猿の惑星:創世記

Rise of the Planet of the Apes
「猿の惑星」の多分「新」と「征服」をリメイクというか解釈し直した新生「猿の惑星」は真面目路線。
猿の惑星:創世記

新薬によって脳が進化して賢くなった猿が人間に反旗を翻す本作は、オリジナル「猿の惑星」でいうと「新・猿の惑星」と「猿の惑星・征服」の合体版みたいなもので、オリジナル版の残念な部分をきっちり作り直した正統派リメイク。と、言っていいかもしれません。
B級臭さを消し、真っ当な真面目路線です。演技や映像は迫力満点。とはいえ、薬を飲んだら賢くなるというドラエモン的設定をはじめ、根底にはおちゃらかSFの風味を残しています。遺伝子だのウイルスだの一見真面目路線に見えますがちゃんと根っこの馬鹿馬鹿しさは生きています。

それにしても懐かしや「猿の惑星」。リアルタイムでは「征服」「最後の猿の惑星」の頃でした。公開に合わせてシリーズをテレビで放映したり宣伝のテレビ特番を組んだり大騒ぎです。
評価的には3作目以降ぼろくそのようですが当時は子どもゆえそんな斜に構えた見方をするはずもなく、夢中になりました。あの頃は大人になったら特殊メイクの職人になりたいと思っていたものです。
シリーズを貫く人種差別のテーマもちゃんと伝わりました。特に「ノー」のシーンには鳥肌が立ったものです。
本作「猿の惑星:創世記」にも「ノー」のシーンがちゃんとあります。
ただし「猿の惑星:創世記」では以前のシリーズのような差別問題に絡む社会性はありません。
社会派部分はすべて取っ払い、娯楽とドラマ性に重きを置いています。

「猿の惑星:創世記」の特筆すべき点はやはり何と言ってもアンディ・サーキスが演じる猿CGに尽きます。「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラム、「キング・コング」のコングをやった人ですね。この人凄いですね。いやCGも凄いけど。若干嘘くさいCGでも演技力でカバーします。
「キング・コング」ではコックの役をやっておられまして、「プレステージ」にも出演しています。個性的ないい顔をした俳優です。だれだだれだキャプチャ専用俳優だなんていうやつは。
このアンディ・サーキス演じる猿が物静かに佇んでいるショットを予告編で見て「これはいい!」と面白さを確信して劇場に足を運びました。
「猿の惑星:創世記」ドラマ部分は安っぽい演出でちょっと稚拙なんですが、猿が絡む部分はさすがの説得力です。

ドラマ部分の評価は微妙ですねえ。ドラマチックさの尺度でいうと悪くないんですが物語そのものと演出が多少安っぽいです。父親との絡みなど、あまりにも簡略化しているというかイメージとしての演出というか、もう少し大人っぽい演出を施してもよかったのではないかと思います。多分、観客の対象年齢を幅広くとるために子供にもわかりやすい演出を心がけたのでしょうが、子供ってのは大人が思ってるほど馬鹿じゃないので、ちょっとくらい背伸びして咀嚼するぐらいの難易度を喜んだりするものだと思うんですが。「おまえも手話ができるのか」のシーンにしても、ギャグにしては外してるし、せっかくの猿同士の連帯感発露シーンなのにややずっこけだったりします。

とはいえ、全体的にはかなり満足していますよ。滅茶苦茶面白いぜと言ってもいいです。短い尺でどばっと楽しませてくれます。
ドラマ部分の稚拙さも、後半のアクションクライマックスに集中するためとあらば納得です。難しく感じる必要のない一流ドタバタアクション猿映画として楽しむべきで、そういう意味では「尺が短かすぎるぜー」と思わせてもらえるほどのカタルシスを味わえます。
多面的にドラマを描き人間を描き何もかもが超絶素晴らしかった「キング・コング」と比較してはいけません。

若干の重々しさもあり、ただの脳天気娯楽作品では済まされない良い味わいもちゃんと持っています。
普通に観ると「面白かったよ」と普通に褒めたくなりますが、wikiによりますと監督がこのように語っているそうです。

「これは神話の一部分であり、そう見えるようにしなくてはならない。他の映画との関連はなく、オリジナル・ストーリーである。旧作が好きな人も満足してくれるだろう。『バットマン ビギンズ』のようにファン層を取り込めるかでこの映画の真価が問われる」

・・・うぅぅむ。そうですか。そうなるといきなり閾値が上がりますね。そんなのを目指していたのか・・・。それを前提に考えるとちょっとこの出来ではどうでしょうね。

スラムドッグ$ミリオネア」のヒロイン、フリーダ・ピントが出演しています。これは意外でした。綺麗ですねえこのひと。最近では「ミラル」でいい役をやっていて、観たかったんですが期限が切れて観れませんでした。

「猿の惑星」といえばティム・バートン版もあるわけですが、これは未見です。どんなのか知りません。

なんか褒めたり落としたり行ったり来たりでとりとめのない散文的感想文になってしまいました。

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