マダムと奇人と殺人と

美大生ばかりを狙った連続殺人事件の捜査に挑むレオン警視が辿り着いたのはビストロ「突然死」。この変な名のビストロに集まるこれまた変でおかしな面々。泥臭くて最高なビストロ物語と事件。

ボヴァリー夫人

19世紀のベストセラー、ギュスターヴ・フローベール「ボヴァリー夫人」を原作としたクロード・シャブロル1991年版の映画。ロマン派で奔放のエマ(イザベル・ユペール)が結婚して引っ越しして不倫していろいろあれこれやります。

月曜日に乾杯!

今頃初めて観たオタール・イオセリアーニ監督2002年の「月曜日に乾杯」は家や村や町や観光名所や酒や煙草やおじさんや若者や老人たちやいろんな人の魅力に満ちた不思議世界の緩やか模様で映画的魅力の宝庫でこれ大好き。

ルイーサ

アルゼンチン/スペイン映画「ルイーサ」です。ブエノスアイレスで猫と暮らすおばさんルイーサ、きりりと身を引き締めて規則正しく日課をこなすこの老齢近い女性にある日不幸が折り重なってやってきます。

ルシアとSEX

フリオ・メデム監督2001年の「ルシアとSEX」は名作の呼び声も高い愛の映画。官能で幻想で文芸です。ホットでクール、大胆で繊細、明るいエロティシズムとどろどろの粘液地獄、愛の交差のミステリーにみんなイチコロよ。

ラブリー・リタ

少女リタです。ちょっとおしゃまで不機嫌さんです。あたしは可愛い女の子、けど毎日なんて退屈なの。なんてつまらないのかしら。私を認めて。可愛いと言って。ラブリー、リタ。
などと暢気に構えていられる映画じゃありません。ハネケの弟子、ジェシカ・ハウスナーのデビュー作は揺れ動く乙女心と不機嫌の頂点。

コレラの時代の愛

ガブリエル・ガルシア=マルケスの同名小説の映画化。内戦とコレラが蔓延る世紀末のコロンビアを駆け抜ける怒濤の50年間。ハビエル・バルデムの怪演がラテン文学の映画化に何をもたらしたか。

ルルドの泉で

聖地ルルドの巡礼ツアーに参加したマヒの女性とその周辺。ルルドを描き、巡礼ツアーを描き、人々を描ききる、オーストリア女流監督ジェシカ・ハウスナー2009年会心の一撃。これは凄いの一言。

恐怖ノ黒鉄扉

ホラーっぽいスリラーですが、ずらずらずらーっと並んだ監督名、なんでしょうこれは。これはバルセロナ映画学校出身の若手監督12人による共同監督作品。オムニバスではなくて共同監督。誰が誰か、誰がどこを監督したのか、そういうことはわかりません。でもなんか楽しそう。

アイム・ソー・エキサイテッド!

巨匠ペドロ・アルモドバル2013年の新作は力の抜けた航空機コメディ。機体トラブルで着陸できない飛行機内で乗務員とビジネスクラスの客との変態性豊かな愛のひとときを描いた軽くて凄い映画でもうあたし興奮しちゃう!

抱擁のかけら

盲目の脚本家ハリー・ケインはかつての映画監督マテオ。因縁の実業家マルテルの死を知ることをきっかけに今一度振り返る14年前の出来事。ペドロ・アルモドバルによる愛と映画と魅惑の美女ペネロペ・クルス。

インポッシブル

家族旅行中にスマトラ島沖地震による大津波に遭ってしまった家族のドラマです。監督がJ・A・バヨナと聞き何が何でも観なければと観た「インポッシブル」は並みのファミリー映画とは訳が違います。

リヴィッド

「屋敷女」で強烈デビューを果たしたジュリアン・モーリーとアレクサンドル・バスティロのコンビ監督の第二作「Livide」です。モラルの限界に挑戦した前作とはうって変わって、今作「リヴィッド」はゴシックホラー仕立ての、ひとことでいうとわけのわからんホラーファンタジー。

リトル・フィッシュ

麻薬絡みのちょっと不良的事情を抱えた家族を中心とするお話です。貧困なる土地から動き出せない弱者のもがく姿を描くソリッド・シチュエーション・クライム・ハード・ホームドラマ。ケイト・ブランシェット、ヒューゴ・ウィーヴィング、サム・ニールの共演。

ライク・サムワン・イン・ラブ

アッバス・キアロスタミ監督が日本を舞台に、日本人キャストとスタッフによって作り上げた作品。劇中に流れる「ライク・サムワン・イン・ラブ」をタイトルに、引退した大学教授と風俗嬢とその恋人たちの切り取られたある日を描きます。

