ヒューゴの不思議な発明

Hugo
1930年代のパリを舞台に、駅の時計台に隠れ住むヒューゴ少年の冒険を描きます。少年と少女、30年代懐古パリ、暖かい人々、老人と映画、映画館と本。
ヒューゴの不思議な発明

すいません。ほんとすいません。劇場で3Dで観てあげるべき作品でした。3Dにほとんど興味ないものですから、上映中も3Dで観ようなどと全く思わず、今では反省しています。何となく映画創成期へのオマージュみたいな作品だということはぼんやり知っていましたが、こう来るとは知りませんでした。3Dに意味ありました。ほんとすいません。

というわけで「ヒューゴの不思議な発明」はブライアン・セルズニックのベストセラー小説「ユゴーの不思議な発明」をマーティン・スコセッシが映画化した少年少女向けアドベンチャーです。原作は読んでませんので知りません。
貫禄と親しみ深さのマーティン・スコセッシはこの作品を多分こどものために作ってます。こども向け作品を撮るとは珍しいですね。
内容はめちゃんこ懐古で暖かく美しく、スコセッシ監督も老境に達したのかと思わず呻きそうになる出来映えです。こども向けですが子供だましじゃありません。大人が観ても存分に面白いです。童話の鑑のような映画です。というか年寄りが見ると涙が止まりません。

だいたいそもそも「映画や映画館への憧憬を持つ子供」と聞くだけで泣けてきます。映画館へ忍び込んで映画を観るシーンもあります。こどもにとって映画は果てのない未知の世界、映画館は夢の世界へ旅立つための神聖な場所です。
もうひとつ、それに加えてとても感動したのは「本」です。本もいいアイテムです。知識と教養、想像力と夢と希望の象徴です。本を重要視した作品に悪い作品はありません。こどもにとって本は底なしの知識の宝庫、本屋の店主は神様の次に偉大な知の仙人です。

憧れのパリの駅構内には様々な人がいます。ものすごくステレオタイプなパリでありフランス人です。しかも全員英語を喋っています。ロンドンみたいなパリです。大人にとっては懐古、こどもにとってはやはり夢の国です。アメリカ人にとっても夢と憧れのロンドン的パリです。ここで繰り広げられる小さな人間模様も童話のように小気味よいです。

「月世界旅行」を私が初めて観たのもヒューゴ少年と同じくらいのときでした。手品も好きだし映画も好きな年頃です。目を輝かせます。この「月世界旅行」を作ったジョルジュ・メリエスのお話でもあります。
映画はイリュージョン、驚きに満ちた世界を提供して客を喜ばせます。そういう映画の一面を強調します。有名な汽車のシーンが何度も繰り返し流されます。あの迫り来る汽車の映像の延長線上に3D映像があります。

さてマニアな大人は絶妙なキャスティングでも眺めてニヤニヤしましょう。
少年ヒューゴを演じたのは「縞模様のパジャマの少年」のあの少年で、少女イザベルを演じたのは「キック・アス」の女の子で、知の仙人を演じたのが私にとっても特別な人、ドラキュラで心の奥底にこびりついているクリストファー・リーで、鉄道公安官を演じたのがボラットことブルーノことサシャ・バロン・コーエンです。まさかドアップでちんぽこをぐるんぐるん振り回していた男がこんな素敵な演技で客を魅了するとは、やはりただ者じゃありません。
それからパパ・ジョルジュを「砂と霧の家」でも天才演技を見せつけたベン・キングズレー、少年のパパを高校中退の頑張り屋さんで他人とは思えぬ立派な男前ジュード・ロウ、そのほかにもいろいろと渋いキャスティングで流石と呻らされます。

後から調べたところによりますと、意外なことにジョルジュ・メリエスの生い立ちについてはかなり事実に忠実であるらしいです。再評価された時期もぴったりなんだそうです。へえ。これは知らなかった。

「ヒューゴの不思議な発明」では特に不思議な発明をしないのにタイトルになっている謎があったりしますが、そんなことどうでもよくてですね、これは少年少女にお子様たち、とうちゃんかあちゃんじいちゃんばあちゃん、みんなしてご覧になれるこどものための冒険と感動の物語です。童話と娯楽とオーソドックスの素敵なひとときを過ごせます。

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