汚れた心

第二次大戦終戦直後、ブラジル移民の日本人に起きた血で血を争う事件の映画化。映画では日本人村で徒党を組む狂人ファシストが同胞を狙います。「国賊」の印を付けて殺すのです。

ブリューゲルの動く絵

ブリューゲルの「十字架を担うキリスト」を映画化した作品。なんのこっちゃとお思いでしょうが、絵画作品の映画化というのはこういうことだと妙に納得出来る映像派アート作品です。

ぼくたちのムッシュ・ラザール

担任を失ったクラスに新たにやってきた先生はアルジェリア出身のバシール・ラザール。至って真面目な男です。小学校を舞台に、それぞれが孤独と不安を抱える生徒と教師を描きます。

宇宙人王(ワン)さんとの遭遇

ここはローマ。中国語の翻訳家ガイアさんに急な同時通訳の依頼の電話が入りまして、いそいそと出かけますと目隠しをされてどこか判らぬ隔離された取調室に連れて行かれ、中国語を話す謎の宇宙人の尋問に付き合う羽目に。

リヴィッド

「屋敷女」で強烈デビューを果たしたジュリアン・モーリーとアレクサンドル・バスティロのコンビ監督の第二作「Livide」です。モラルの限界に挑戦した前作とはうって変わって、今作「リヴィッド」はゴシックホラー仕立ての、ひとことでいうとわけのわからんホラーファンタジー。

Virginia/ヴァージニア

フランシス・フォード・コッポラが比較的地味で文芸路線の三部作をこっそり世に放ちましたが、この「Virginia/ヴァージニア」は虚構を強く意識したホラーっぽいミステリー。三部作の真打ちにして最強の一本。素晴らしい出来映え。あっぱれコッポラ。大興奮。大好物。

スノー・タウン

オーストラリアで1999年に発覚し世間を賑わせた殺人事件についての実話ベースの物語。リアリズムの技法で徹底的に描く貧困と正義と暴力。ずっしり重苦しく、胃がごろごろ言うような不快感と絶望を感じて気分が落ち込むこと請け合い。

きっとここが帰る場所

最初はショーン・ペンがオカマの役かな、と思ったらそうではなくて、かつてスターだったロックミュージャンという設定。金はあるけど仕事は辞めてしまってる、けど恰好は昔のまま。この駄目っぷり豊かな元ロックスターが父の死をきっかけにある目的を持って旅に出ます。トーキング・ヘッズの名曲「This Must Be the Place」をタイトルに据えての、何もかもが魅力の一風変わった作品。

エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる

マドリードの一室で目を覚ますフリオ。ここはどこ。見回すと美女フリアがキッチンに立っている。はて。この美女と一夜を過ごしたようだ。ぎこちなく自己紹介して名前の類似に照れ笑いのフリオとフリア。さてそんなふたりが窓から外を見上げると巨大宇宙船が。

ドリームハウス

ホラーテイストのミステリー・スリラー。ジャンルは「家族と新しい家」です。新しい家と言ってもボロっちい中古住宅ですが、幼い姉妹がいる4人家族は越してきたばかりのようです。何やら不穏な空気が家に漂ってます。なになに?以前ここで惨殺事件があったって?そんなの聞いてないよー。よーし調査開始。

ヒドゥン・フェイス

さよならの置きムービーを残して消えた恋人。男は泣き崩れ、その後バーのウエイトレスと新たに出会います。家では奇怪現象がちらほらと。

チキンとプラム ~あるバイオリン弾き、最後の夢~

「ペルセポリス」のマルジャン・サトラピの長編映画二作目。死を決したバイオリニストの最期の8日間に現れる過去と未来をファンタジックに、ロマンティックに描きます。

キリマンジャロの雪

不況の波が押し寄せるマルセイユ。人員整理の首切りがくじによって行われています。不況の港町を舞台に、ある中年夫婦に起きた事件とその顛末。

イントルーダーズ

「イントルーダーズ」は、ファンタジックでホラーテイストでスペインとイギリスの二つの物語で子供の読み物や物語の創作が骨子となるよいアイデアのスリラー。良いんですけど大したことない、大したことないけど悪くもない、褒めたいけど貶せない、微妙な作品。

マルティナの住む街

結婚式当日、花嫁に逃げられた男のスピーチから始まります。いとこ二人に慰められ、失恋ショックを癒やすため3人でよく知る海辺の村へ出向きます。10年前の元カノ、マルティナをくどいて新たな恋をはじめようという目論見です。

ソハの地下水道

ナチス占領下のポーランド。下水道の検査員ソハは副業で空き巣狙いをやったりしている男で、ある日穴を掘って下水道に逃げようとしているユダヤ人と鉢合わせ。「金出しな。隠れ場所教えてやるから」と持ちかけます。