がんばれ、リアム

2000年の英国映画「がんばれ、リアム」は如何にして庶民が差別主義者のナショナリストに堕ちていくかを不穏な不況社会の日常の中から描き出した作品で、この映画について数年前に語り倒したかったのですが今頃ちょっとだけ触れておきます。

キリマンジャロの雪

不況の波が押し寄せるマルセイユ。人員整理の首切りがくじによって行われています。不況の港町を舞台に、ある中年夫婦に起きた事件とその顛末。

レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う

我らがレニングラード・カウボーイズふたたび。というわけで前作「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」の続編。

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ

フィンランドの架空ロックバンド「レニングラード・カウボーイズ」が世界のスーパースターを目指し豪腕マネージャと共にアメリカに渡ります。
ご存じレニングラード・カウボーイを産み落としアキ・カウリスマキの名を轟かせた89年、フィンランド映画。

神様メール

ジャコ・ヴァン・ドルマルの新作映画「神様メール」は神様の娘が6人の使徒を探し出し新たな新約聖書を作ろうとする物語。ちびっ子ファンタジックコメディで垢抜けたジャコの素敵な一品。

ロルナの祈り

愛の社会派ダルデンヌ兄弟による移民の愛の物語。究極の愛と絶望。もしかしたら、この絶望感の中に強烈な愛を紛れ込ませましたか?ロルナの未来に、何か希望があるとすればそれは何ですか?

最初の人間

フランスで成功した作家が、フランスからの独立運動で紛争中のアルジェリアに帰郷、平和と共存を説き非難に晒されつつ母の元を訪ねます。作家コルムリと彼の幼少期のお話。カミュの自伝的遺作の映画化。知性と良心と苦悩の渾身の作。

ル・アーヴルの靴みがき

フランス北部の港町ル・アーヴル。以前はボヘミアン生活を送っていた元芸術家のマルセルは今では靴みがき。最愛の妻と忠実な犬とともに暮らしています。
アキ・カウリスマキ2011年の新作は、心揺さぶられるボヘミアンと移民の街の社会派ファンタジー。大絶賛。

華麗なるアリバイ

アガサ・クリスティ原作のミステリー。田舎の屋敷で行われたパーティに集まる面々。その中のひとりモテモテイケメン医は浮気しまくりの多忙な男。彼の浮気相手もパーティに来ています。しかもふたり。綺麗な奥さんと同伴なのに浮気相手も同席する何とも落ち着かないパーティです。

少年と自転車

社会と人間を描かせたらこの人たちの右に出るものがいないという、ジャン=ピエールとリュックのダルデンヌ兄弟、この巨匠兄弟監督の2011年新作はやっぱり受賞の「少年と自転車」です。揺さぶられてください。

ぼくのエリ 200歳の少女

12歳のいじめられっ子オスカーと隣家に越してきた少女エリとの出会い。ありそうでなかった新しい映画。世界で絶賛、壮絶受賞の名作ホラーをご覧あれ。

スリーピング・ボイス 〜沈黙の叫び

フランコ独裁政権時代、内乱敗者の家族や恋人である女性たちが収監されたマドリードの刑務所についての告発的映画。「スリーピング・ボイス」は、当時の生き残りたちの取材を元に書かれたドゥルセ・チャコンの小説を原作に制作された歴史に向き合う力作。

ラヴィ・ド・ボエーム

芸術家3人がパリを舞台にボヘミアン生活。アーティストの生き方がハードボイルドであることを端的に示すアキ・カウリスマキ1992年の傑作。

悲しみのミルク

南米の貧しい村、年老いた母親を失った娘ファウスタは埋葬費用を稼ぐためメイドの仕事を始めます。苦悩と歌を引き継ぎ心を閉ざした女性ファウスタの物語。バルガス=リョサの姪クラウディア・リョサ監督が放った南米文学マジックリアリズム映画の神髄、極上の逸品。

サスペリア・テルザ

イタリア、アメリカ製作によるダリオ・アルジェント師匠のホラー。「サスペリア」「インフェルノ」に続く魔女三部作の完結編と銘打っておりますがもちろん油断してはいけません。

イゴールの約束

外国人の違法労働を斡旋したり面倒を見たり搾取してかすめ取ったりして生計を立てている父とその子イゴールの物語。怪しい父、手伝う息子、働く外国人。
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌの兄弟監督の名を世界に轟かせた長編映画3作目の「イゴールの約束」は、身の丈世界の事件を通して人間の社会的生物的事象を切り取ります。

オープン・ウォーター 第3の恐怖

ヨットの若者たちが海に飛び込みますが梯子をかけるのを忘れていて船に戻れません。海の事故を描いた「オープン・ウォーター」と関係ないけどよく似た設定のスペイン産ぱちもんオープン・ウォーター。

