわけです。もし多分一番つまらないスペイン映画があったとして、それ見ても多分そこそこ面白がれます。
それからスペイン美術に物心つかない頃から惹かれてましたし、魂に影響受けてます。そんな話はともかく。

パロディ映画の場合、元ネタを知ってるか知らないかで印象は変わると思うんですが、まあまあ力の抜けた気軽な作品なので、元ネタを知らずともそこそこドリフ的に楽しめるのではないでしょうか。
とは言っても元ネタを観ていたほうがやっぱり面白いのは確実でして、スペイン映画好きのあなたや私なら必ず観ているはずの何作か、パロディのベースになっている作品の紹介なんぞも兼ねて見てみましょう。

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元ネタの映画たち

まず話の骨子は、屋敷に働きに来るメイドです。この屋敷ってのがゴシックホラーなお屋敷で、昼なお暗いのは息子が光過敏症だからです。
はい「アザーズ」来ました。

もうひとつ、消えた息子を探すに当たり、地下室や袋を被った少年や怪しいソーシャルワーカーのおばちゃんなんかが登場します。
はい「永遠のこどもたち」来ました。
ソーシャルワーカーの変なおばはんは「アザーズ」ネタも交えて「永遠のこどもたち」のパロディを凝縮させてますね。シュールです。

さらにお屋敷では奥様の弟がおります。四肢が動かず寝たきりです。自殺願望を持っていて、そして饒舌です。この自殺願望の男に、主人公のお手伝いさんは親切にいろいろ手助けします。
はい「海を飛ぶ夢」来ました。

「海を飛ぶ夢」であるからして、この「気狂いピエロの決闘」や「エンド・オブ・ザ・ワールド」などに出演のコミカルで男前で小太りカルロス・アレセスはハビエル・バルデムの物真似をやっております。体が不自由になる前を回想シーンで振り返るわけですが、なぜかそこでは変な髪型で牛を仕留める道具を持っております。
はい「ノーカントリー」来ました。ハビエル・バルデム繋がりのパロディシーンです。パロディの混合と置換が行われた高度な技ですね。

屋敷には消えた息子のお姉ちゃんもおります。とても可愛い女の子です。小さな妖精さんが頼み事をしにやってきたり、地底王国からやってきた角の生えた妖精が試練を与えようと登場します。
はい「パンズ・ラビリンス」来ました。女の子は地底王国の姫君・・・ではなくて壮絶捻くれ娘で笑えます。性根の腐ったこの娘、でもとっても可愛い子だから何でも許せます。

物語の序盤で、目覚まし時計が「目を開けて」とささやきます。
わはは「オープン・ユア・アイズ」来ました。
じつはこの「オープン・ユア・アイズ」、小ネタかと思ったら後半にさらなるパロディシーンとして登場します。乞うご期待。

まだあります。

物語の途中、唐突にテレビクルーがやってきて実況中継などいたします。マイク片手に鼻水垂らした美女が「全部撮って」などと言っています。
はい「REC」来ました。なんとそのままずばりアンヘラちゃんという名前まで登場します。
やっぱり世界中の人がアンヘラちゃんに夢中だったのですね。アンヘラちゃん最高。

まだまだあります。
この屋敷がある街を車が通りかかるとき「アルモドバル的な村」という名前がついている看板を見かけます。
はい「ボルベール〈帰郷〉」来ました。そういえば主人公のメイク、あれは最初からまったくもってペネロペ・クルスの物真似です。テーブルを囲んでのシーンなど細かくパロってまして、そしてなんと例のお歌を披露するシーン、あれをまるごとたっぷりやります。歌も同じで声まで似ています。ぼるべ〜る。

まだまだまだあります。「戦争帰りだぞ」「あなた痩せたわね」のヴィゴ・モーテンセン主演、17世紀の剣士アラトリステの半生を描いた大作「アラトリステ」のパロディです。

ひとつだけ日本人の我々に馴染みの薄い作品のパロディが含まれます。酒場のシーンですね。映画の予告編の体で「Los Lunes Alcohol」とタイトルまで出ます。邦題の訳は「月曜日は酒浸り」になってますね。これなんだろうと思いましたら、これは「月曜日にひなたぼっこ」という映画のパロディです。原題は「Los lunes al sol」(2002)です。IMDb: Los Lunes al sol
ハビエル・バルデム、ルイス・トサルなどの出演で評価の高い作品です。残念ながら日本語字幕つきで観ることはできません。すっごくよさそうな映画です。だれか配給してー。それか字幕つけてー。

[追記]
これについて追記しときますね。「Los lunes al sol」の監督はフェルナンド・レオン・デ・アラノアという方なんですが、この監督、一本だけ日本に紹介されています。それは「カット!(Familia 1996)」です。それ観ました。それがね、めちゃんこ面白い映画でした。面白いだけでなく何かすごいんです。そんなわけで「Los Lunes al sol」が日本で配給されていないのがほんとに残念で。観たくて観たくて。まじどこか配給してくれませんかねー。フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督作品、本国ではたくさんあるんですが「カット!」以外は日本語字幕でひとつも見ることが出来ません。残念すぎる。観たすぎ。お願いします。
[追記終わり]

というわけで、他にも細かいものを挙げ出すとキリがなさそうですが主なところはこんな感じです。

どうですか、パロディネタはすべて世界でヒットした素晴らしい映画ばかりです。堂々たるものです。パロディを見て笑いますが、元ネタの映画を再見したくもなります。

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特別出演、友情出演

パロディ映画は一種のお祭りです。カメオ的な出演者の面々にも度肝を抜かれます。
エンディングを迎えたあとのクレジットでは、特別出演や友情出演の人達がたっぷり紹介されます。知らない人も多いけど、あっと思うあの人この人、いろいろ出てます。

例えば監督です。
アレハンドロ・アメナーバル(アザーズ)、ジャウマ・バラゲロ(REC)、パコ・プラサ(REC)、J・A・バヨナ(永遠のこどもたち)、なぜかアレックス・デ・ラ・イグレシア(気狂いピエロの決闘)まで、名監督たちやセルヒオ・G・サンチェス(永遠のこどもたち脚本)が嬉々として出演している姿は怪奇でもあります。ていうか、普通監督の姿形なんか知りませんから、エンドクレジットで丁寧に紹介されてて「あーっこの人そうだったのかー」と大喜びです。

役者さんのゲストも盛り沢山。
「永遠のこどもたち」の本物ベレン・ルエダ、「海へ飛ぶ夢」のクララ・セグラ、「REC3」のレティシア・ドレラ、「エンド・オブ・ザ・ワールド」の超可愛子ちゃんミシェル・ジェネール、そして変わったところでは「裸の銃を持つ男」のベテラン、レスリー・ニールセンが出演しています。エンドクレジットではスペインの社会現象的コメディアン、チキート・デ・ラ・カルサーダとの絡みも楽しめます。残念ながら、2010にレスリー・ニールセンは亡くなってしまいました。もしかして「スパニッシュムービー」が映画の遺作に。

エンドクレジットのお楽しみと言えば、本編では僅かしかなかった「REC」ネタが延々披露されるのもお楽しみ。

さて映画名や人名であふれかえって肝心の中身をご紹介できていないのですが、中身もけっこういいです。ほどよく力が抜けていますし、下ネタやくだらないお笑いネタなど盛り沢山で、間違っても洗練された名作映画ではありません。でもそこがいいっ。おかしな動きで笑わせたりBGMをほんとに演奏していたみたいな定番ギャグ、いいですね。安心印です。この映画は「スペイン映画」と堂々と名付けたお祭り映画ですから、もうね、何でもいいんですこの際。

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