ゾンビ革命 フアン・オブ・ザ・デッド

カリブの赤い島ラテンの楽園キューバ発のゾンビコメディ。ハバナで勃発する感染爆発の暴動。失業中のフアンは仲間と共にゾンビ殺しを請け負う事業を開始します。

チャイルドコール 呼声

DV夫から逃れてアパートに越してきた母親。ベビーという年でもない我が子のためにベイビーコールを買ったりするほど心配性です。サイコサスペンス、ホラーオカルト、ドメスティック、母と子、精神の奥底、テーマ過多の複合的スリラーに挑みつつ極めて繊細なディテールに満ちた傑作。

アウェイクニング

時代は1920年頃、心霊現象やイタコ騒動のインチキを見破る孤立無援の女性フローレンスの元に、ある日寄宿学校の校長がやってきて、校内に出現する少年の幽霊について調査するよう依頼されます。イギリス発、ゴシックホラーミステリー。

突然、みんなが恋しくて

メラニー・ロランが拝みたいが為だけにつまらないアイドル恋愛映画かなーと覚悟しつつ観てみたら、初老の父親メインの家族や娘の愛しい愛しい映画でございました。軽いタッチの家族コメディ。笑って泣いて、親子で仲良く。

ナタリー

オドレイ・トトゥ主演のラブコメ調の恋愛ドラマ。ラブコメからコメを取ったらラブしか残らないけど、その残ったラブもコメとくっついてる程度のラブだからして、「ナタリー」はちょっと珍しいくらいのどうでもいい映画。

明日の空の向こうに

ポーランドとの国境付近のロシアのどこかです。駅に棲むストリートチルドレンの三人組、ヴァーシャとペチャの兄弟とリャパが決意を持って旅に出ます。いや、弟ペチャはまだ小さいので決意なんかわかりません。でもとにかく旅をします。ちびっ子たちの冒険と顛末、ちびっ子を観るためのちびっ子映画一直線。

サプライズ

才能ありまくり「ビューティフル・ダイ」のアダム・ウインガード監督「サプライズ(You’re Next)」は2013年の秋に国内でも公開して話題沸騰のぶっ飛びの恐怖系スリラー。両親の結婚35周年を祝う別荘の晩餐会に襲いかかる覆面の殺人集団。優れた演出と抜群のセンスでわーわー見せます。

最初の人間

フランスで成功した作家が、フランスからの独立運動で紛争中のアルジェリアに帰郷、平和と共存を説き非難に晒されつつ母の元を訪ねます。作家コルムリと彼の幼少期のお話。カミュの自伝的遺作の映画化。知性と良心と苦悩の渾身の作。

プライズ ~秘密と嘘がくれたもの

母親と7歳の娘が海風吹きすさぶ掘っ立て小屋で暮らします。母は厳しい表情、子は・・・ちびっ子映画の快挙を堪能できる凄いやつ。映画はずっしり辛い系です。

昔々、アナトリアで

刑事検事に犯人警官穴掘り人に軍警察、むさ苦しい男たちがぞろぞろと車で荒野を移動しております。いや荒野でなくて畑や湧き水もありますが、不安感掻き立てる何もない小アジアの田舎の一角です。ここで何をしているかというと死体を探しているのです。

メゾン ある娼館の記憶

19世紀末から20世紀初頭にかけて、パリの高級娼館アポロニドの娼婦たちを描きます。優雅で背徳的、そして美しくて洒落たフランス映画。でも何かが重くのし掛かります。

スリーピング・タイト 白肌の美女の異常な夜

ジャウマ・バラゲロ監督2011年の「スリーピング・タイト」は夜な夜な女性の部屋に忍び込む屈折した犯罪者を描くサイコスリラーで最大の気持ち悪さと同時に哀れと味わいをも堪能できる変態リトマス試験紙のような乙な作品。

スリーピング・ボイス 〜沈黙の叫び

フランコ独裁政権時代、内乱敗者の家族や恋人である女性たちが収監されたマドリードの刑務所についての告発的映画。「スリーピング・ボイス」は、当時の生き残りたちの取材を元に書かれたドゥルセ・チャコンの小説を原作に制作された歴史に向き合う力作。

バーニー/みんなが愛した殺人者

葬儀ディレクターにして街の人たちからも慕われているバーニーという名の男の物語です。冒頭、死に化粧のノウハウとその心構えを講義するシーンから。実話を元にしており、そして事件を扱う物語です。

UNIT7 ユニット7 麻薬取締第七班

「UNIT7 ユニット7 麻薬取締第七班」は万博直前のセビリアを舞台にした刑事ドラマというかやくざの抗争劇みたいな映画で、成長期の大きな変化の中で時代の狭間にもがき翻弄される都市や人間たちを描きます。

