世界で一番醜い女

La mujer más fea del mundo
舞台は近未来2011年のスペイン共和国。老婆が殺害される事件で浮かび上がる美女の容疑者。しかしその実体は異端博士の新技術で整形された世界一醜い女だということが自然と解明されていきます。という話ですが、別の意味で実に興味深い一本でもあります。
世界で一番醜い女

スペイン映画に外れがあるんだろうかというチャレンジで選んでみた「世界で一番醜い女」は世界で一番醜い女の犯罪とそれを追う刑事の近未来SFで力の抜けた一本。

冒頭は赤ちゃんの余りの醜さに驚く尼さん看護師の絶叫から。
舞台は近未来都市スペイン共和国の大晦日でして、ここで老婆が殺されます。さっそく捜査開始、防犯カメラに犯人の美女が映っておりまして、刑事はその女を追います。

ストーリーを紹介しててもあほらしくなるようなアホらしい映画でありまして、真面目なミステリーなんかじゃありません。
適当に捜査してるうちに都合よく「かつて有名だった美女」とか「同じ名前の醜い女」とか「科学的整形手術を施した異端の科学者」とかが登場して勝手に話が進みます。

この映画1999年の作品でして、2011年ごろの近未来スペインを舞台にしています。しかしそのSF考証は脱力にみなぎっており、どう見ても80年代のダサさあふれる世界感。捜査は適当だし、何かとお安い演出だったり、この映画を包む全体こそがタチの悪い冗談みたいな作りです。最後のほうなんかもうね、かなり適当ですよ。
そもそもブスネタというだけで大概です。真面目な人が見たら怒り出すと思います。
でもいいんです。
そういう映画なんです。
そしてクライマックス。「おいおいまさかこの刑事最後にアレして近づくんちゃうやろな」と思ったら期待を裏切らずそのままアレして近づきますし。
ラストはどういうわけか辞職する刑事。近未来のスペインではハゲはクビになるんでしょうか。
ともかく、ほのぼのとしたある意味ハッピーエンディングを迎え、映画は終わります。

いやぁ、ええ話や。

そしてどんな映画にもいいところの一つや二つがあるのでして、だいたいいいところが二つもあれば「良い映画だった」と、こうなります。
お気に入りのシーンのひとつは病院で刑事が赤ん坊を抱っこするところです。看護婦さんに返すときに「この子が16歳になったら渡して」と携帯番号のメモを渡す刑事。「そして君は今夜ここに電話を」洒落た会話のつもりです!
で、そこではなく、この時の看護婦さんがスペインっぽいアイドル風味の可愛子ちゃんで、この女優さんとてもいいんですけどいったいだれですか?
あとあれですね、ミスコン会場に突然出てくる楽団とかですね、あれも間抜けでいいですね。近未来すごいな。
あとあれですね、やっぱりゲロシーンですか。あのゲロもいい案配でした。

ということで、気の抜けた一本だったわけですが、世の中どんなご縁があるかわかりません。クレジットを調べていましたら、次々に明るみに出る映画人脈の不可思議に遭遇します。

脚本のナチョ・ファエルナは「オープン・ウォーター 第3の恐怖」の脚本の人でした。
監督ミゲル・バルデムはのちに「NAKED マン・ハンティング」のプロデュースをするんですが、この「NAKED マン・ハンティング」ってのが曲者で、監督のゴンサーロ・ロペス=ガイェゴが「オープン・ウォーター 第3の恐怖」の監督です。「へぇ」って思って、脚本誰だろうと思ったらハビエル・グヨンでした。なんと「複製された男」や「シャッターラビリンス」の脚本書いた人ではありませんか。あらまあ。というか「複製された男」と「シャッターラビリンス」が同じ脚本家とは。

つまり「オープン・ウォーター3」だの「世界一醜い女」だのが一方にあり、片や「複製された男」や「シャッターラビリンス」があり、その隔たりを埋める位置に「マン・ハンティング」があるというわけで、厭が応にも「NAKED マン・ハンティング」という映画がどんななのか興味が膨れあがります。さっそく手配します。

もうひとつ驚きの事実はですね、このアホみたいな映画を作るミゲル・バルデム監督なんですけど、ハビエル・バルデムの従兄弟なんですって。じゃああれですか、ハビエルと結婚したペネロペ・クルスとも今は親戚ってわけですね。うわーん(泣くな)

出演者で注目はエクトル・アルテリオで「カラスの飼育」に出演しているひとです。最近では「イントルーダーズ」に。へえ。で、観たくてなかなか叶わぬ「オフィシャル・ストーリー」にも出演してる模様。
もう一人、アルベルト・サン・フアンは「スリーピング・タイト」や「優しく殺して」にもご出演。どちらも面白いんです。いいのに出てます。

だからどうだというわけでもありませんけど。そりゃ仕事なんだからいろんな人がいろんな映画に出てるのは当たり前なんですが。
それよりMovieBoo更新さぼってたせいでまだ感想書いていないタイトルがこのように幾つも出てきまして、意図を十分にお伝えできないことにいらだつ私です。

そんなわけで「世界で一番醜い女」ですが、まあ、その、あれなんですけど、私はこの映画を貶したりしたくはないわけです。それどころか、わりと好きなんですね。ほんとです。人様には特にお勧めもしませんけど。

このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です