我らの生活

愛する妻エレナと二人の幼い息子を持つ現場監督クラウディオです。妻は三人目を妊娠中。陽気で頑張り屋でやや出鱈目なこの労働者の家族と労働のナチュラル系ドラマ。

世界で一番醜い女

舞台は近未来2011年のスペイン共和国。老婆が殺害される事件で浮かび上がる美女の容疑者。しかしその実体は異端博士の新技術で整形された世界一醜い女だということが自然と解明されていきます。という話ですが、別の意味で実に興味深い一本でもあります。

鑑定士と顔のない依頼人

美術鑑定士に持ちかけられた依頼は両親の残した屋敷内の美術品鑑定。依頼主の女性はなかなか姿を現しません。ジュゼッペ・トルナトーレの2013年最新映画は美術品とミステリーと孤独と愛の物語。

バッド・エデュケーション

若くして成功している映画監督エンリケの元に神学校時代の同級生イグナシオだと名乗る俳優が現れます。イグナシオが持ってきた原稿は「僕らの子供時代からのドラマを描いた」作品、というわけで監督が読み始めます。

マーシュランド

1980年、アンダルシア地方のどこか田舎の湿地帯(マーシュランド)、ここで少女二人の失踪事件が起こり都会から左遷されてきた二人の刑事が捜査します。根強く残る独裁政権時代の傷跡と置き去りにされた街。

大いなる休暇

カナダの端のほうの小さな島。かつて漁業で栄え今ではすっかり貧困島と化したこの土地に持ち上がった工場誘致の話。しかし工場建設には定住する医師が必要条件。島民が一丸となって「魅力的な島」を演出し、医師を騙して気に入られ定住する気にさせようとするお話。

クスクス粒の秘密

移民が多く暮らす港町の港湾労働者として長年働いてきた61歳スリマーヌは、労働時間を半分に減らすか解雇と宣告されてしまいます。アラブ移民の家族の物語。これはすごい。これは凄いです。

時の重なる女

ホテルで働くソニアと元刑事で警備員のグイドが出会い系パーティで知り合って仲良くなりまして、浮き浮き気分でグイドが警備を担当している邸宅に入り込んでいちゃついておりますと、そこに現れ出でたる押し込み強盗団の面々。夢のデートが一瞬で悪夢へと。愛とまぼろしのサイコ系ホラー系マカロニミステリースリラー。

ナタリー

オドレイ・トトゥ主演のラブコメ調の恋愛ドラマ。ラブコメからコメを取ったらラブしか残らないけど、その残ったラブもコメとくっついてる程度のラブだからして、「ナタリー」はちょっと珍しいくらいのどうでもいい映画。

アナザー

たっぷり10時間ほどかかる残業を命じられたスタイル抜群の秘書、社長の家で作業に没頭します。この秘書はメガネっ娘でピュアでサイコ、オタクに好まれる漫画のようなオタキャラですが映画自体は正統派フレンチ真っ向フィルム・ノワール、そのタイトルは「眼鏡と銃の車の女」これはイカしてる。でもその前にこの変な日本版のカバーアートをとりあえず無視してください。

サーティーン みんなのしあわせ

不動産屋のセールスをしているおばちゃんが、ひょんなことから物件の一室で凄いものを手に入れ、それを巡ってアパートの住人との攻防が始まります。ブラックでコミカル、2000年「La Comunidat」(コミュニティ)というタイトルの傑作。

刺さった男

失業中の広告屋ロベルトが仕事を無心するも冷たくあしらわれ傷つき、やがて遺跡発掘現場をうろちょろしているとトラブルで転落、即死は免れますがたいへんな事故となってしまいます。アレックス・デ・ラ・イグレシア監督2012年の「刺さった男」は人間の尊厳と愛を描くソリッド・シチュエーション・串刺し・アクシデント・悲喜劇。これ凄くいい。

SHOT/ショット

人里離れた古い持ち家を売却するために大掃除にやってきた父と娘、そして叔父さん。明日から作業だ、今日は寝ようということで寝ていましたら二階から物音が・・。屋敷に潜む何物かが襲ってくるホラーテイストスリラー。

ヒドゥン・フェイス

さよならの置きムービーを残して消えた恋人。男は泣き崩れ、その後バーのウエイトレスと新たに出会います。家では奇怪現象がちらほらと。

やがて来たる者へ

第二次世界大戦末期、イタリア北部の山村の物語。農家の娘、8歳の少女マルティーナは生まれた弟が死んで以来口がきけません。彼女の大きな目が山村の人々、大所帯の一家、ドイツ兵士にパルチザンを見つめます。
これは壮絶。これはいかん。これはあまりにもあまりな映画。