ゾーンA

アルジェリアの砂漠地帯で行方不明になった飛行機を探すための探索部隊が遭遇するのはアラブ世界の精霊ジン(Djinns)。盛りだくさんに詰め込んだ志の高い映画。志通りに出来たかどうかは問いません。

インセプション

夢に立ち入ることで潜在意識に潜むアイデアを盗み取る企業スパイが強制的に与えられた次の使命はアイデアを盗むことではなく、アイデアを植え付ける(インセプション)こと。新たなミッションに集められた豪腕チームが挑む。

キック・アス

スーパーヒーローに憧れる少年がナンチャッテヒーローをやっていると、ひょんな事から本物のヒーロー親子と悪者に出会い、結果的に痛快ヒーロー映画になってしまうという大ヒット映画。

ナイト&デイ

トム・クルーズとキャメロン・ディアスがコンビを組んでお届けするのは安心印の痛快コミカル・ラブ&スパイご当地湯けむり観光80年代女子狙い撃ち少女漫画的ポップ・アクション映画「ナイト&デイ」の感想です。

しあわせの雨傘

時は1970年代後半。大手傘メーカーの社長夫人が「Potiche(飾り壺)」ではない人生を歩み出すお話。70年代テイストたっぷりのコミカル人情仕事ドラマ。カトリーヌ・ドヌーヴ始めスター共演による程よく力の抜けた逸品。フランソワ・オゾン天才。「しあわせの雨傘」

Peace

「選挙」「精神」の想田和弘による「観察映画」。弱者と猫と老人と煙草。生きる事実。多くの観客がこの映画を観て優しい気持ちに満たされるでしょう。同時に、その中に社会の歪さを感じ取り、平和な社会とは何か、正気の社会とはどういうものか、共に生きるとはどういうことかといった複合的な感情も揺さぶられるはずです。

英国王のスピーチ

吃音に悩む王族の次男アルバートが言語聴覚士ローグにセラピーを受け治療に励みます。実話を元に描いた品格のアカデミー賞受賞作品。これが理想のオーソドックス。

キラー・インサイド・ミー

50年代の西テキサス。まじめで皆に好かれる保安官助手ルー(ケイシー・アフレック)が、苦情を受けて町外れの売春婦ジョイス(ジェシカ・アルバ)に警告をつげに出向く。

トゥルー・グリット

コーエン兄弟による「勇気ある追跡」(1969)のリメイク、というよりチャールズ・ポーティスの原作を再映画化。
父親を殺された少女が酔いどれ保安官を雇い仇討ちを目指します。

アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ

執筆活動のために一人森の奥の貸別荘にやってきた小説家ジェニファー。田舎の男どもが彼女に目をつけます。恐ろしいことが始まります。酷いことが起こりそうです。

ヒアアフター

津波に遭い臨死体験をしたフランスの女性ジャーナリスト、イギリスの双子の少年、アメリカの元霊能力者の三つのお話が群像劇風に描かれます。クリント・イーストウッドが描く、死を見つめた生の物語。

127時間

渓谷を闊歩するアーロン・ラルストン(ジェームズ・フランコ)が遭遇する事故。「スラムドッグ$ミリオネア」のスタッフが結集して放つ孤独な男のソリッド・シチュエーション・動かない・アクションの秀作。

BIUTIFUL ビューティフル

移民や不法滞在者がひしめくバルセロナの一角で暮らす子持ち男ウスバル。仕事と家族。社会と人。父と子。苦悩と焦燥。絶望と当惑。継承と遺緒。

ゴーストライター

英国元首相の自叙伝を執筆する仕事を前任者の引き継ぎという形で請け負ったゴーストライターが、執筆もそこそこに何やら不穏な空気に影響を受けてこそこそと嗅ぎまわり始めます。
巨匠ロマン・ポランスキーが放つ良質ミステリー。

ザ・ウォード/監禁病棟

ジョン・カーペンター久々の監督作品は精神病院に収容される美少女のサスペンスホラー。
放火して呆然としている美少女クリステンが警官に捕獲され精神病院に入院させられるところから始まります。

バビロンの陽光

2003年、フセイン政権崩壊直後のイラクで旅する祖母と孫。戦地から戻らない息子を僅かな手がかりで探す女性イブラヒムと、顔も知らない父が残した笛を手にする少年アーメッドは、ヒッチハイクをし、バスを乗り継ぎ、イラクの北の果てから南の果てまで旅します。

フェア・ゲーム

「イラクが核兵器の開発を行っている」と吹聴して戦争を強行したブッシュ政権の最大スキャンダル、プレイム事件を描いた政治的社会派映画。政治的社会派と言えばこの人、ショーン・ペン。そして監督が「ボーン・アイデンティティ」のタグ・リーマン。愛しの君ナオミ・ワッツがプレイム役で好演。観る人を選ばない実話ベースの政治サスペンス。