ともしび

Hannah
ともしび

 

ふつうにブログ見てる人には「ともしび」感想文の2ページめ、ネタバレ編です。1ページめはこちらです。

 

ミステリーの謎解きして遊ぶようなエンタメ作品ではない「ともしび」なのに謎解きして遊ぶというふざけたことをこれからやりますが、これは推理の結果に過ぎないのであらかじめご了承ください。

さて長年連れ添った夫が収監されるというお話です。夫は妻に対して冤罪であるかのような発言をしますね。「あいつらおれがやったと思ってる」収監されるのは完全に間違いだけど収監される以上仕方ないから行ってやるけどなみたいな態度も少しあります。このとき妻は無表情で、半分は夫を信じているようにも思います。観ている観客も半分は夫の冤罪を信じたりします。私はそうでした。

どういう犯罪かについては映画内でヒントが示されている通り、何やら子供絡みであることはわかりますね。怪我させたんでしょうか。殺しのような血なまぐさい事件ではなさそうだけどとおぼろげながらわかりますね。アパートに被害者の親か誰かが文句言いに来たりします。

子供に関する犯罪であることを仮定すると、「ともしび」内で子供が登場するすべてのシーンにドキドキ演出がなされていることに気づくでしょう。階上の風呂で悪ふざけをしていた子供たち、プールのシーン、ラスト近くのアパートの階段を駆け上る子供たち、それ以外にも子供が登場するすべてのシーンが何らかの感情揺さぶる演出がされていることを思い出しましょう。

さて話ちょっと変わって息子との軋轢です。シャーロットは息子や孫に会いたいのですが、息子はめちゃ怒ってて会わせてくれません。「えらく嫌われてるなあ」と思いますね。シャーロットのほうはと言えばぜんぜん嫌っていないし「会いたいの」とか言いますから、喧嘩じゃなくて嫌われていることがわかります。夫のほうは息子と仲違いしている感じですね。「あんな奴」呼ばわりです。冤罪を信じて貰えないから?面会にも来ないようです。夫は息子に強くなじられたことがあるのかもしれません。

これ、ここが謎としてしばらく気になっていました。軋轢の理由は何でしょう。これまでの人生でしょうか。事件と関わりがあるんでしょうか。反芻して気づいたのは「完全に犯罪と関係している」ということでした。これ以外にないと推理を確信したのはこの息子との軋轢シーンのためでした。

では核心のタンスの裏行きます。タンスの裏には夫が隠したであろう封筒があって、多分、古いものです。シャーロットは中身を見ます。後に「写真を見た」と言いましたっけ。手紙や書類ではなく写真でした。このとき妻に衝撃が走りはげしく動揺します。もう演劇の練習なんか出来ないレベルに追い込まれます。

最初妻は夫の犯罪が冤罪であることを半分くらい信じていたと思われます。しかしこの封筒シーンで夫が嘘をついていたことを確信するんですね。証拠を見つけたのです。

スポーツジムの会員証の話をしましょうか。会員資格が失われたシーンがあります。これ何でしょう。ぼけてて更新し忘れましたか?違います。スポーツジムにはこどもたちもたくさんいますね。ヨーロッパでは厳しいんですよ。近寄ることさえ許されません。

さてどうですか。だんだんわかってきましたね。夫の収監理由は、小児性愛に関する犯罪だったと推理できます。

息子が孫を庇い親を嫌い遠ざけようとします。何の証拠もないのに冤罪だと戯言を主張する父親を完全におかしいやつだと思っています。母親が夫の犯罪と性癖を知っているのに平気でいることに虫唾が走る状況だと想像することができます。小さな子供を持つ親にとって、小児性愛者はカス中のカス、クズ中のクズです。

こどもが登場するすべてのシーンで妻はドキっとします。観ているこちらもドキっとします。そういう演出をされている理由はただ一つ。子供に対する漠然とした罪悪感です。

封筒の中にどういう写真があったのか、もうだいたいわかりましたね。夫の秘密のコレクションに身の毛もよだつ嫌悪を感じます。

シャーロットは動揺しまくりです。こちらも動揺しまくりです。

反芻することによって、説明不足どころかすべてのシーンが夫の性癖と犯罪によって崩壊する夫婦と家族を描いていたのだと気づきます。これは見ている私がぼんくらなせいで、鋭くきっちり観る人はもちろん初見でリアルタイムにそれを嗅ぎ取って理解しながら見るでしょう。そういう人には呆れられるかもしれないですが反芻によって気づいたのだから仕方ないです。

妻のこれまでの人生、これからの人生についての思いを想像します。ついでに、もらわれていった犬の幸せも願うばかりです。

 

 

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