ビガイルド 欲望のめざめ

The Beguiled
ソフィア・コッポラ監督が大スター共演にて女の園にやってきた兵士を巡る怪しく艶めしい映画を作りました。2017年カンヌ国際映画祭監督賞受賞作品。
ビガイルド 欲望のめざめ

南北戦争の時代。森で倒れている深手の敵軍兵士を少女が発見し女学院で看病します。女たちだけが暮らす女学院にやってきた男前兵士にみんなメロメロ、静かに不穏が支配していきますね。

私はぜんぜん知りませんでしたが、この映画はトーマス・カリナン1966年の同名小説を原作とする映画でした。同じ原作から、1971年にドン・シーゲル監督クリント・イーストウッド主演「白い肌の異常な夜」として一度映画化されています。でもその映画のリメイクというわけではなく、同じ原作からの別の映画化ということですね。

これを知っているのと知らないのとでは、若干映画の感想に差があったかもしれません。というのも、何も知らない無知無知人間の私は「ビガイルド」をオリジナル脚本の映画と思い込んでいて、そのため全体を見終わったときプロットに物足りなさを少し感じました。今時の感覚だけで観てしまうと「もうちょっと一捻りあったらすごかったのに」という、近年の過激なストーリーに毒され慣れてしまっているからこその誤った感覚を持ってしまうということです。1966年に書かれたものと了解すると、十分すごい、とこうなります。実際、後半に差し掛かるあの大事件のときは今時の目線で見ても十分衝撃でしたし。

ということですけど、でもプロットがどうのこうのストーリーやオチがどうのこうのという映画ではありませんのでお門違いなことを言っててもはじまりません。

この映画の魅力は後半やエンディングを除く部分にあります。「そこ」に至る過程の女たちの振る舞い、兵士の態度、閉鎖的な女学院に蠢く不穏、そういう部分ですね、ソフィア・コッポラ監督もそのあたりを重視した演出をされていします。

女学院の女たちというのがですね、その成分がどうなっているかというとまずニコール・キッドマンです。そんでもってキルステン・ダンストです。さらにエル・ファニングです。うひゃー。濃すぎて倒れるー、とこうなります。この女性たちが男前の敵軍兵士を強く意識していく様はもうほとんどお化け屋敷。私がプロデューサーならここでシャーリーズ・セロンもぜひ加えたいところですがそんなことしたら濃すぎて観客倒れます。

深手の兵士をタレ眉毛でお馴染みコリン・ファレルが演じまして、これがまあキャスティング絶妙。タレ眉毛はいい人光線を出しまくります。言葉使いも丁寧で戦争なんかほんとは嫌いだ自然が大好きだ音楽素晴らしいですねとかいいつつその中身は女たらしのスケベ人間。コリン・ファレルぴったしでした。

しかしコリン・ファレルと言えば「ロブスター」や「聖なる鹿殺し」からめちゃ若返っててびっくりします。この俳優も体重や老け具合を自在にコントロールできる才人ですね。2017年の映画なのに「オンディーヌ」のころとイメージ変わらない感じで驚きです。

さて映像美です。ソフィア・コッポラ監督は「ビガイルド」で映像にとことんこだわりました。オープニングの森のシーンから映像に釘付けですよ。ロケーションや衣装も含めて、レンズの選択や人物と背景の捉え方も含めて、映像美をとことん追求しています。これ、聞くところによるとフィルム撮影に拘ったんですか?かなり美しい映画です。森とかほんといい感じ。

映像凄いし役者たちすごいし綺麗だし面白いんですがでもやっぱ享楽乞食目線でケチつけるとすれば後半のやっつけ展開がちょっと残念に思えました。急展開の部分ではみんなの態度も極端に走りすぎて割と観る側としては置いてけぼりをくらいますしややポカーンとします。原作知ってたら問題ないんでしょうけど、展開を急いだんでしょうか。言ってしまえば後半もエンディングもなしにしてただただ女のどろどろだけを描いてもよかったんじゃないかと乱暴なこと思ったりしますがそんなこと思っては失礼なので謹んで取り消します。

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