たちあがる女

Woman At War
公開年:
2018
製作国:
監督:
出演:
  • ハルドラ・ゲイルハルズドッティル
  • ヨハン・シグルザルソン
  • ヨルンドゥル・ラグナルソン
ベネディクト・エルリングソン監督「たちあがる女」は、ニュータイプ・モダン・メタフィクション・ファンタジー・アクションアドベンチャー女性奮闘環境ヒーロー自立と母性コメディ音楽映画の巨頭。
たちあがる女

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「たちあがる女」ってタイトルで主人公女性は独身中年女性、立ち上がるとかいうくらいですから何かに立ち向かうのか、パワハラセクハラジェンダー家族いろいろ想像できますが牧歌的なチラシを観る限りほのぼのライトコメディであるだろうなと思い込んでいて、つまりまたもやこのような傑作映画を勝手に勘違いして舐めていたら大火傷を食らってしまったという「たちあがる女」です。

モダンタイプ超虚構コメディ

この映画はほのぼのしい映画ではありますが同時に童話的ファンタジーでアクションヒーロークライム映画で且つメタ・フィクション系のモダンタイプ映画で肝心なところは女性映画として〆ます。最後のほう、大雨で水に浸かるシーンなんかはこれまでのテイストをすべて放棄してアートの領域にまで踏み込みます。このエンディングは「フレンチアルプスで起きたこと」を彷彿とさせるかもしれません。つまり交ぜこぜの映画です。北欧だからとかあまり言いたくありませんが北欧的だなと思う人がいても文句はありません。

純粋環境テロリストの伝説 野生の息吹

冒頭いきなりおばちゃんが大きな弓を引いて矢をぶっ放すシーンにたまげます。「おっ」って身を乗り出し、その後のおばちゃんの荒野を駆け抜ける野生的シーンで「このおばちゃん、ゼルダの伝説野生の息吹やで」と興奮し、さらに最初から気になっていたカッコいいBGMの演奏家登場でこの映画の正体を突きつけられ襟を正します。

たちあがる女ゼルダの伝説風
たちあがる女ゼルダ風

ほのぼのライトコメディどころか、いきなり環境テロリストばりに一人巨悪に闘いを挑んでいるワイルドおばちゃんです。地球環境に危機感を抱き左翼的正義感に突き動かされてグローバル企業に闘いを挑むヒーローで普段は合唱の先生で家にはマンデラとガンジーの写真を飾りマンデラのお面まで作っていて、独身長くてこどもがほしいから養子縁組の申し込みなんかをしていて今度ウクライナの女の子を引き受けるのよわくわく、というね。なんという面白いキャラ設定ですかと。

このおばちゃんまじ凄くて、環境テロ関連のエピソードではアクション映画ばりに野を駆ける戦士です。カルメン・マウラとジョディ・フォスターを足して割ったようなお顔で普段の穏やかな状態と戦士のシーンの幅広い演技を披露します。

ジョディ・フォスターと言えば「おとなのけんか」での役柄ありましたよね、「たちあがる女」の主人公はあれにとてもよく似た設定です。

思想

胸の空くような左翼のおばちゃん設定です。正確には左翼でも何でもありません、イデオロギーとは無縁ですから。一般的に印象としての左翼風です。これを「たちあがる女」では正しいと設定するでもなく小馬鹿にするでもなく肯定的でも否定的でもなく、でも根本的には人として間違っているわけではなくてその発露や考えなしの短絡思想は変であるが微笑ましいものという印象を残すギリギリのところで描きます。そのさじ加減、絶妙にいいです。
なにより、この主人公のおばちゃん、何かに追い詰められたとか苦しんだ末とか、そういう負のエネルギーのためではなく純然たる自信と確信を持って戦いに挑むっていうポジティブさが見ていてすがすがしいです。

「人の法を越えた法がある」という傲慢な一言についての波紋を呼ぶシーンがありまして、そういうところも外しません。民主主義かつ法治国家を根幹から否定するこの思想はとても危険です。でもうっかりさんはすぐこういうことを悪気なく思ってしまうんですね。「たちあがる女」ではセンス良くこれをさらりと表現します。

※1 ということでうっかり政治用語を出してしまったからにはこのあと40行くらいまた政治的発言を繰り出したわけですが削除して次行きます。

「たちあがる女」の主人公にはほぼ同一人物の双子の姉がいます。最後とか、まさかの安直さをひっさげた見せ場もあります。ここで一瞬「犠牲かよっ」とツッコミたくもなりますがもともとほぼ同一人物なのでそういう厭らしい考えも笑って通り過ぎます。

いつもとばっちりを食らうスペイン語を話す旅行者もいます。スペインマニアとしてはこのキャラだけでおいしすぎてお腹いっぱいです。でも私知ってるスペイン語は「オラ」と「グラシアス」と「ブータ」だけです。こうしたジャンル映画的定番キャラが生き生きするのも、この映画のヘンテコリンなところですね。

いとこかもしれないいとこもどきも大事な人物です。こちらもジャンル映画としてのアクションアドベンチャーには欠かせない設定のキャラですね。堂々とそういう役割で登場します。でもさすがに一捻りしていて、おうちで姉を迎えるシーンなんかはそれこそ狙ったような北欧っぽさに痺れます。

音楽

冒頭からカッコいい音楽が流れて「この音楽かっこええなあ。この音楽真似したいなあ」とか思っていたら当の演奏者も登場します。もちろんドグマ95とは何の関係もない映画ですが、かといって一発小ネタギャグでもないんですねこれが。後ほどはウクライナの女声合唱団も登場します。「ブルガリアンボイスはたまらんのう」と思っていたんですがウクライナのコーラスとのことで、どう違うのかよくわからないけど、とにかく「たちあがる女」の演奏家は主要登場人物です。この映画は音楽映画でもあります。そしてここに登場する音楽の素晴らしいことったら。

この映画の音楽を作った人は「馬々と人間たち」の音楽も担当したダヴィド・ソール・ヨンソンて人です。

出演者クレジットを書きましたがそのうち三人はダヴィド・ソール・ヨンソンを含む演奏家、三人がコーラス隊です。よく調べていないのでわからないですけど、多分役者ではなく音楽家たちですよね。わからないなりにここで説明書きでも入れておきましょう。

  • イリーナ・ダニレイコ … ウクライナの合唱歌手
  • ガリーナ・ゴンチャレンコ … ウクライナの合唱歌手
  • スザンナ・カルペンコ … ウクライナ合唱歌手(スザンナ・クルペンコ役)
  • マグヌース・トリグバソン・エリアセン … ドラマー
  • オマール・グジョンソン … スーザフォンプレーヤー
  • ダヴィド・ソール・ヨンソン… ピアニスト

これ以外にも、合唱団のみんながいい仕事しています。

YouTubeは「たちあがる女」についてのダヴィド・ソール・ヨンソンのビデオですね。

「たちあがる女」でした。
最近、油断していたり全然知らなかった傑作にやたら当たる確率が高くてちょっとひるみます。

※1 ネタで「この後数十行削除しまして」などとよく書くんですけど、意外と本当にそうだったりして。という一例として今回削除したところをやんぐの衛生日記に挙げておいたのでもし興味があればどうぞ -> やんぐの衛生日記 – Moviebooから削除したウヨサヨ与太話

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