ゴースト・ドッグ

Ghost Dog: The Way of the Samurai
侍への道。「葉隠(はがくれ)」を愛読し侍道に傾倒する殺し屋ゴースト・ドッグ(フォレスト・ウィテカー)とマフィアとの対決。
ゴースト・ドッグ

武士の心得を説いた「葉隠」を読み、伝書鳩を通信手段として使う凄腕の殺し屋ゴースト・ドッグ。本を読み、優しく知性的な殺し屋です。車を盗み、音楽を聴き、拳銃を日本刀のように扱う華麗な動き、舞のような殺陣、表情。フォレスト・ウィテカーの魅力が詰まってます。

フォレスト・ウィテカーと言えば黒人の鶴瓶。いやいや、いつまでも鶴瓶鶴瓶言うててはいけません。1982年に映画デビューし印象的な演技で着実に評価を高めながら、監督や脚本や製作なども行っている今や大物です。「バード」でカンヌ男優賞、アミン大統領を完璧に演じ尽くした「ラスト・キング・オブ・スコットランド」ではアカデミー、ゴールデングローブなど各映画賞の男優賞を独占しました。あまりにも個性的、あまりにも演技力が高いため、下手にこの人を使うと映画のすべてを乗っとってしまうほどのパワーを持っています。
「ゴースト・ドッグ」は「スモーク」で片腕の父親役を演じた4年後の映画で、この時期の最高のフォレスト・ウィテカーを堪能することができます。
動きの一つ一つ、表情のひとつひとつがほんとに凄いです。
もうね、必見ですね(←今まで観てなかった癖に今頃なにをいう)

孤独な殺し屋ですが親友がいます。フランス語しか話せないアイスクリーム売りのレイモンで、イザック・ド・バンコレが好演。
前回エントリーで最近作「リミッツ・オブ・コントロール」を紹介したところですが、こっちのキャラクターは親しみがあって面白くてとっても良い感じです。
言葉の通じないこの二人の掛け合いが絶妙、まさに親友です。心が通じています。

コミュニケーション不全を裏返した多国語の会話は痛快のひとこと。途中、ビルの屋上で船を造る変な人を眺めるシーンがありまして、この船を造る人が叫ぶひとことが爆笑ものです。
物語の終演近くでは、もうひとりの親友、女の子パーリーンとも心の交流を果たします。泣けます。

女の子を演じるのは8歳のカミール・ウィンブッシュ。この子がまあ可愛いったらないの。ピンクのランチボックスには本が沢山入っています。ゴースト・ドッグと仲良しになり、本の話をします。

そう。本が重要な役割で登場します。これこそこの物語のキモ。インテリジェンスに溢れており、本の力を最大限に生かした素晴らしい脚本です。

物語は、ゴースト・ドッグとイタリア系マフィアの対決ですが、このイタリア系マフィアの面々がまたいい味です。どうしてこのような面白い味わい深い連中を描けるのでしょう。

マフィアのボス、ヴァーゴ役は名優ヘンリー・シルヴァが70歳にして70本目の出演作とのこと。ボスの左右を固めるのはラップミュージックが大好きなソニー演じるクリフ・ゴーマンと突然大声を上げる傑作長老を演じるジーン・ルフィーニ。

過去、ゴースト・ドッグの命を救い主(あるじ)となる主要人物ルーイを演じるのは舞台俳優として長年のキャリアを持つジョン・トーメイという人です。映画出演は少なくイメージが固定されていない分、複雑な面を持つキャラクターとして最適な人選となりました。

ゴースト・ドッグ

可笑しさと格好良さが同化し、知性と優しさをベースにしたクールかつシニカルな脚本、ちょっと出の脇役にも深い味わいを持たせた愛に満ちた演出、これほどの素晴らしい作品はそうそうありません。

ジム・ジャームッシュ作品ですが、コーエン兄弟やタランティーノ作品を彷彿とさせるかもしれません。ストーリーの運びや演出に、古典ギャング映画への傾倒・オマージュ的なところも散見できるからそう見えるんですね。
それに加えてジャームッシュならではのレベルの高い文学性とハイセンスな言葉の応酬、役者の持ち味が合わさってまさに奇蹟の大傑作となってしまいました。

この作品はジム・ジャームッシュのファンでなくても多くの人がきっと気に入る映画でしょう。フォレスト・ウィテカーやイザック・ド・バンコレの妙技、あるいは可愛い女の子たち、あるいはとぼけたマフィアたち、あるいはRZAの音楽など幅広く見どころだらけです。

知性やシニカルさが嫌いな人を除いたすべての人にお勧めできます。
今までこれを観ていなかった自分を暗殺したいくらい。

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