レクイエム・フォー・ドリーム

requiem for a dream
ダーレン・アロノフスキーが「π」の次に制作したジェニファー・コネリー堪能型ハイテンションスタイリッシュ青春転落群像劇映画。
レクイエム・フォー・ドリーム

ブラック・スワン」の記事を書いたときに「レクイエム・フォー・ドリーム」の感想文をまだ公開していないことに気づいたので慌ててポストしときます。

さて「レクイエム・フォー・ドリーム」を観たのは一にも二にもジェニファー・コネリーちゃんを観たかったからであり、ダーレン・アロノフスキーのことは最初あまり意識していませんでした。でも「レスラー」と「π」のあまりの温度差に「この監督、どういうこっちゃ」という謎を解明したい気持ちもあって、第二作目である本作に突然興味がわいてきたのですね。
そんなわけですので「レクイエム・フォー・ドリーム」はダーレン・アロノフスキーの履歴として、またあるいは2000年当時のぎりぎりジェニファー・コネリーとして、二粒のおいしい見方ができる映画となっております。
で、観ればわかりますとおり、それに加えてエレン・バースティンの頑張り演技を堪能できる要素もございまして、なかなかお得なタイトルとなっています。

内容は、主におかんと息子と息子の彼女の物語で、それぞれには各自の物語がありおのおのの関係者もおりまして、群像劇と言うほどではないにしろ群像劇風にストーリーを描き分けます。
撮り方や見せ方はスタイリッシュで、ちょっとだけクドい過剰映像美が満載です。アングラ傾倒の「π」を踏まえれば随分おとなしく、大衆的な映像サービスとなっていますね。
「MTVみたい」と貶すこともできるし「ポップで洒落てる」と褒めることもできるし「『π』から早くも脱皮して偉いぞ」とも取れるし「アングラ仲間だと思ってたのにメジャー指向かよ」と嫉妬する人もいるかもしれないし「ぶっ飛んでて面白いじゃんかよー」と喜ぶ人もいることでしょう。

内容はドラッグによる転落と破滅がメインテーマですが、ドラッグ反対を叫ぶミニパト主義はあまり感じさせません。かと言ってドラッグやラリリそのものをテーマにした映画のようなこともなく、重いんだけどわりと軽い青春映画の作りになっています。この軽さはただ単に転落と破滅を描きたかったのであり、ドラッグはそのためのネタにすぎないのではないかと思われます。

各登場人物の転落っぷりは見ていて痛々しいし、立ち直るチャンスもあったのに生かせなかったねーと残念に思えたりしますが、登場人物に強く感情移入するようなタイプの作品でもないし、人物を俯瞰しながらストーリーを追っていく面白さがより強く出ています。

人間そのものをえぐるように描いたアクの強い作品ではありませんで、ファンタジー映画的なイメージさえ感じられるような仕上がりになっています。
いずれにせよ「π」からの成長には目を見はります。さらに、このあと何作か撮って「レスラー」に至る成長ぶりは快挙と言っていいレベルじゃないでしょうか。

おかん役のエレン・バースティンが体を張った転落演技です。迫力ですよ。意外な見所です。この演技でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたそうです。「どうしてこうなった」と思わずにおれない荒廃っぷりは見事です。

さていよいよジェニファー・コネリーです。
この作品の真価はジェニファーのヌード・・・と言いたいところですが若干の抵抗ありです。あからさまなボディ・ダブルにがっかりの人もいるかもしれません。不純な動機で見る人にはあらかじめボディ・ダブルをばらしておきますのでね。だめですよ、不純な動機は(戒め)でも良いシーンもあります(ハート)

ジェニファー・コネリーと言えば「フェノミナ」。あれに尽きます。ファンタジーで汚物で虫でアイドル、名作「フェノミナ」でジェニファーの虜になった人は世界に何千億人いるかわかりません(大袈裟)
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」で鮮烈デビューした次作がダリオ大先生の「フェノミナ」ですから強烈ですよね。ジェニファー見たさに公開中劇場に通ったのは内緒です。
でもどういうわけかその後「ラビリンス」を見た後は「砂と霧の家」とか「ダーク・ウォーター」(「仄暗い水の底から」のリメイク)までジェニファー映画を全然見てません。「ラビリンス」が面白くなかったからでしょうか。多分そうかも。
ジェニファー・コネリーは1970年生まれですから、私的にストライク世代です。それはいいとして、と、いうことは「レクイエム・フォー・ドリーム」の時は30歳くらいですか?なるほど、ちょっと役年齢的に無理ありますか。でも気にならないですね。全然気になりません。童顔だし。気になりませんよ(←気になったらしい)

「レクイエム・フォー・ドリーム」はイギリスの映画雑誌「エンパイア」が2009年に発表した「落ち込む映画ランキング」で1位を取ったそうです。
うーむ。転落と破滅のお話には違いないが、落ち込む映画ナンバー1とは全く思えません。落ち込みたいなら、地獄の底まで引きずり込んで這い上がれないような映画が山ほどありますからね。
いろんな意味できつい映画ですが落ち込むというのは全くベクトルが異なります。

印象深い旋律の音楽が繰り返し流れます。この音楽、いいねと思っていたら演奏はクロノス・カルテットでした。あいやこりゃ懐かしい。ありとあらゆるいろんな音楽を奏でるアンサンブルです。今や大御所。

原作は ヒューバート・セルビー・Jr の「夢へのレクイエム」で、監督と共に映画では脚本を担当しています。原作者が脚本なのできっと原作との比較上も良い脚本なのだろうと思われます。原作ではもっと破滅的なのかもしれませんね。未読ゆえわかりませんけれど。

というわけで結論としてどうなのかというと、結構いい映画だと私は思っています。π見てこれ見てレスラー見てブラック・スワン見たらダーレン・アロノフスキー監督の軌跡というものが見えてきて、そういう意味でも興味深いです。

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