ラストキング・オブ・スコットランド

The Last King of Scotland
1971年にクーデターにより政権を獲得したウガンダのイディ・アミンに気に入られた若きスコットランド人医師ニコラス。
ラストキング・オブ・スコットランド

アミン大統領と言えば私ら世代は「食人大統領アミン」(1981) のイメージしかなかったりして失礼極まりないので、ひとつおさらいをしておいたり。

イディ・アミンはイギリス植民地時代のウガンダで生まれ、植民地軍の炊事係と雇われその後ボクシングのチャンピオンになったりしました。

西洋諸国にぐちゃぐちゃにされたアフリカの歴史を省略してウガンダは第二次大戦後1962年に英連邦王国の一員として独立し翌年共和制に移行。66年にミルトン・オボテが大統領ムテサ2世を排除して大統領に就任、社会主義路線を掲げました。

このときアミンはオボテに協力していたのですが、1971年、オボテが外遊中にクーデターを起こし大統領に就任、独裁政治を敷きました。

例によって西側の後ろ盾で社会主義の排除に成功し当初は期待されていましたが、アジア人追放、オボテ支持派の弾圧、虐殺と独裁者の負の側面をさらけ出し「黒いヒトラー」「血にまみれた独裁者」「人食い大統領」などと称されるようになります。1978年、隣国タンザニアへ侵攻するも失敗、翌年反体制派に攻撃されて失脚、サウジアラビアへ亡命します。2003年、合併症によりサウジアラビアの病院で死去。

と、まあそんなアミン大統領を、側近になる若い医師の目線で描きます。
若い医師ニコラスは架空の人物であり、史実とフィクションを混ぜながらアミン大統領の側面を描き出す映画であり、フォレスト・ウィテカーの驚くべき演技力を堪能する映画です。

ニコラス(ジェームズ・マカヴォイ)は、ちゃらちゃらした金持ちのボンボンで、ウガンダ入りも「たまたま」であり、目的は「ちょっとした冒険と自分探し」と宣う軽薄な馬鹿者です。 若さ故性欲に支配され言動は無責任で想像力に乏しく、のぼせ上がり調子に乗るその行動に、常に厭な気分を感じ続けます。
恐ろしいアミンと馬鹿な若者とのやりとり。見ているこちらだけが恐怖に震えます。ここまで厭な気分にされられる映画は希です。
見終わっても恐怖心と厭な気分が抜けきれません。あぁ、この馬鹿青年が架空の人物であって本当に良かった。

この作品は1970年代を舞台としており、デザインや映像処理や人物など全てに70年代造形が施されています。今時のフェイク技術はよくできているので、うっかり見ていると本当に70年代の映画に見えます。ラスト近くの現代的残虐描写ではじめて「あ、最近の映画だった」と思い出した次第です。

監督のケヴィン・マクドナルドは「運命を分けたザイル」(2003)の人でした。あぁ、あの映画もちょっと変わった構成の映画で、やっぱり恐怖心を煽る演出でしたね。次は「消されたヘッドライン」も観てみよう。

フォレスト・ウィテカーは優しい笑顔の印象が強い役者さんですが本作は複雑なアミンを多方面から演じきり各賞の主演男優賞を総ナメ、呻るほどの実力派ですね。

尊敬できる医師の妻サラを演じるのがジリアン・アンダーソンだとは全く気付きませんでした。X-ファイルのスカリーですよ。これはびっくり。

アメリカ人の馬鹿とはタイプがちょっと違うイギリス人らしい(スコットランド人でしたね、失礼)馬鹿を演じるジェームズ・マカヴォイは今風のか弱そうな顔立ちの俳優、70年代イギリス風の髪型が大変良くお似合いでした。

この映画の中で数少ない観客が感情移入できるまともな人、男前の元主治医ジュンジュを演じるのはデヴィッド・オイェロウォという人です。
そして印象深いちょび髭の哀れな大臣ジョナ・ワスワはスティーヴン・ルワンギエジ(Stephen rwangyezi)さん。あまり情報がない役者さんたちです。一応メモっておきます。

第64回ゴールデングローブ賞主演男優賞
第79回アカデミー賞主演男優賞

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