消えた声が、その名を呼ぶ

ファティ・アキンが三部作の最終章との位置づけで描くアルメニア人虐殺をベースにした旅の男の物語。5カ国に渡るロケ、フィルム撮影、7年にわたる歳月をかけて完成したという気合いの一本。

消えた画 クメール・ルージュの真実

1975年にカンボジアを掌握したポル・ポト率いるクメール・ルージュが行った大粛正。記録映像の多くが失われていることもあり、これを語るために犠牲者が葬られた土から作った人形を用いて歴史を描き出す映画です。

がんばれ、リアム

2000年の英国映画「がんばれ、リアム」は如何にして庶民が差別主義者のナショナリストに堕ちていくかを不穏な不況社会の日常の中から描き出した作品で、この映画について数年前に語り倒したかったのですが今頃ちょっとだけ触れておきます。

鑑定士と顔のない依頼人

美術鑑定士に持ちかけられた依頼は両親の残した屋敷内の美術品鑑定。依頼主の女性はなかなか姿を現しません。ジュゼッペ・トルナトーレの2013年最新映画は美術品とミステリーと孤独と愛の物語。

華麗なるアリバイ

アガサ・クリスティ原作のミステリー。田舎の屋敷で行われたパーティに集まる面々。その中のひとりモテモテイケメン医は浮気しまくりの多忙な男。彼の浮気相手もパーティに来ています。しかもふたり。綺麗な奥さんと同伴なのに浮気相手も同席する何とも落ち着かないパーティです。

カランジル

ブラジル、サンパウロのカランジル刑務所(サンパウロ刑務所)で1992年に起きた虐殺事件を描いた実話ベースの物語です。虐殺事件を描きますが、本編の中心は刑務所内の医師が面談する囚人たち個々のお話です。開放的でこれがかなり最高。超面白い。絶品。人生に必要な一本。ヘクトール・バベンコ2003年の作品。

カラマリ・ユニオン

アキ・カウリスマキ:カラマリ・ユニオン(烏賊墨同盟)の15人の男たち。名はフランク。もうこれ以上故郷の地におれない。思い出は詰まっていて辛いが、理想郷エイラを目指して旅立とうではないか。ルートは自由だ。険しいが頑張ってくれ。以上だ。

カラスの飼育

父親が知人女性との情事の最中に急死する様子をじっと見つめる三姉妹の次女アナ。彼女に芽生える哀しいばかりの悪意を描きます。
「ミツバチのささやき」のアナ・トレントを大々的にフューチャーしたカルロス・サウラ1976年の名作。

神様メール

ジャコ・ヴァン・ドルマルの新作映画「神様メール」は神様の娘が6人の使徒を探し出し新たな新約聖書を作ろうとする物語。ちびっ子ファンタジックコメディで垢抜けたジャコの素敵な一品。

カニバル

女性を殺し解体して肉にして冷蔵庫に保管して食べる男の物語です。普段は仕立屋の物静かな男で、この主人公をアントニオ・デ・ラ・トレが好演。監督は日本で初めて紹介されるマヌエル・マルティン・クエンカ。なんかちょっと曲者臭がある監督です。

悲しみのミルク

南米の貧しい村、年老いた母親を失った娘ファウスタは埋葬費用を稼ぐためメイドの仕事を始めます。苦悩と歌を引き継ぎ心を閉ざした女性ファウスタの物語。バルガス=リョサの姪クラウディア・リョサ監督が放った南米文学マジックリアリズム映画の神髄、極上の逸品。

カスパー・ハウザーの謎

ヴェルナー・ヘルツォーク監督1974年の「カスパー・ハウザーの謎」がリマスター発売され飛びつきます。19世紀ドイツの謎、身元不明の野生児カスパー・ハウザーを描いた映画ですが、ヘルツォークがこの実話をどのように映画作品としたのかに興味ありました。

籠の中の乙女

子供たちを家の敷地内に閉じ込めて世間から隔離し、両親の操作で独裁的偽常識を植え付け育て上げている家族のドラマ。怖くてギリギリ、面白くて異常、文芸的興奮に満ちた野心作にして21世紀の怪作。こういうもの凄い作品に時々出会えるから映画はやめられない。

牡蠣工場

「牡蠣工場」の公開を制作中から楽しみにしていて、せっかくだから公開されたら撮影地となるべく近い街に旅行がてら出向いてそこで観るのだと決めていたのに具合の悪い時期と重なってしまい、しばらく後の地元京都での上映まで待たねばなりませんでした。

解体病棟 ファイナル・デッドオペレーション

原題「Autopsy」は「検死」の意味で、そのものズバリ、発作的病院残虐物語。若者たちが訪れた病院は恐怖のホスピタル。上映会での邦題は「解体病棟」

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ

ジム・ジャームッシュ2013年新作映画は珍しくも吸血鬼のお話。でも「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」の吸血鬼は音楽家で文学者で哲学者で詩人のボヘミアンたち。文化と社会に言及し、洒落と知性に満ちた理想世界のファンタジーを見せてくれる最高の一本。

オレンジと太陽

ソーシャルワーカーのマーガレット・ハンフリーズがひょんなことから組織的に行われていた児童移民を知ることになり、調査を開始します。イギリスとオーストラリアに絡む政治的暗部についての実話ベースの作品。

オレの獲物はビンラディン

ラリー・チャールズ監督の「オレの獲物はビンラディン」は実話を基にしたコメディ。実話を基にしたといわれてもラリー・チャールズですから真に受けていませんでした。でもほんとでした。旬は過ぎてるけど良い映画。

オランダの光

オランダ絵画の美しい空気感、あれこそオランダの光。今は失われたのか、そもそもオランダの光とはなんぞや。オランダを代表する映像作家ピーター=リム・デ・クローンが追求するアート・ドキュメンタリー。

オックスフォード連続殺人

アレックス・デ・ラ・イグレシアがイライジャ・ウッド、ジョン・ハート、レオノール・ワトリングなど大スターを迎えてのミステリー作品を監督。良質ミステリーに仕上げました。

おじいさんと草原の小学校

かつてイギリスの植民地だったケニア。2003年に政府が無償教育制度を施行したことを耳にした84歳の老人マルゲが地元の小学校に入学を希望してやってきます。実話に基づく最高齢小学生の物語。

大いなる休暇

カナダの端のほうの小さな島。かつて漁業で栄え今ではすっかり貧困島と化したこの土地に持ち上がった工場誘致の話。しかし工場建設には定住する医師が必要条件。島民が一丸となって「魅力的な島」を演出し、医師を騙して気に入られ定住する気にさせようとするお話。